先に決めるのは「1回で負けていい額」
ロット計算の入力は3つです。①口座資金、②1回の取引で許容する損失の割合、③損切り幅(前回の3点セットで出した数字)。 このうち自分で決めるのは②だけで、定番は1回あたり口座の1%(学習中は0.5%でもよい)、上限でも2%です。
なぜ1%なのか。勝率5割の手法でも、10連敗は現実に起こるからです(確率約0.1%=1000回やれば1回。トレード回数を重ねれば誰でも引きます)。 1%リスクなら10連敗しても口座は約-10%で、続行できます。10%リスクなら10連敗で口座はほぼ消えます。 リスク設定とは「何連敗まで生き残るかの設計」です。
計算式と具体例
取引量(通貨) = 許容損失額(円) ÷(損切り幅pips × 0.01円)
※クロス円の1pips = 0.01円/1通貨。1万通貨なら1pips = 100円(はじめてのFX第3回)
手順どおりに一度やってみます。口座30万円、ドル円の押し目買い、エントリー149.80、損切り149.50(幅30pips)とします。
- 許容損失額 = 300,000円 × 1% = 3,000円
- 1通貨あたりの損切り金額 = 30pips × 0.01円 = 0.3円
- 取引量 = 3,000円 ÷ 0.3円 = 10,000通貨(1万通貨)
この計算のいちばん大事な性質は、損切り幅が広い場面ではロットが自動的に小さくなることです。 「今日は自信があるからロット2倍」でも「損切りが遠いから仕方なくそのまま」でもなく、 リスクが常に一定になるように取引量の方が伸縮します。
はじめてのFX第4回で「実効レバレッジ3倍以内」という上限を決めました。上の例(30万円で1万通貨=約150万円分、実効レバ5倍)のように、 1%ルールの計算結果が上限を超える場合は、小さい方に合わせます。 1%ルールは「1回の負けの上限」、実効レバは「口座全体の張りすぎ防止」。役割が違う2つの安全装置です。
なぜこの順番なのか:連敗に耐える設計
「10万円を最速で増やしたい。だからハイレバで」という発想を逆から見ると、こうなります。 リスク10%で5連敗(勝率5割なら約3%の確率。すぐ起きます)で口座は約-41%。 そこから元に戻すには+69%の利益が必要です。失った割合より、取り戻すのに必要な割合の方が大きい。この非対称性が、ハイリスク運用が破綻する数学的な理由です。
リスク1%なら5連敗で約-5%。+5.3%で戻せます。 トレードの上達には数百回の試行が必要で、その全期間を生き残ることが大前提です。 ロット計算は「増やす技術」ではなく「試行回数を確保する技術」だと捉えてください。
自分の勝率とリスク%で、連敗やドローダウンが実際どのくらい起きるかはドローダウン計算機でシミュレーションできます。
連敗時の停止ルール
1回ごとのリスクを決めたら、もう1段の安全装置として期間ごとの停止ラインを決めます。定番は次の形です。
- 1日に2連敗(または-2%)したら、その日は終了
- 1週間で-5%になったら、その週は新規エントリーなし
- 1か月で-10%になったら、取引を止めて検証に戻る
数字は目安で、自分の取引頻度に合わせて調整して構いません。大事なのは、連敗中の自分は正常な判断ができていない前提でルールを作ることです。 損失を取り返そうとするリベンジトレードは、連敗の後半で口座を壊します。停止ルールは、それを機械的に遮断する仕組みです。
よくある勘違い
「勝ちたい額」からロットを決める
「月10万円稼ぎたいから、1回2万円勝てるロットで」。市場はあなたの目標額を知りません。 コントロールできるのは損失側だけです。計算の起点は常に「負けてもいい額」です。
毎回同じロットで取引する
固定ロットだと、損切り幅が広いトレードほどリスクが大きくなります。「同じ1万通貨」でも、損切り20pipsなら2,000円、80pipsなら8,000円。 リスクを揃えるためにロットを変える、が正しい方向です。
勝ち始めたらリスク%を上げる
口座が増えれば同じ1%でも金額は自然に増えます(複利)。%そのものを上げるのは、連敗設計を作り直すことと同義です。 少なくとも学習期間中は1%を固定してください。
実戦:自分の数字で3問解く
電卓を出して、実際に解いてください。答えは自分で式から出します(答え合わせはミニテストで)。
- 口座50万円・リスク1%・ドル円で損切り幅25pips。取引量は?
- 口座10万円・リスク1%・クロス円で損切り幅50pips。取引量は?(最低取引単位1,000通貨の会社で取引できる量か?)
- 自分の(予定の)口座資金と、直近の検証でよく使う損切り幅で、自分の標準ロットを計算する。
2問目のように、口座が小さいと計算結果が最低取引単位を下回ることがあります。そのときの正解は「ロットを増やす」ではなく、 「1,000通貨で取引してリスクを1%未満に抑える」または「その損切り幅のトレードを見送る」です。
式を手で解けるようになったら、毎回の計算にはポジションサイズ計算機が使えます。 実効レバレッジと必要証拠金の目安も同時に表示します。
チェックリスト
次の記事に進む前に、以下が自分の言葉で説明できるか確認してください。
- 適正ロットの計算式(入力3つと計算順)
- 1回のリスクを1%程度にする根拠(連敗との関係)
- 損切り幅が広い日にロットがどうなるか
- -41%の損失を取り戻すのに+69%必要になる非対称性
- 1%ルールと実効レバレッジ上限の役割の違い
- 自分の連敗時停止ルール
ミニテスト
最後に4問だけ確認です。電卓を使って構いません。
Q1. 口座50万円・リスク1%・ドル円で損切り幅25pips。適正な取引量は?
許容損失5,000円 ÷(25pips × 0.01円)= 5,000 ÷ 0.25円 = 2万通貨です。2万通貨で25pips逆行すると、ちょうど5,000円の損失になります。
Q2. 同じ口座・同じリスク1%で、損切り幅が30pipsから60pipsに広がった。ロットはどうする?
幅が2倍ならロットは半分。損失額が常に1%で一定になります。Bのように「ロットのために損切りを動かす」のは、前回やった「根拠と無関係な損切り」への逆戻りです。
Q3. 1回のリスクを口座の1%程度に抑える主な理由は?
勝率5割でも10連敗は現実に起こります。1%なら-10%で続行可能、10%ならほぼ退場。リスク設定は「何連敗まで生き残るか」の設計です。
Q4. 口座が-41%になった。元の金額に戻すのに必要な利益率は?
100→59になった口座を100に戻すには 41÷59 ≒ +69%が必要です。失う割合より取り戻す割合の方が常に大きい。だから深い傷を負わないことが最優先です。