3つの層
1. ルール:いつ、どちらを向くか
ルールは市場データを入力し、買い・売り・見送りの候補を返します。「東京時間の高値を、ロンドン序盤の15分足終値が上抜いたら買い候補」のように、同じデータなら誰が判定しても同じ結果になる形が理想です。ここではまだロットや口座全体の配分を決めません。
2. 戦略:候補を取引可能な形にする
戦略は、エントリーと決済、損切り、保有期限、1回の許容損失、コスト上限、取引しない条件までを含みます。良い方向判定でも、スプレッドに対して狙い幅が小さければ損益は残りません。ルールの正解率だけでは戦略の良し悪しを判断できません。
3. 運用ポートフォリオ:複数戦略へ資金を配る
ポートフォリオは、各戦略へ何%のリスクを割り当てるかを決めます。USD/JPY買い、EUR/JPY買い、XAU/USD買いが別名でも、同じドル安・円安局面に依存していれば同時に崩れる可能性があります。数を増やすことと分散は同じではありません。
ドル円の例
教育用の例として、「東京レンジをロンドン序盤に上抜いたら買い候補」という観察を考えます。
- ルール:東京時間の範囲、判定足、上抜けの定義を固定する。
- 戦略:次の足で入る、直近安値に損切り、口座の0.5%を上限、重要指標前は見送る、一定時刻で撤退する。
- ポートフォリオ:同時に動きやすい円クロスやゴールドの戦略とリスクが重なっていないか確認する。
ルールの方向判定がわずかに有効でも、指標時の滑りで損益が消えるなら戦略層の問題です。個別戦略が想定内でも同時損失が大きいなら配分層の問題です。
壊れた層を診断する
- ルールを確認:シグナル後の値動きが比較対象より良かったか。
- 戦略を確認:コスト後期待値、損切り、約定、ルール遵守に問題がなかったか。
- 配分を確認:同時保有、共通通貨、相関、合計リスクが偏っていなかったか。
損失が出るたびに条件を足すと、第3回で学んだ過剰最適化に戻ります。まずどの層の問題かを切り分け、ルールを変更するなら新しい試行として記録します。
よくある間違い
勝率だけで戦略を評価する
勝率はルールの一面にすぎません。損益幅、コスト、サイズ、連敗、最大損失まで含めて初めて戦略を評価できます。
通貨ペアを増やせば分散になる
同じ円売りやドル売りに依存するポジションは、名前が違っても同時に損失を出します。共通する要因まで見ます。
不調なら条件を追加する
原因が約定やサイズにあるのにエントリー条件を変えると、問題を隠したうえに試行回数だけ増やします。
実戦課題
自分の取引方法を、次の3行に分けて書いてください。
- ルール:買い・売り・見送りを何で決めるか。
- 戦略:入口、出口、損切り、サイズ、コスト、見送り条件。
- 運用:同時保有上限、通貨別上限、全体の停止条件。
チェックリスト
- ルールと戦略の違いを説明できる
- ポジションサイズは戦略層に含まれると理解した
- 銘柄数と分散を混同していない
- 成績悪化を3層に分けて点検できる
ミニテスト
4問で確認します。
Q1. 売買ルールの主な役割は?
ルールは市場データから売買候補を出す層です。
Q2. 戦略層に含まれるものは?
売買候補を実際の損益へ変える設計が戦略です。
Q3. 通貨ペアを3つに増やしたら必ず分散になる?
同じ円売りなどに依存すれば同時に崩れます。
Q4. 不調時に最初に行うことは?
原因の層を特定せずにルールを変えると過剰最適化を招きます。