MACDとボリンジャーバンドを作った2人
ジェラルド・アペル:MACDの開発者
Gerald Appel(ジェラルド・アペル)は、MACD(Moving Average Convergence/Divergence)の開発者です。 定量的・体系的なテクニカル分析を重視し、1973年に投資ニュースレター「Systems and Forecasts」を創刊しました。 35年以上にわたり顧客資産の運用にも携わり、投資に関する著書を17冊執筆した人物です。
MACDは複雑な未来予測モデルではなく、短期と長期の移動平均の差を見える形にしたものです。 アペルの経歴と一貫する、数値化しやすくルールへ落とし込みやすい指標だといえます。 略歴の出典と顔写真はCMT AssociationのGerald Appelプロフィールで確認できます。
本人と確認できる写真は見つかりましたが、再利用ライセンスが明示された素材は確認できませんでした。 画像URLが分かっても転載許可があるとは限らないため、ここでは出典ページへのリンクに留めています。
ジョン・ボリンジャー:ボリンジャーバンドの開発者
John Bollinger(ジョン・ボリンジャー)は、CFA・CMTの資格を持つ米国のテクニカルアナリストで、 1980年代初頭にボリンジャーバンドを開発しました。固定幅の帯ではなく、その時々のボラティリティに合わせて帯が広がったり縮んだりする設計が特徴です。 自身の公式サイトでも、ほかの指標と組み合わせて確認する道具として説明しています。
MACD:移動平均の差=勢い
MACD(マックディー)の本体は、たった1行で書けます。 MACD線 = 短期EMA(12) − 長期EMA(26)。 2本の移動平均線の「間隔」を、そのまま折れ線にしたものです。
- 上昇が加速する → 短期EMAが長期EMAから上に離れる → MACD線が上に伸びる
- 上昇が減速する → 間隔が縮む → MACD線が下を向く(レートはまだ上がっていても)
- 2本がクロスする → MACD線が0を跨ぐ(ゴールデンクロス/デッドクロスと同じ瞬間)
これに、MACD線自身をさらに平均したシグナル線(9)と、2本の差を棒グラフにしたヒストグラムを添えたのが通常の表示です。 部品はすべて移動平均です。第4回の「遅れる」性質もそのまま受け継ぎます。
MACDの読み方と限界
実用的な読み方は2つに絞れます。
- 0ラインのどちら側か:上なら短期>長期(上向きの配置)、下なら逆。大きな流れの確認。
- ヒストグラムの伸び縮み:伸びている間は勢いが加速中、縮み始めたら減速。RSIのダイバージェンス(第6回)と同様、「利を伸ばす/追いかけない」の判断材料。
「MACDとシグナルのクロスで売買」という定番の使い方の弱点も、第4回のクロスの話と同一です。 移動平均由来なのでレンジ相場ではクロスが頻発してダマシだらけになり、トレンドでは出るのが遅くなります。 相場の分類が先、はここでも変わりません。
ボリンジャーバンド:変動幅の物差し
ボリンジャーバンドは、移動平均線(通常20期間)の上下に、 標準偏差(σ・シグマ)×2の帯を引いたものです。標準偏差は「最近の値動きのばらつきの大きさ」なので、こう読めます。
- バンドの幅そのもの:広い=最近よく動く相場、狭い=動かない相場。幅の急収縮(スクイーズ)の後には、大きく動く局面(エクスパンション)が来やすいことが知られています。
- ±2σの位置:「最近の変動ペースから見て極端な位置」の目安。統計の教科書どおりなら±2σ内に約95%が収まりますが、相場の値動きは教科書どおりの分布ではないため、この95%を文字どおりに信じてはいけません。
バンドウォーク:逆張り誤解の正体
「±2σは滅多に超えないのだから、バンドにタッチしたら逆張り」。この解説は今も大量に出回っています。 そして強いトレンドが来るたびに、同じ事故が起きます。
これをバンドウォークと呼びます。バンドは過去の変動から計算されるので、トレンドが加速すればバンド自体が広がって傾き、 レートは±2σに沿ったまま何日でも進みます。RSIの張り付き(第6回)とまったく同じ構造です。 考案者のジョン・ボリンジャー自身が「バンドタッチはそれ自体では売買サインではない」と明言しています。
3つ知ったら、もう増やさない
補講2回で扱ったRSI・MACD・ボリンジャーバンドと、本編の移動平均線。気づいたと思いますが、全部に同じ結論が出ました。
- 元データは同じ値動き。新しい情報は足されない
- レンジとトレンドで挙動が正反対になる。相場の分類(第2回)が常に先
- 「サインの丸暗記」は、分類を無視した瞬間に損の量産機になる
だからこのコースの推奨は変わりません。常用は移動平均線1〜2本。オシレーターを足すなら1つまで。 4つ目のインジケーターを探し始めたら、それは手法探しの旅(リスク管理第3回)の入り口です。 インジケーターの知識はこれで「他人の解説が読める」水準に達しています。次に増やすべきは道具ではなく検証の例数です。
実戦:2週間でどれか1つに絞る
- 1週目:MACDを表示して毎日1行記録する:「0ラインの上/下・ヒストグラム伸び/縮み」と、その日の相場分類。
- 2週目:ボリンジャーバンドに入れ替えて同じことをする:「幅が広い/狭い・バンドウォークの有無」。
- 2週間後、常用を決める:移動平均線のみ/+RSI/+MACD/+ボリンジャーのどれかに決めて、以後固定します。決めた理由を1行、日誌に書いてください。
チェックリスト
補講修了前に、以下が自分の言葉で説明できるか確認してください。
- MACD線の計算(何と何の差か)
- ヒストグラムの伸び縮みが表すもの
- ボリンジャーバンドの帯は何から計算されるか
- バンドウォークとは何か、なぜ起きるか
- 4つのインジケーターに共通する3つの結論
- 自分の常用インジケーター構成(と、その理由)
ミニテスト
最後に4問だけ確認です。不正解なら別の選択肢を選び直せます。正解すると解説が表示されます。
Q1. MACD線の正体は?
MACD=短期EMA(12)−長期EMA(26)。2本の移動平均線の間隔を折れ線にしたものです(Cの説明はRSI)。
Q2. ボリンジャーバンドの±2σの帯が表しているのは?
帯は「最近の変動ペース」の物差しであって、壁ではありません。相場の分布は教科書どおりではないため「95%収まる」も文字どおりには成立しません。
Q3. 強い上昇トレンドで「+2σタッチで逆張り売り」を繰り返すとどうなりやすい?
トレンドではバンド自体が広がって傾き、レートは±2σに沿って進み続けます(バンドウォーク)。タッチ逆張りが機能しうるのはレンジ相場です。
Q4. 補講2回を終えた後の、このコースの推奨構成は?
元データが同じなので多数決に意味はなく、入れ替え続けるのは手法探しの旅です。少数を固定し、増やすのは道具ではなく検証の例数です。