保ち合いとは:煮詰まりの構造
レンジ(チャート第2回)は上下の水準がほぼ一定の往復でした。 保ち合いはその親戚で、往復しながら値幅がだんだん狭くなっていく状態を指します。 高値は切り下がり(売りが徐々に強気に)、安値は切り上がる(買いも徐々に強気に)。 両者が譲らないまま接近していくので、チャート上は三角形に見えます。
煮詰まりの先には決着があります。値幅の収縮は「動かない」ではなく「動くためのエネルギーが溜まっている」状態で、 どちらかに放れたとき、我慢していた側の損切り注文と、放れに乗る新規注文が同じ方向に重なって、値幅が出やすくなります。 ボリンジャーバンドのスクイーズ→エクスパンション(チャート第7回)は、同じ現象をインジケーターで見たものです。
三角形の3タイプ
- 対称三角形:両者が対等に接近。方向のヒントは形からは得られません。
- 上昇三角形:上値の売りは一定水準で待ち構え、買いは徐々に高く買い上がる形。教科書的には「買い方優勢で上放れしやすい」と言われます。
- 下降三角形:逆に「売り方優勢で下放れしやすい」とされる形。
上昇三角形の上放れ傾向のような統計は、時代・通貨ペア・時間足で変わります。形から方向を決め打ちせず、 「上位足のトレンド方向(チャート第2回)に放れたら乗る、逆なら見送る」のように、方向の判断は形の外から持ってくるのが安全です。
ブレイクをどう狙うか
保ち合いの取引には2つの立場があります。
- 中の往復を取る:収縮したレンジ内の逆張り。値幅が狭くなるほどスプレッド負けしやすく、初心者向きではありません。
- 放れ(ブレイク)に乗る:三角形の線を抜けた方向に順張り。値幅が出やすく、損切り(三角形の内側に戻された場所)も構造から決まるため、こちらが本命です。
エントリーの実務は、はじめてのFX第6回の道具がそのまま使えます。ブレイクを待ち構えるのは逆指値の新規注文です (上放れ狙いなら、三角形の上限の少し上に逆指値買い)。ただし、置きっぱなしの逆指値はダマシにも自動で乗ってしまう。 そこで次の「確認」の話になります。
2つの確認方法:確定足とリターンムーブ
ダマシ(詳細は次回)への備えとして、実戦では次のどちらかをルール化します。
- 確定足を待つ:ヒゲで一瞬抜けただけの「未遂」を除外するため、抜けた状態でローソク足が確定する(例: 1時間足の終値がラインの外で引ける)のを待ってからエントリーします。ローソク足第1回の「確定前に判断しない」の応用です。
- リターンムーブを待つ:ブレイク後、いったん抜けたラインまで戻ってくる動き(リターンムーブ)を待ち、そこで反発を確認してから入ります。サポレジ転換(チャート第3回)と同じ理屈で、抜けた線が今度は支えになることの確認です。
どちらもトレードオフがあります。確認を増やすほどダマシは減りますが、そのぶん不利な価格になり、リターンムーブが来ないまま伸びる相場は逃します。 「早く入って浅い損切りを何度も払う」か「遅く入って機会を減らすか」。正解は一つではなく、 自分の検証データ(どちらの成績が良いか)で決める種類の問題です。
よくある勘違い
三角形の終点(頂点)まで待てば方向が分かると思う
頂点付近まで煮詰まると、放れのエネルギー自体が弱くなる(両者とも注文を出し尽くしている)ことが知られています。 値幅を狙えるのは、一般に三角形の中盤〜後半での放れです。頂点は「決着」ではなく「不発」のサインになることもあります。
線をぴったり引こうとする
水平線と同じで(チャート第3回)、斜めの線もゾーンです。ヒゲが多少はみ出すのは普通で、 1本のラインの数pips抜けを「ブレイク」と呼ぶ精度はそもそもありません。だから確定足やリターンムーブの確認に意味があります。
ブレイク=新トレンドの始まりだと常に考える
保ち合いは多くの場合、直前のトレンドの「休憩」で、元の方向へ放れて継続します(継続パターンと呼ばれるゆえん)。 ただし例外も多いので、「継続が基本シナリオ、逆放れなら見送りか小さく」という非対称の構え方が現実的です。
実戦:保ち合いの結末を50例数える
- 過去チャートで、値幅が収縮していく場面を50例探す:きれいな三角形でなくて構いません。「高値切り下げ+安値切り上げが数回続いた場面」で十分です。
- 各例の結末を4分類する:①上放れ成功(伸びた)②下放れ成功 ③放れたが戻された(ダマシ)④頂点まで煮詰まって不発。
- 直前のトレンド方向と放れの方向の一致率を数える:「継続が基本シナリオ」が自分のデータで確認できるか見てください。
チェックリスト
次の記事に進む前に、以下が自分の言葉で説明できるか確認してください。
- 三角保ち合いの構造(何と何が同時に進むか)
- 収縮の先で値幅が出やすい理由(2種類の注文の重なり)
- 3タイプの違いと、「方向は形の外から決める」の意味
- ブレイクを待ち構える注文の種類
- 確定足とリターンムーブ、それぞれのトレードオフ
- 頂点付近のブレイクを警戒する理由
ミニテスト
最後に4問だけ確認です。不正解なら別の選択肢を選び直せます。正解すると解説が表示されます。
Q1. 三角保ち合いの構造として正しいのは?
買いと売りが譲らないまま接近していく煮詰まりです(Aは上昇トレンド、Cはレンジ)。収縮はエネルギーの蓄積でもあります。
Q2. ブレイク時に値幅が出やすい理由は?
我慢比べの決着では、損切り(強制的な同方向注文)と新規順張りが燃料として重なります。この注文構造の理解は、次回のダマシの理解にも直結します。
Q3. 「リターンムーブを待ってから入る」ことのトレードオフは?
確認を増やすほどダマシは減り、機会は減る。このトレードオフのどこに立つかは、自分の検証データで決める種類の問題です。
Q4. 上位足が上昇トレンド中に三角保ち合いができ、下に放れた。このコースの推奨に近い対応は?
方向の判断は形の外(上位足のトレンド)から持ってくるのが原則です。逆放れは成立することもありますが、非対称に慎重側へ倒すのが現実的な構えです。