雇用統計の中身:NFP・失業率・平均時給
「米雇用統計」は1つの数字ではなく、複数の統計をまとめた発表です。このコースでまず押さえるのは次の3つです。
- 非農業部門雇用者数(NFP/Non-Farm Payrolls):農業以外の分野で前月から何人雇用が増えたか。市場が最も注目する数字で、反応の中心になりやすい項目です。
- 失業率:働く意思がある人のうち、仕事に就けていない人の割合。NFPが強くても失業率が悪化する(その逆も)など、方向が割れることがあります。
- 平均時給(Average Hourly Earnings):賃金の伸び率。インフレの先行きに直結するため、近年は特に重視されています。
どれが一番効くかは、その時々の市場の関心事次第です。雇用の「量」が焦点の時期はNFP、 インフレが焦点の時期は平均時給が主役になりやすいという構造は、第1回で説明した「重要度は固定ではない」とまったく同じです。 3つとも見て、どれが予想からズレたかを確認する癖をつけてください。
発表日時:第1金曜と日本時間
原則毎月第1金曜日に発表されます。日本時間では、米国の夏時間(サマータイム)中は21:30、 冬時間中は22:30です。米国のサマータイム切替は3月と11月なので、その前後の第1金曜は 前月と違う時刻になります。カレンダーで毎回の時刻を確認する習慣が安全です。
なぜ為替が動くか:雇用からインフレ・金利期待への経路
雇用統計そのものは為替の指標ではなく労働市場の統計です。それでもドル円が大きく動くのは、 雇用の強さがインフレと金利の先行き予想につながるからです。
この経路は第2回のFOMCの回で説明した「金利差がドル円を動かす」の入口にあたります。 雇用統計は、中央銀行が次に利上げ・利下げのどちらに動きやすいかを市場が読み直すきっかけの1つです。
動かすのは「予想との差」
ここでも第1回の原則がそのまま当てはまります。動かすのは結果の絶対値ではなく、 市場予想(コンセンサス)とのズレです。「NFPが前月より増えた」だけでは材料にならず、 「事前予想の20万人に対して結果が32万人だった」のようなズレが反応を生みます。
雇用統計は月ごとの振れ幅(予想レンジ)が他の指標より広くなりやすく、そのぶん反応も大きくなりがちです。 また、NFP・失業率・平均時給の3つが同じ方向を向くとは限らないため、 「NFPは強いが平均時給は予想を下回った」のような複合的な結果になることも珍しくありません。
発表直後に起きること
重要指標に共通する構造ですが、雇用統計は特に反応が大きくなりやすい代表例です。
- 発表直後:スプレッド拡大と乱高下:数秒〜数十秒で数十pips動くことがあり、スプレッドは普段の数倍に開きます。逆指値もすべって、想定より不利な価格で約定することがあります。
- 数分後:初動の反転(行って来い):NFP・失業率・平均時給のどれに反応するかが後から入れ替わり、最初の方向が数分で打ち消されることがあります。
- 数時間〜翌営業日:方向が定まる:落ち着いてから、複数の材料を消化した「本来の方向」が出てくることが多い時間帯です。
よくある勘違い
NFPだけ見て失業率・平均時給を見ない
NFPが主役になりやすいのは事実ですが、3点セットのどれが効くかは時期次第です。インフレが市場の関心事の時期には、 平均時給の方が反応の主因になることもあります。
「良い数字=ドル買い」と機械的に反応する
予想を上回っていても、平均時給が弱ければ「賃金インフレは鈍化」と読まれてドルが売られることもあります。 3つの数字と予想の差を、セットで確認してください。
発表直後の初動に飛び乗る
スプレッドが開き、逆指値がすべりやすい時間帯に飛び乗るのは、損切りが機能しにくい状態での取引です。 初動が数分後に反転する例も多く、勝率・値幅とも安定しません。
実戦:雇用統計の日の行動ルール
毎月第1金曜(またはずれた週)が近づいたら、次を実行してください。
- 週初めに発表日時を確認する:「金曜 夏21:30/冬22:30」を自分の時間で書き出す。
- 発表前後は新規エントリーとポジション持ち越しを避ける:「またぐポジションなし」を基本にする。
- NFP・失業率・平均時給の事前予想を1行メモする:カレンダーサイトで確認できます。
- 発表後に結果・予想との差・初動と数時間後の値動きを記録する:数回分たまると、自分のデータで「予想との差が動かす」を確認できます。
チェックリスト
次の記事に進む前に、以下が自分の言葉で説明できるか確認してください。
- 雇用統計を構成する3つの数字とその意味
- 発表日時(第1金曜、日本時間夏冬の違い)
- 雇用からインフレ・金利期待を通じて為替に伝わる経路
- 動かすのが結果ではなく予想との差である理由
- 発表直後に起きやすいこと(スプレッド拡大・乱高下・すべり)
- 自分の雇用統計デーの行動ルール
ミニテスト
最後に4問だけ確認です。不正解なら別の選択肢を選び直せます。正解すると解説が表示されます。
Q1. 米雇用統計に含まれる3つの主要な数字は?
この3つが基本セットです。どれが一番効くかは市場の関心事によって変わります。
Q2. 米雇用統計の発表日時として正しいのは?
米国の夏時間・冬時間で日本時間の発表時刻が1時間ずれる点に注意してください。
Q3. 雇用者数が予想より強かった場合の教科書的な経路は?
雇用の強さはインフレ・金利期待を通じてドル円に伝わります。ただし平均時給など他の数字次第で逆に振れることもあります。
Q4. 雇用統計発表直後の行動として、このコースの推奨は?
スプレッド拡大・すべり・初動の反転を踏まえると、避けて記録し、型を学ぶことが初心者にとって現実的な行動です。