ロスカットの仕組み:維持率と発動の流れ

FXでは、ポジションを持つために必要証拠金を差し入れます(レバレッジと証拠金)。 口座の資産(残高±含み損益)が必要証拠金の何%あるかを示すのが証拠金維持率で、 含み損が増えるほど維持率は下がっていきます。 維持率が会社の定めるロスカット水準(国内では50%〜100%の設定が多い)を下回ると、 ポジションが本人の意思と関係なく強制決済されます。これがロスカットです。

用語の注意:「ロスカット=損切り」の意味で使う人も多い

日本では「ロスカット」を自分の判断で行う損切りの意味で使う人や記事も多くあります(「昨日ロスカットした」=損切りした、など)。 このサイトでは混同を避けるため、自分の意思による決済は「損切り」、FX会社による強制決済は「ロスカット」と呼び分けています。 他のサイトや書籍を読むときは、どちらの意味で使われているか文脈で確認してください。

証拠金維持率 300% 余裕あり 100%前後 マージンコール(警告) 50%(例) ロスカット発動 含み損が増えるほど維持率が低下 →
水準の数字(100%・50%など)は会社ごとに異なる。自分の口座の設定を必ず確認する

誤解されやすい点ですが、ロスカットはあなたを勝たせるための仕組みではなく、 損失が口座資金を超えないようにするための(そしてFX会社が未回収リスクを負わないための)ブレーキです。 発動した時点で口座資金の大半は失われています。

マージンコールとの違い

多くの会社では、ロスカットの手前にマージンコールという警告段階があります(例: 維持率100%を下回るとメールやアプリで通知)。 この段階で取れる選択肢は3つです。

マージンコールが来る時点で設計ミス

適切なポジションサイズ(ポジションサイズの計算方法)で取引していれば、 1回の負けは口座の1%前後の損失で済み、維持率が警告水準まで落ちることはまずありません。 マージンコールは「今回のピンチの通知」であると同時に、「そもそもロットが大きすぎる」という取引設計への警告です。

追証:ロスカットが間に合わないとき

ロスカットは「水準を下回ったら、そのとき取引できる価格で決済する」仕組みです。 通常の相場ではほぼ水準どおりに執行されますが、値が飛ぶ場面では話が変わります。

週明けの「窓開け」でロスカットがすべる例(買いポジション) 金曜の終値 ロスカット水準(ここで決済される予定だった) 月曜の始値=実際の決済価格 土日の間に相場が急変。 間の価格では取引できない(窓)
決済は「水準の価格」ではなく「次に取引できた価格」。飛んだ分の損失は口座残高を超え得る

週末をまたいだ急変(窓開け)や、要人発言・金融危機などによる急変動では、 ロスカット水準を大きく飛び越えた価格で決済されることがあります。 その結果、損失が口座残高を上回った場合、不足分をFX会社に支払う義務が生じます。これが追証(追加証拠金)です。 国内FXでは追証は法的な支払い義務です。海外FXの多くは「ゼロカット」として不足分を免除しますが、 それには金融庁登録の外で取引するという別の重いリスクが伴います(国内FXと海外FXの違い)。

よくある間違い

「ロスカットがあるから損切り注文は要らない」

ロスカットの発動は「口座資金の大半を失った時点」で、しかも急変時にはすべります。 自分の損切り(損切りの決め方)は「シナリオが崩れた時点」で小さく出るための道具で、役割がまったく違います。 ロスカットは、損切りを置き忘れたときの最後の防波堤に過ぎません。

マージンコールのたびに追加入金して耐える

追加入金は「負けているポジションを、より多くの資金を賭けて延命する」行為です。 維持率は回復しますが、相場が戻る保証はどこにもなく、失う金額の上限だけが増えていきます。 生活資金からの追加入金は、このサイトが一貫して止めている行為です。

「維持率100%あれば安全」だと思う

維持率100%は「含み損がこれ以上増えたら警告」という崖っぷちの数字です。 レバレッジを抑えた取引では維持率は数百〜数千%になるのが普通で、 維持率が2桁〜100%台に落ちること自体が、ロットの張りすぎのサインです。

実戦での防ぎ方

  1. すべての新規注文に損切りを付ける:ロスカットに出番を作らないことが最良の対策です。逆指値の使い方は注文方法で説明しています。
  2. 1回の負けを口座の1%前後に抑えるロットで入る:損切り幅からロットを逆算すれば、維持率が警告水準に近づく取引は構造的に起きにくくなります。
  3. 週末・重要イベントをまたぐ持ち越しを点検する:窓開けは損切りもロスカットもすべらせます。持ち越すなら「最悪の窓」を想定した量に落とすか、決済しておくのが安全側です。
  4. 自分の口座のロスカット水準とマージンコール水準を確認しておく:会社ごとに違います。知らないまま取引している人が意外に多い項目です。

チェックリスト

以下が自分の言葉で説明できるか確認してください。

ミニテスト

最後に3問だけ確認です。不正解なら別の選択肢を選び直せます。正解すると解説が表示されます。

Q1. ロスカットが発動する条件は?

基準は損失額ではなく維持率(口座資産÷必要証拠金)です。水準は50%や100%など会社ごとに異なります。

Q2. 追証が発生するのはどんなとき?

ロスカットは「次に取引できた価格」で執行されます。値が飛ぶと残高を超える損失になり、国内FXでは不足分の支払い義務(追証)が生じます。

Q3. 「ロスカットがあるから損切り注文は不要」が間違いである理由は?

損切りは「シナリオが崩れたら小さく出る」ための道具、ロスカットは「口座が尽きる前に止める」装置。頼る順番を逆にしてはいけません。