反転パターン=トレンド定義の崩壊
チャート第2回の定義を思い出してください。上昇トレンド=高値と安値の切り上げ。 では上昇トレンドが「終わる」とき、チャートには何が残るでしょうか。
- 高値の更新に失敗する(前の高値を超えられない、または超えてもすぐ戻される)
- 直近の安値を割る(安値切り上げの崩壊)
この2つが揃った跡に、後から名前を付けたものが「反転パターン」です。 つまりダブルトップもヘッドアンドショルダーも新しい概念ではなく、トレンド終了の定義そのものを絵にしたもの。 だから覚えるべきは形の輪郭ではなく、「高値の失敗はどこか」「どの安値を割ったら崩壊か」という構造の2点です。
ダブルトップ/ダブルボトム
ダブルトップは、ほぼ同じ水準の高値を2回付けて(=2回目の高値更新に失敗して)、 間の安値(ネックライン)を割った形です。アルファベットの「M」の形になります。
重要なのは、高値が2回並んだ時点では何も確定していないことです。 そこから高値を抜けて上昇継続する未来も普通にあります(その場合はただのレンジ上抜けです)。 ネックラインを割った瞬間に初めて、「高値更新失敗+安値割れ」の2条件が揃います。 ダブルボトムはこの上下反転(W字)で、下降トレンドの終了形です。
ヘッドアンドショルダー
ヘッドアンドショルダー(三尊・さんぞん)は、真ん中の高値(頭)が最も高く、 左右に低い高値(肩)が並ぶ形です。構造をトレンドの言葉に翻訳すると、次のようになります。
- 左肩→頭: 高値更新。ここまでは正常な上昇トレンド
- 頭→右肩: 高値更新の失敗(右肩は頭より低い)
- 右肩からの下落で、2つの谷を結んだネックラインを割る: 安値切り上げの崩壊=完成
つまりダブルトップと完全に同じ2条件です。違いは「上昇の最後の更新(頭)が見えている」ぶん、 トレンドの減速→崩壊の経過が読み取りやすいこと。逆さの形(逆三尊)は下降トレンドの終了形です。 名前は覚えなくても、「高値の失敗+ネック割れ」を探せる目があれば、実戦上は困りません。
値幅の目安と損切り
パターン完成後の下落幅の目安として、「パターンの高さ(高値〜ネックライン)と同じ幅だけ、ネックラインから下がる」 という値幅観測が伝統的に使われます。
使い方には注釈が要ります。これは統計的な保証ではなく、利確候補を事前に1つ決めておくための便宜的な目安です。 目安より手前で止まることも、はるかに超えることもあります。 一方、損切りは構造から決まります(リスク管理第1回の原則どおり)。 売りエントリーなら、右肩(または高値2)の少し上。そこを超えたら「高値更新の失敗」という前提自体が消えるからです。 エントリー(ネック割れ)から右肩上までの距離が損切り幅になり、ロットはそこから逆算します(リスク管理第2回)。
よくある勘違い
完成前に先回りして売る
「2つ目の山ができつつあるから、そろそろ天井」と高値圏で売るのは、パターンの取引ではなく、 上昇トレンドへの逆張りです(チャート第5回でやった「一番分の悪い行為」)。ネックライン割れという証拠を待つこと自体がこの手法の中身です。
すべての山2つをダブルトップと呼ぶ
場所の文脈が要ります。日足レベルの上昇トレンドの天井圏・意識される抵抗帯(チャート第3回)で出た形と、 レンジの真ん中で出た小さなギザギザは、同じ輪郭でも別物です。パターンは「どこで出たか」とセットで初めて意味を持ちます。
完成=100%反転だと思う
ネックラインを割った後、割れが偽物で戻ってくる(フェイクブレイク)ことも当然あります。第3回で詳しく扱いますが、 だからこそ損切り位置が構造から決まっていることが、パターン取引の生命線です。
実戦:完成・未完成を仕分ける
過去チャート(ドル円日足〜1時間足)で、次の演習をしてください。
- 「高値がほぼ2回並んだ場面」を20例集める:ダブルトップの候補です。完成形だけ探さないこと。
- 各例を「完成した/しなかった」で仕分ける:ネックラインを割ったか、それとも高値を抜けて上昇継続したか。
- 完成した例だけ、値幅目安と実際の下落幅を比べる:目安どおりだった例・手前で止まった例・大きく超えた例の割合を数えます。
この演習の狙いは、「山が2つ並んでもかなりの割合で完成しない」ことを自分の目で確認することです。 それが分かっていれば、先回りエントリーの誘惑は大きく減ります。
チェックリスト
次の記事に進む前に、以下が自分の言葉で説明できるか確認してください。
- 反転パターンに共通する2条件
- ネックラインとはどこか(ダブルトップ/H&Sそれぞれ)
- 「完成」はいつか、なぜそれまで取引しないのか
- ヘッドアンドショルダーをトレンドの言葉で説明できる
- 値幅観測の正しい位置づけ(保証ではなく目安)
- 売りエントリー時の損切り位置と、その構造的な理由
ミニテスト
最後に4問だけ確認です。不正解なら別の選択肢を選び直せます。正解すると解説が表示されます。
Q1. 反転パターン(ダブルトップ等)の構造的な正体は?
トレンド終了の定義(高値・安値の切り上げの崩壊)を絵にしたものが反転パターンです。形の輪郭ではなく構造の2条件で覚えます。
Q2. 高値がほぼ同じ水準で2回並んだ。この時点で正しいのは?
山2つの時点では「高値が2回並んだレンジ」にすぎず、上抜けして上昇継続する未来も普通にあります。完成はネックライン割れの瞬間です。
Q3. ヘッドアンドショルダーの「右肩が頭より低い」ことが意味するのは?
頭で最後の高値更新、右肩でその失敗。あとはネックライン(2つの谷)割れで安値切り上げも崩壊し、ダブルトップと同じ2条件が揃います。
Q4. ダブルトップのネックライン割れで売った場合の損切り位置は?
「高値更新の失敗」が根拠なので、その高値を超えられたら仮説の反証です(リスク管理第1回の原則)。完成後もフェイクブレイクはあり、損切りなしは論外です。