観察と仮説の違い

「ドル円は東京高値を抜けると伸びやすい」は観察です。高値の集計時間、抜けたと判定する足、伸びたと数える値幅、評価期限が分からないため、都合のよいチャートだけを選べます。仮説は、失敗になる結果まで先に書いた観察です。

観察「抜けると伸びやすい」仮説対象・時刻・条件結果・期限成功・失敗・比較対象反証できる
良い仮説は「当たる説明」ではなく、「外れたと判定できる仕様」です。

7項目で仕様化する

  1. 対象:シンボル、時間足、検証期間を固定する。
  2. データと時刻:データ提供元、タイムゾーン、日足境界、欠損処理を固定する。
  3. トリガー:数値と条件で、候補が発生する瞬間を定義する。
  4. 予測する結果:リターン、到達値幅、勝敗など測れる量を1つ決める。
  5. 期限:何本後、何時まで、何日以内かを決める。
  6. 成功と失敗:採用・不採用の基準を結果を見る前に書く。
  7. 比較対象:条件なし、ランダム時刻、同じ方向比率など、次回学ぶ基準を決める。
日付・時刻は検証条件です

FXは24時間動き、業者によりサーバー時刻や日足境界が異なります。「東京時間」「日足」を書くだけでは再現できません。JSTとサーバー時刻の両方を記録します。

FXの例

曖昧な主張:「東京レンジを上抜けたドル円は上がりやすい」。検証用には、例えば次のように固定します。

これは手法の推奨ではなく、曖昧な文章を測定可能にする例です。数値を見た後で時間帯や本数を変えれば、新しい試行になります。

ゴールドの例

「ゴールドはドル安で上がる」も、そのままでは仮説ではありません。XAU/USDのデータ提供元、ドル指数の時刻、同時点の変化か翌日の変化か、実質金利やイベント日をどう扱うかを固定します。CFDでは取引時間・スプレッド・ロール条件も業者ごとに違うため、結果だけでなく契約仕様も残します。

エッジ候補の見つけ方:探索と確認を分ける

エッジ発見の入口は、チャート観察、取引日誌、市場制度、経済的な仕組み、探索的な集計です。曜日、時間帯、ボラティリティ、方向、イベント前後などに分けると差が見えることがあります。ただし、探索に使ったデータ上の差は候補を作った証拠であり、そのまま採用の証拠にはなりません。

  1. 観察:何が違って見えるかを記録する。
  2. 仕組み:なぜ差が生まれ得るか、参加者・制度・執行の理由を考える。
  3. 仕様化:入口、出口、期限、コスト、失敗条件を固定する。
  4. 比較:同じ時刻・保有時間・方向比率を持つコントロール群との差を測る。
  5. 確認:探索に使っていない期間やデータで再評価する。
探索データで見つけた差を、同じデータで証明しない

切り口を増やすほど偶然の好成績も見つかります。探索時に比較した条件と選択過程を保存し、確認用データを触る前に仮説を固定します。試行会計と多重検定補正は試行回数NとDSRで扱います。

よくある間違い

結果を見てから「本物の形」を決める

伸びた場面だけを本物のブレイクと呼ぶと、失敗例が定義から消えます。トリガーは結果を知らない時点で判定できる必要があります。

期限を決めない

「いつか上がる」はほぼ反証できません。8本後、当日クローズなど、失敗を確定できる期限を置きます。

勝率だけで成功にする

無条件でも同程度に上がる市場なら、勝率が高くても追加情報はありません。比較対象との差を見ます。

実戦課題

自分がよく使う曖昧な言葉を1つ選び、7項目を埋めてください。まだバックテストは実行せず、まず仕様だけを保存します。保存日時と仮説IDを付けると、後から条件を動かした履歴を追えます。

ICT用語の仕様化例

「強いDisplacement」「きれいなFVG」のような裁量語を実体倍率、ATR比率、回帰期限へ変える例はICT手法をバックテストするで扱います。

チェックリスト

ミニテスト

4問で確認します。

Q1. 検証可能な仮説に必須なのは?

外れたと判定できる条件が必要です。

Q2. 「いつか価格が戻る」の問題は?

期限のない予測は反証できません。

Q3. 結果を見てから条件を変えた場合は?

選択を伴う変更は試行回数に加えます。

Q4. FXの時間帯仮説で記録すべきものは?

時刻規約が違えば同じ条件を再現できません。