CPIとは:総合とコアの違い
CPI(Consumer Price Index/消費者物価指数)は、モノやサービスの価格が 前年・前月からどれだけ上がったか(インフレ率)を示す統計です。米国では毎月、労働省から発表されます。
CPIには2種類の見方があります。
- 総合CPI(Headline CPI):食品・エネルギーを含む全項目。ガソリン価格や天候による農産物価格など、一時的に振れやすい要素も含みます。
- コアCPI(Core CPI):食品・エネルギーを除いた指数。振れの大きい要素を除くことで、経済の基調的なインフレ圧力が見えやすくなります。
市場、特に中央銀行が政策判断で重視するのはコアCPIです。「総合は落ち着いたがコアは高止まり」のような ズレが起きることも多く、どちらの数字にニュースが反応しているかを区別する癖が必要です。
インフレから為替への経路
経路は第2回のFOMCの回で説明した金利差の理屈がベースになります。CPIはその「入口」にあたる指標です。
つまりCPIとFOMCは切り離せません。CPIが強い月が続けば「次のFOMCは高い金利を維持しそうだ」という織り込みが進み、 FOMC当日はむしろ「無風」になることもあります。逆にCPIとFOMCの間で見方が割れていると、FOMC当日の振れが大きくなりがちです。
前年比・前月比の読み方
CPIの発表には2つの数字が並びます。読み方を混同すると意味を取り違えます。
- 前年比(YoY):1年前と比べた上昇率。インフレの基調的な水準を見る、最も見出しになりやすい数字です。
- 前月比(MoM):先月と比べた上昇率。直近1ヶ月の勢いを見る数字で、前年比より変動が大きく出ます。
「前年比は鈍化しているが前月比が加速している」場合、基調はまだ落ち着いているように見えて、 直近の勢いは強まっているという読み方になります。見出しの前年比だけで判断せず、前月比の動きも確認してください。
PCEなど他のインフレ指標
CPI以外にも、インフレを測る指標がいくつかあります。代表格がPCE(個人消費支出)物価指数で、 FRB(米連邦準備制度理事会)が政策判断でCPI以上に重視するとされる指標です。CPIより発表が少し遅れて出るため、 「CPIで方向感が出て、後日のPCEで確認・修正される」という順番で消化されることがあります。 まずはCPIを軸に理解し、PCEは「もう1つの物価指標がある」という程度に押さえておけば十分です。
CPIショックの典型的な値動き
予想から大きくズレた「CPIショック」が起きたときの典型的な流れです。
- 発表直後:スプレッド拡大と乱高下:数秒〜数十秒で大きく動き、スプレッドが普段の数倍に開きます。
- 数分〜数十分後:金利先物や国債利回りとの整合が取れてくる:為替だけでなく金利市場全体が反応するため、方向が固まるまで時間差があります。
- 翌日以降:FOMCへの織り込みとして定着する:「次回FOMCの利上げ・利下げ確率」が更新され、CPIの効果はその後の相場にも残り続けます。
よくある勘違い
総合CPIとコアCPIを混同する
ニュースの見出しがどちらの数字を指しているか確認してください。市場は基本的にコアCPIを重視しますが、 エネルギー価格が急変している局面では総合CPIも材料になります。
「インフレ=悪いこと」と単純化する
インフレが強い=ドル買い、と機械的に覚えると、局面によって逆に動くことがあります。 インフレが強すぎて景気後退懸念に転じる、といった綱引きも起きるため、経路を理解した上で反応を見る必要があります。
CPI単体で判断し、FOMCとの接続を見ない
CPIの意味は「次のFOMCがどう動きそうか」という文脈の中で決まります。CPI直後の値動きだけでなく、 FOMCへの織り込みがどう変わったかまで見ると理解が深まります。
実戦:CPI発表日の行動ルール
CPIはFOMCと並ぶ最重要イベントとして扱ってください。
- 発表日をカレンダーで確認する:米CPIは原則毎月中旬に発表されます。日本時間での発表時刻も確認してください。
- 発表前後は新規エントリーとポジション持ち越しを避ける:雇用統計・FOMCと同じ扱いです。
- 総合・コア・前年比・前月比の事前予想をメモする:どの数字がズレたら反応が大きくなりやすいか、事前に整理しておきます。
- 発表後に結果・予想との差・初動と数時間後の値動きを記録する:継続すると、CPIの「動き方の型」が見えてきます。
チェックリスト
次の記事に進む前に、以下が自分の言葉で説明できるか確認してください。
- 総合CPIとコアCPIの違いと、市場がどちらを重視するか
- インフレから金利期待を通じて為替に伝わる経路
- 前年比と前月比の意味の違い
- PCEなど他のインフレ指標の位置づけ
- CPIショック時の値動きの典型的な流れ
- 自分のCPI発表日の行動ルール
ミニテスト
最後に4問だけ確認です。不正解なら別の選択肢を選び直せます。正解すると解説が表示されます。
Q1. 市場・中央銀行が政策判断でより重視する指標は?
コアCPIは振れの大きい要素を除くため、基調的なインフレ圧力が見えやすい指標として重視されます。
Q2. コアCPIが市場予想を大きく上回った。教科書的な経路は?
CPIは金利期待を通じて為替に伝わります。強いインフレは高金利維持観測につながり、ドル買い方向に働きやすくなります。
Q3. 前年比が鈍化する一方、前月比が加速していた。どう読むのが妥当か?
前年比は基調、前月比は直近の勢いを示します。両方を確認することで、見出しだけでは分からない変化に気づけます。
Q4. CPI発表日の行動として、このコースの推奨は?
CPIは雇用統計・FOMCと並ぶ最重要イベントです。乱高下しやすい時間帯を避け、記録を積み重ねることが基本の対応です。