押し・戻りとスイングの高値安値
レートは一直線には動きません。上昇中でも途中で下がる場面(押し)があり、下降中でも途中で上がる場面(戻り)があります。 この波の折り返し点がスイングの高値・安値です。
「高値」と言ったとき、初心者はチャート右端の最新の山を見がちですが、相場の分類に使うのは 波の折り返しとしてはっきり残った山と谷です。数本のローソク足でできた小さなギザギザは無視して、 誰が見ても分かる大きな波だけ数えます。細かく数え始めたらキリがなく、細かく数えるほど判定はブレます。
トレンドの定義:切り上げ・切り下げ
分類のルールはこれだけです。
- 上昇トレンド:高値も安値も、前の波より高い(高値切り上げ+安値切り上げ)
- 下降トレンド:高値も安値も、前の波より低い(高値切り下げ+安値切り下げ)
ポイントは「両方」です。高値だけ更新して安値が切り下がっている状態は、上昇トレンドとは呼べません。 この高値と安値による整理を使うと、「なんとなく上がってそう」が 「高値2と安値2が切り上がっているから上昇トレンド」という根拠のある文章に変わります。
高値・安値による相場の見方は、一般に「ダウ理論」の一部として紹介されることがあります。 しかし、チャールズ・ダウ本人が「ダウ理論」という完成した理論を、その名前で提唱・体系化したわけではありません。 後世に「ダウ理論の売買シグナル」として紹介される「ここで買い」「ここで売り」も、ダウ本人が述べたものではありません。 本人の死後、米国株式市場や株価平均について書かれた複数の社説を、後世の人々が整理して理論の形にまとめたものです。
もともとの対象は株式と株価指数であり、24時間動く店頭市場のFXにそのまま当てはまるという根拠は乏しいため、 このコースでは「ダウ理論」を権威ある売買法として解説しません。 ここで使うのは、高値と安値を比較して現在の値動きを言葉にするための分類方法だけです。それ自体に利益を生む売買シグナルがある、という意味ではありません。
レンジと「分類できない」
高値がほぼ同じ水準で止められ、安値もほぼ同じ水準で支えられて、間を往復している状態がレンジです。 相場の大半の時間は、実はレンジか方向感のない状態です。きれいなトレンドは少数派です。
そして実際のチャートには、「切り上げとも切り下げとも言えない」「波がぐちゃぐちゃで数えられない」場面が頻繁にあります。 これを無理にどちらかへ分類する必要はありません。「分類できない」は立派な判定結果で、 そのときの正しい行動は「取引しない」です。分からない相場を見送れることは、初心者と中級者を分ける実力です。
トレンドの終わりはどう見えるか
定義が決まっていると、「終わり」も定義できます。上昇トレンドの場合、崩れる兆候はこの順で現れます。
- 高値の更新に失敗する:前の高値を超えられない。
- 直近の安値を割る:「安値切り上げ」が崩れる。この時点で上昇トレンドの定義は満たされなくなります。
ただし、トレンドが終わった=すぐ逆方向のトレンドが始まる、ではありません。 上昇トレンドが終わってレンジに移行し、そこからまた上昇再開、というパターンも普通にあります。 「上昇の定義が崩れた」と「下降が始まった」を区別してください。
よくある勘違い
時間足を指定せずに「トレンド」を語る
日足では上昇トレンド、1時間足では下降トレンド、は同時に成立します。矛盾ではなく解像度の違いです。 「今は上昇トレンド」と言うときは、必ず「どの時間足の話か」をセットにしてください。
2本の波で「トレンドが出た」と判断する
高値1つ・安値1つの切り上げは、レンジ内の往復でも起こります。最低でも高値・安値それぞれ2回の更新を確認してから、 トレンドと呼ぶくらいが実用的です。早く認定するほどダマシも増えます。
レンジで、トレンドの戦い方をする
「上がり始めたから買う(順張り)」はトレンドでは機能しやすい一方、レンジでは上限で買って下限で投げる最悪の行動になります。 いま自分がどちらの相場にいるかの分類が、手法より先に来る理由がこれです。
実戦:毎日1回の環境認識
今日から毎日1回、ドル円の日足と1時間足で次の3行を書いてください。1回3分で終わります。
- 日足の分類:「上昇 / 下降 / レンジ / 分類できない」のどれか+根拠(例:「高値・安値とも2回切り上げ」)。
- 1時間足の分類:同じ形式で。
- 直近のスイング高値・安値の位置:具体的なレートで(例:「高値151.20 / 安値149.80」)。
これは環境認識と呼ばれる、裁量トレードの毎日の最初の仕事です。 エントリーの練習より先に、この分類が安定して書けるようになることを目指してください。
チェックリスト
次の記事に進む前に、以下が自分の言葉で説明できるか確認してください。
- 上昇トレンドの定義(何と何が切り上がるか)
- 「押し」と「戻り」の意味
- レンジの定義
- 「分類できない」が大事な判定である理由
- 上昇トレンドが崩れたと判定できるのはいつか
- 時間足を指定せずにトレンドを語ってはいけない理由
ミニテスト
最後に4問だけ確認です。不正解なら別の選択肢を選び直せます。正解すると解説が表示されます。
Q1. 上昇トレンドの定義として正しいのは?
高値と安値の「両方」が前の波より高いことが定義です。高値だけ更新して安値が切り下がっているなら、上昇トレンドとは呼べません。
Q2. 上昇トレンド中の一時的な下げを何と呼ぶ?
上昇中の一時的な下げが「押し」、下降中の一時的な上げが「戻り」です。押しを挟みながら高値・安値を切り上げるのが上昇トレンドの形です。
Q3. チャートが切り上げとも切り下げとも言えない形のとき、正しい対応は?
「分類できない」は立派な判定結果です。分からない相場で取引しないという選択ができることが、この分類を学ぶ最大の目的です。
Q4. 日足が上昇トレンドで、1時間足が下降トレンド。これは?
時間足は同じ値動きの別の解像度なので、日足の上昇トレンド中の「押し」は、1時間足では下降トレンドに見えます。トレンドを語るときは時間足をセットにしてください。