押し目買い・戻り売りとは

第2回の定義を思い出してください。上昇トレンドは「高値と安値の切り上げ」で、途中の一時的な下げが「押し」でした。

どちらも「流れの方向に、流れより安く(高く)入る」という考え方です。 トレンドの方向に取引する方法(順張り)には、ブレイクに飛び乗るやり方もありますが、 初心者がまず身につけるべきは押し目・戻りの型です。理由は次の章で数字にします。

なぜ「待ってから」入るのか

同じ上昇トレンドで買うのでも、「伸びている最中に飛び乗る」のと「押しを待って買う」のでは、 損切りまでの距離が違います。

買った後の損切りは「上昇の根拠が崩れる場所」=直近の押し安値の下に置くのが基本です(詳しくは次のリスク管理コースで扱います)。 高値付近で飛び乗ると、そこから押し安値までの距離がまるごと損切り幅になります。 押し目まで待って買えば、同じ損切り位置でも損切り幅は数分の一。 同じ場面・同じ方向でも、入る場所で背負うリスクがまったく違うのです。

A: 伸びた先で飛び乗る 損切りまで 遠い B: 押し目で買う 損切りまで 近い 損切りの目安(押し安値の下) 同じ方向・同じ損切り位置でも、入る場所で損切り幅(=背負うリスク)が変わる
押し目を待つ理由は「当たりやすさ」ではなく、損切り幅の設計にある

「押し目買いは有利」の本質はここです。当たる確率が上がるからではなく、 間違えたときの損失を小さく設計できる場所だから有利なのです。

どこまで押したら買うのか

押しがどこで止まるかを事前に正確に当てる方法はありません。できるのは、止まりやすい候補地を先に挙げておくことです。 候補はすべて既習の道具です。

候補が「重なる」場所を優先する

サポレジ転換の水準と移動平均線と半値が同じあたりに集まっている。そういう複数の根拠が重なる場所ほど、 大勢が同じ場所を見ているため機能しやすくなります。1つの根拠しかない場所で無理に拾う必要はありません。

押し目は「根拠が重なる場所」を待つ サポレジ転換 20MA 半値付近 候補が重なる 候補地に来たことだけでは買わない。止まった気配を確認してから考える
サポレジ・移動平均・半値などが近い場所は、多くの参加者が見やすい候補地になる

さらに、候補地に「来たから買う」ではなく、止まった気配(第1回の長い下ヒゲ、陽線への切り返し)を確認してから入ると、 落ちるナイフを掴む頻度が減ります。そのぶん少し高く買うことになるので、安さと確認はトレードオフです。

失敗パターン:押し目のつもりが転換だった

押し目買いの負けは、ほぼ1種類に集約されます。「押し」だと思った下げが、トレンドの終わりだった場合です。

第2回でやったとおり、直近の押し安値を割った時点で「上昇トレンド」の定義は崩れます。 だから損切りを押し安値の下に置くのです。定義が崩れたのに「まだ押し目のはず」と粘るのは、 押し目買いではなく下落へのナンピンで、これが口座を壊す典型ルートです。

押し目買いという型の本当の中身は、「どこで買うか」半分、「どうなったら自分が間違いだったと認めるか」半分です。 後者を先に決めてから入る習慣を、次のリスク管理コースで固めます。

押し目のつもりが転換だった場合 直近の押し安値 押し目候補 反発弱い 割ったら定義崩れ 損切りは「自分の想定が間違いだった」と認める位置に置く
押し安値を割ったら、上昇トレンドの押し目という前提が崩れる。粘るとナンピンになる

よくある勘違い

下がったから「お買い得」だと思って買う

押し目買いはトレンドの確認が先です。トレンドがない(またはレンジや下降の)相場で「下がったから買う」のは、 押し目買いではなくただの逆張りです。同じ「下げたところで買う」でも、上位の流れの有無で別の行為になります。

押し目を待っていたら伸びて行ってしまい、悔しくて飛び乗る

押し目を待つ戦略は、押しが来ないまま伸びる相場を見送ることを最初から含んでいます。 見送りは失敗ではなく、戦略どおりの行動です。逃した悔しさで高値に飛び乗った瞬間、戦略は消滅します。

「半値押し」「61.8%」を精密な予約注文の位置だと考える

押しの深さの目安は、あくまで候補地を絞る道具です。「61.8%ちょうどで必ず反発する」ような精度はありません。 目安の水準+止まった気配の確認、のセットで使います。

実戦:過去チャートで50回探す

ここまでの5回分の総合演習です。チャートソフトで過去のドル円日足〜1時間足を遡ってください。

  1. 上昇トレンドの区間を見つける:高値・安値の切り上げで定義どおりに(第2回)。
  2. その中の「押し目」をすべてマークする:どこで止まったか、そこに何があったか(転換した水準/移動平均線/半値)を記録します。
  3. 「押しだと思ったら崩れた」場面も探す:押し安値を割ってトレンドが終わった場面です。成功例だけ集めると、型を過信します。
  4. 合計50例たまるまで続ける:1〜2週間かかって構いません。

50例見ると、「候補地で毎回きれいに止まるわけではない」「重なった場所は比較的よく止まる」「崩れるときは早い」が、 自分の目のデータになります。これが検証の入り口です(本格的な検証のやり方は検証コースで扱います)。

チェックリスト

コース修了前に、以下が自分の言葉で説明できるか確認してください。

ミニテスト

最後に4問だけ確認です。不正解なら別の選択肢を選び直せます。正解すると解説が表示されます。

Q1. 押し目買いの正しい手順は?

順番が命です。①トレンドの確認、②押しを待つ、③止まりやすい候補地と止まった気配の確認。トレンドの確認がない「下がったから買う」はただの逆張りです。

Q2. 飛び乗りより押し目買いが有利とされる本質的な理由は?

当たる確率の問題ではなく、間違えたときの損失を小さくできる「場所」だからです。同じ損切り位置でも、入る場所で損切り幅が数倍変わります。

Q3. 押しが止まりやすい場所の候補として、このコースで挙げた組み合わせは?

すべて既習の道具です。単独より、複数の候補が同じ価格帯に重なる場所の方が、大勢に意識されるぶん機能しやすくなります。

Q4. 押し目買いした後、直近の押し安値を明確に割った。正しい対応は?

押し安値を割った時点で「高値・安値の切り上げ」は崩れ、押し目買いの前提が消えます。ここで粘るのはナンピンで、口座を壊す典型ルートです。