MT5とは何か
MetaTrader 5(MT5)は、FX・CFD業者の多くが無料で配っている取引ソフトです。前身のMT4と並んで、世界で最も広く使われています。 チャート表示や発注だけでなく、自分で書いたプログラム(EA=Expert Advisor)を動かして自動売買や検証ができるのが、このコースにとっての要点です。
MT5で使うプログラミング言語が MQL5 です(第3回・第7回で扱います)。つまり流れは「MQL5でEAを書く → MT5に読み込ませる → MT5のストラテジーテスターで過去データにかけて結果を見る」となります。 まずはこの土台のMT5を用意する、というのがこの回のゴールです。
インストールとデモ口座
手順は業者ごとに細部が違いますが、大枠は共通です。次の順に進めます。
- 業者のサイトからMT5をダウンロード:使っている(または使う予定の)FX業者の公式サイトに「MT5ダウンロード」があります。MetaQuotes社の配布版でも動きますが、業者版のほうが接続が確実です。
- インストール:ダウンロードしたファイルを実行し、画面に従って進めるだけです。Windows向けが基本で、Macは追加の手順が要ることがあります。
- デモ口座を作る:初回起動時に口座の種類を聞かれます。ここで必ずデモ口座(Demo)を選びます。デモ口座は仮想の資金で動く練習用の口座で、実際のお金は動きません。検証はすべてこれで行います。
- ログインを確認:右下に接続状態が出ます。緑やデータ通信量の表示が出ていれば、価格データを受信できています。
デモ口座は、リアルの相場価格をそのまま受信しつつ、注文だけが仮想になる仕組みです。EAのテストにはこれで十分で、むしろ検証段階でリアル口座を使う理由はありません。
実弾を撃たないための注意
MT5は、リアル口座にログインした状態でEAを稼働させると、そのEAのルールに従って実際の注文を出します。テストのつもりで動かしたEAが、本物の資金でポジションを持ってしまう事故は珍しくありません。 防ぐ習慣はシンプルです。検証・練習は必ずデモ口座で行うこと。そして、EAをチャートに載せる前に、いまログインしている口座がデモか(口座番号・種別の表示)を毎回確認すること。 後述のストラテジーテスターでの検証は、そもそも実際の発注をしないシミュレーションなので、この点では安全です。まずはテスターで十分に確かめてから、というのが順番です。
ストラテジーテスターの役割
ストラテジーテスターは、MT5に内蔵された検証装置です。書いたEAを、指定した期間の過去チャートに沿って自動で売買させ、結果をまとめて出してくれます。 バーリプレイを手で送っていた作業を、EAのルールどおりに機械が高速でやってくれる、と考えると分かりやすいです。
設定する主な項目は次のとおりです。難しくはありません。
- EA(エキスパート):どのEAをテストするか。
- 銘柄(シンボル)と時間足:どの通貨ペア・指数を、どの足で検証するか。このコースの題材は日足(Daily)を使います。
- 期間:何年何月から何月までを検証するか。
- モデル(ティック生成方式):値動きをどこまで細かく再現するか。日足の単純な戦略なら「始値のみ」でも足りますが、精度を上げたいときは「全ティック」を選びます(そのぶん時間がかかります)。
- 初期証拠金:検証を始める仮想の資金。
実行すると、損益グラフ(エクイティカーブ)、総損益、勝率、プロフィットファクター、そして最大ドローダウン(一時的な資金の落ち込みの最大幅)などが表示されます。 中でも最大ドローダウンは、リスク管理コースで学んだとおり「その戦略を続けるあいだ、どれだけの含み損に耐える必要があるか」を示す、損益と同じくらい大事な数字です。
検証結果を読むときの注意
ストラテジーテスターの結果はきれいな数字で出ますが、そのまま信じてはいけません。第1回で述べたとおり、コードは書いたとおりに動くだけで、テスターも与えた条件どおりに計算するだけです。次の点に注意してください。
- データの質:検証は業者が持っている過去データに依存します。データが短かったり穴があったりすると、結果も当てになりません(データの話は第6回で詳しく扱います)。
- スプレッド・手数料:テスターの設定でスプレッドを0にすると、実際には払うコストを無視した甘い結果になります。現実的な値を入れて確かめます。
- 過剰最適化:パラメータを変えて何度も回すと、テスターの上では成績が上がっていきます。第3回のとおり、これは実力の向上ではなく過去への合わせ込みであることが多い。何通り試したかを数える姿勢は、テスターでも変わりません。
つまり、ストラテジーテスターは強力だが正直すぎる道具です。良い数字が出たら喜ぶ前に、データ・コスト・試行回数を点検します。手作業の検証で身につけた態度を、そのまま持ち込みます。
チェックリスト
次の記事に進む前に、以下が自分の言葉で説明できるか確認してください。
- MT5とMQL5とストラテジーテスターの関係
- インストールからデモ口座ログインまでの流れ
- なぜ検証はデモ口座で行うのか(リアルは実弾発注になる)
- ストラテジーテスターで設定する主な項目
- 最大ドローダウンが損益と並んで重要な理由
- テスターの結果を鵜呑みにしない3つの注意点
ミニテスト
最後に3問だけ確認です。不正解なら別の選択肢を選び直せます。正解すると解説が表示されます。
Q1. このコースの検証で、MT5にログインすべき口座は?
リアル口座にログインしたままEAを動かすと本物のお金で発注が始まります。検証・練習は必ずデモ口座で行い、EAを載せる前に口座種別を確認します。
Q2. ストラテジーテスターとは何をするものか?
バーリプレイを手で送る作業を、EAのルールどおりに機械が高速でやってくれるものです。予測やEAの自動生成はしません。
Q3. テスターで良い成績が出たときに、まずすべきことは?
テスターは正直すぎる道具です。良い数字ほど、スプレッドを無視していないか・データに穴はないか・何通り試した末の1つか、を先に点検します。パラメータを変え続けるのは過剰最適化への道です。