両建てグリッドEAをゼロから作る(第10回:まーとりあえず動くやつ)

この連載は研究用です。 第0版でドローダウン鬼デカです。読み物として楽しんでもらえれば。

前回のおさらい

第9回は、終わらないサイクルを −50ドルで損切りして、また入り直しました。サイクルは固まらなくなりましたが、損切りのたびに払うスプレッドが積み上がり、損益合計は −22,079 USD でした。

ここまでのEAは、部品を1つずつ足して違いを見るために、どれもわざと素朴に作ってきました。今回は、その部品を1つずつ賢くしたものを回します。 

第10回:部品を全部、少しずつ賢くする

第4回の剥がし型(HG06)と、完成版(HG13)の違いです。エントリー(ADX)、ロック、追加、サブ玉、剥がし、まとめて決済、という部品の並びは同じです。

部品第4回(HG06)完成版(HG13)
エントリー1分足と30分足の ADX(14)≥221分足 ADX(25)≥25 と 15分足 ADX(20)≥25(記事にしなかった試行 N=26 と同じ値。下で説明します)
1本だけのとき+5ドルで利食い利食いの指値は置かない。1分足の値幅の平均(ATR)の0.3倍まで伸びたら、ストップを建値へ。0.6倍まで伸びたら、0.3倍の距離でストップを追いかける
ロックする条件5ドル逆行したら5.5ドル逆行し、かつ直近3本の1分足の安値(買いのとき)を割ったら
メイン玉を足す条件一番外側の建値から5ドル抜けたら直近5本の1分足の高値・安値を0.2ドル抜け、かつ同じ向きの最後の玉から間隔ぶん離れたら。間隔は5.5ドルから、玉が1本増えるごとに5%ずつ縮む(3〜10ドル)
サブ玉を始める本数メイン玉8本メイン玉7本
サブ玉のロット0.02固定メイン玉の合計ロットの50%(上限0.5)。決めたロットは、次に剥がすまで変えない
サブ玉の向き先に抜けた片方だけ中心から3ドル上に抜けたら買い、3ドル下に抜けたら売り。両方持てる
サブ玉を足す条件5ドルごと、5本までメイン玉と同じ縮む間隔で、本数の上限なし
剥がし一番負けているメイン玉+サブ玉全部が +1ドル同じ考え方で +0.3ドル(手数料込み)
まとめて決済の目標+5ドル玉1本につき1ドル+1ロットにつき10ドル(最低3ドル)。玉が増えるほど目標も上がる
まとめて決済のしかた1本ずつ決済利益の出る買いと売りの組を先に相殺(close-by)してから、残りを決済
上限メイン玉20本メイン玉とサブ玉で100本

ロットを増やすのはサブ玉だけで、メイン玉は最後まで0.01ロットです。

値は回す前に決めて記録し、1回だけ回しました。結果を見てから値を変えてはいません。 

結果:最後まで走り切って、+13,999 USD

条件は第0回の表のとおりです(XAUUSD、2025-01-01〜2026-07-01、リアルティック、メイン玉は0.01ロット、初期証拠金 50,000 USD)。

項目第4回第10回(完成版)
1サイクル(エントリーから全部決済まで)48回3,954回
終わらなかったサイクル1本(2025-02-11〜)なし(テスト終了日に始まった1本だけ強制決済)
損益合計−10,009 USD+13,999 USD
最大DD(含み損込み)−19,061 USD−17,354 USD
含み損込みの一番低いところ31,179 USD45,303 USD(2026-05-13)
同時に持った玉最大24本・0.28ロット最大100本・6.00ロット
試行回数 N2032
DSR0.001(N=100 換算 0.000)0.085(N=100 換算 0.036)
資産の推移

MT5の画面も貼っておきます。上段がGoldの値動きと売買、下段の青い線が残高、緑の線が含み損益込みの資産(有効証拠金)です。

MT5の画面(完成版)

連載で初めて、損益合計がプラスで終わりました。(含み損がなければ)残高は18か月のあいだ、毎月増えています。

20本以上まで膨らんだサイクルは66回ありましたが、66回ともプラスで終わりました。第4〜10回では必ず1本は出てきた「終わらないサイクル」が、今回は出ていません。

負けたサイクルは1,497回ありますが、ほとんどは1本だけのときに建値ストップにかかったもので、平均 −0.19 USD です。残りの1回は、テスト最終日の6月30日に始まり、終了時に強制決済したサイクル(−236 USD)です。 

ただし:2026年5月の1サイクルがエグい。

図のグレーの線は、2026年5月に大きく落ちています。5月6日に始まったサイクルです。

 日  玉の数メイン玉 買い/売りサブ玉 買い/売り
5月6日15本0.03/0.080.10/0.10
5月8日34本0.15/0.060.99/0.44
5月11日56本0.15/0.140.99/1.98
5月12日72本0.20/0.161.65/2.31
5月15日100本(上限)・6.00ロット0.19/0.46剥がして0
5月18日全部決済(+248 USD)

Goldが4,700ドル付近で上下に振れるあいだに、サブ玉が上では買い、下では売りと、両方に積み上がりました。サブ玉のロットはメイン玉の合計の半分なので、メイン玉が増えると1本0.04〜0.13ロットまで大きくなります。5月12日には、メイン玉0.36ロットに対して、サブ玉は 3.96ロット でした。

いちばん深かった5月13日は、残高 62,632 USD に対して、含み損込みの資産は 45,303 USD まで下がりました。それまでの16か月で積み上げた利益(+12,632 USD)が全部含み損に飲まれ、さらに初期証拠金を4,697 USD 割り込んだところです。

このときの玉の並びは、「高いところの買いと、安いところの売り」でした(サブ玉の買いは4,690〜4,773ドル、売りは4,591〜4,717ドル)。今回は5月15日にGoldが4,516ドルまで下がったので、売りのサブ玉に利益が乗り、剥がしが進んで、18日にまとめて決済できました。 

DDはどれくらい大きいのか

項目金額
18か月の損益合計+13,999 USD
最大DD(含み損込み)−17,354 USD
いちばん深いときに持っていた玉72本・4.32ロット(その2日後に100本・6.00ロット)
  • 1回のDDが、18か月の利益より大きいです。この利益を取るには、そのあいだ一度も止めずに、17,000 USD を超える含み損に耐える必要がありました
  • もちろん証拠金をそれ以下でスタートしていれば飛んでます。
  • 6.00ロットはGold 600オンス、当時の価格で約276万ドル分です。50,000 USD の口座の、55倍の大きさの玉を持ったことになります
  • メイン玉は0.01ロットのままでも、サブ玉が玉の量を自分で増やしていきます。その量の上限は、本数の上限(100本)しかありません
  • DSR は 0.085 で、採用の目安 0.95 には遠く届きません。1回の取引あたりの損益の95%の幅も −1.10〜+3.56 USD で、ゼロをまたいでいます。この +13,999 USD が「たまたま」でないとは言えません 

下段を抜き出したものです。青い残高はなめらかに右上がりですが、緑の線は何度も下に突き出し、2026年5月には一気に 45,000 USD 台まで落ちています。

残高と含み損込みの資産(MT5)

MT5 のレポートの数字でも見ておきます。

MT5のテスター結果(完成版)

⚠ 注意:DDがでかい。左の列の「総損益 13 998.68」だけを見ると、1年半で +14,000 USD のEAに見えます。でも右の列の「証拠金最大ドローダウン 17 178.90(27.41%)」は、その総損益より大きいです。確定した残高だけで見ても、真ん中の列の「残高最大ドローダウン」は 12,862.76 USD(18.04%)で、利益とほぼ同じ大きさです。このEAは、利益より大きい含み損をいったん抱えることで、この利益を出しています。バックテストの結果を見るときは、総損益より先にドローダウンを見てください。

MT5 のレポートの項目値
総損益+13,998.68 USD
総利益/総損失+245,047.92/−231,049.24 USD
証拠金最大ドローダウン−17,178.90 USD(27.41%)
リカバリファクター0.81
プロフィットファクター1.06
  • 含み損込みの資産が、山から27%減りました。 50,000 USD の口座なら、資金の4分の1以上が一度に消えて見える場面です
  • リカバリファクターは 0.81 で、1 を下回っています。 リカバリファクターは「損益合計 ÷ 最大ドローダウン」です。1 を下回るのは、18か月ぶんの利益を全部足しても、ドローダウン1回ぶんに届かないということです
  • 総利益 245,048 USD と総損失 231,049 USD の差が、手元に残った 13,999 USD です。動かした金額の 6%弱 しか残っていないので、スプレッドや滑りが少し悪くなるだけで、簡単に消える幅です

(上の表の最大DD −17,354 USD と少し違うのは、計算のしかたの違いです。上の表は、残高と含み損込みの資産の高いほうを山にして測っています。)

ここまでのまとめ

ここまで11回かけて、両建てグリッドEAをゼロから組み立て、6つの型と、損切りを入れたもの、完成版を、同じ条件で回しました。

  • どの型も、勝ちは「小さなサイクルをたくさん」、負けは「終わらないサイクル1本」だった
  • 終わらないサイクルが来た日と、そのとき抱えた玉の量と向きで、損益の大きさが決まった
  • ロットを増やす型(第8回)は、その1本で口座を使い切った
  • 終わらないサイクルを損切りで終わらせると、固まらなくはなるが、損はスプレッドに形を変えて、もっと大きくなった(第9回)
  • 部品を全部賢くした完成版は、終わらないサイクルを出さずに走り切り、+13,999 USD になった。ただしそのために、サブ玉で最大6ロットまで玉を膨らませ、利益より大きい −17,354 USD のDDを通った
  • これまでの試行(N=32)で、DSR が 0.95 に届いたものは1つもなかった

いろいろ駆使すれば、完走はできて、利益もそこそこ出ます。でも最大DDが大きすぎるので、リアル口座で動かすことはありません。 ここまでの結論です。 

次回

次回は、この完成版の最初の1本を、ADX からほかの有名なテクニカル5種類(EMA・MACD・RSI・ボリンジャーバンド・ストキャスティクス)に入れ替えて比べます。

試行回数について

今回は N=32 です。第9回(N=31)の続きで数えています。回す前に値を決めて記録し、1回だけ回しました。 

ソースコード

研究用です。リアル口座では使わないでください。ログ出力の hg_log.mqh は第1回と同じです。ファイル名の番号(HG13)は作った順の通し番号で、回の番号とはずれています。

HG13_Complete.mq5

すみません。一瞬ここに載せてたんですが、現在はこちらからゲットしてください。

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