フェイクブレイクとは

フェイクブレイク(ダマシ)とは、サポート・レジスタンスや保ち合いの線をいったん抜けたのに、値動きが続かず元の側へ戻されることです。 ブレイクに乗った人は、エントリーした直後に逆行され、損切りを迫られます。

レジスタンス 「抜けた!」で買い 続かずに逆流
抜けた瞬間がいちばん強く見える。しかし続かなければ、高値づかみだけが残る

やっかいなのは、本物のブレイクとダマシは、抜けた瞬間には見分けがつかないことです。 だからこそ前回説明した「確認」に意味があり、確認してもなお一定割合でダマシに遭う前提で、損切りとセットで扱う必要があります。

なぜ起きるのか:損切りの燃料切れ

前回、ブレイクで値幅が出る理由を「負けた側の損切り注文+放れに乗る新規注文が同方向に重なるから」と説明しました。 ダマシはこの燃料が足りなかったケースです。順を追うとこうなります。

  1. 節目のすぐ外側には、逆張り勢の損切り注文(逆指値)が溜まりやすい
  2. 価格が節目に達すると、その損切りを巻き込んで一気に外へ飛び出す
  3. ここで新しく買いたい(売りたい)人が続けば本物のブレイクになる
  4. 続かなければ、飛び出した値段で買ったのはブレイク組と損切り組だけ。買い手が尽きた価格は、あとは下がるしかない
  5. 今度はブレイク組の損切りが下向きの燃料になり、逆流が加速する
節目を抜ける 損切りを巻き込み急伸 新規の買いが続く → 本物のブレイク 損切り+新規が同方向に重なり値幅が出る 続かない → ダマシ(逆流) 買い手が尽き、ブレイク組の損切りが逆向きの燃料に
分岐を決めるのは「抜けたあとに、新しい参加者が続くかどうか」。形ではなく注文の量の問題

ダマシが出やすい状況にも共通点があります。①誰もが意識するきれいな節目(意識される線ほど、そのすぐ外の損切りも厚い)、 ②流動性の薄い時間帯(取引時間第1・2回で見たとおり、参加者が少ないと少額の注文でも線を突き抜けやすい)、 ③指標発表の直後(瞬間的な乱高下で両側の損切りを往復で刈ることがある)の3つは、ブレイクの信頼度を割り引いて見る場面です。

ヒゲ抜けと確定足:一番安上がりなフィルター

ダマシ対策として最初に導入すべきは、前回も触れた確定足の確認です。 ローソク足が確定する前の「抜けている状態」は、まだ何も確定していません。 終値がラインの外で引けたか、それともヒゲだけ残して戻されたか。この2つは全く違う情報です。

ヒゲ抜け(戻された) レジスタンス 一瞬抜けたが 終値は線の下 長い上ヒゲ=上で買い手が続かなかった痕跡 確定足で抜けた 終値が線の上で 確定 実体で抜けた=上でも買い手がいた証拠
ヒゲは「行ったが押し返された」記録。実体は「その価格帯で取引が成立し続けた」記録
確定足でもダマシは残る

確定足の確認はヒゲ抜けの大半を除外できる安上がりなフィルターですが、 「1本確定してから翌日戻される」タイプのダマシまでは防げません。 フィルターはダマシの確率を下げる道具であって、ゼロにする道具ではない。だから損切りが必須です。

ダマシに遭ったときの対処

どれだけ確認しても、一定の割合でダマシには遭います。差が出るのは遭ったあとです。

逆に利用する考え方

ダマシの構造を理解すると、視点を反転できます。上抜けが失敗して線の内側へ戻された瞬間、 そこには高値で閉じ込められた買い方の損切りという下向きの燃料が確定しています。 これを狙って「ダマシの確定を確認してから、逆方向に入る」という考え方があり、 フェイクブレイク逆張り(もしくはダマシの往復を狙う戦略)として知られています。

ただしこれは「ブレイクの失敗」という2段階の判断を要する分、初心者向けではありません。 いまの段階では「ダマシは避けるもの」で十分です。将来、検証の技術(検証とトレード日誌コース)を身につけたあとで、 戦略の候補として検証する。その順番を勧めます。

抜けた 戻された 一度止まる 反対売買は「条件が再度そろった後」だけ
だましを見た直後は、すぐ反対に飛び乗らず、再条件化してから判断します。

よくある勘違い

「ダマシが多いからブレイク手法は使えない」と結論づける

ブレイク手法の成績は「勝率は低め・当たれば値幅が出る」という非対称な形になりやすく、 ダマシによる小さな損切りは手法のコストとして織り込むものです。 数回のダマシで手法ごと捨てると、どの手法も育ちません。評価は検証データ(勝率×リスクリワード)でやります。

ダマシを「業者のストップ狩り」とだけ考える

節目の外の損切りが刈られる動き自体は、特定の悪意がなくても注文が偏る場所では自然に起きる現象です。 陰謀論で片づけると、「意識される節目のすぐ外に損切りを置かない」「確認を入れる」という自分側の改善が止まってしまいます。

確認を増やせばダマシをゼロにできると考える

前回のトレードオフの話のとおり、確認を増やすほどエントリーは不利になり、機会は減ります。 ゼロを目指すのではなく、「遭ったときの損切りを小さく保つ」ほうが現実的なゴールです。

実戦:ダマシの共通点を探す

  1. 前回の課題(保ち合い50例の4分類)から「③放れたが戻された」の例を全部集める:前回の宿題がそのまま今回の教材になります。
  2. 各例に3つの質問をする:①それは誰もが引ける「きれいな節目」だったか ②抜けたのは何時(どの市場の時間帯)か ③確定足を待っていたら回避できたか。
  3. 回避できた割合を数える:確定足の確認だけで何%のダマシを除外できたかが、自分のデータで分かります。除外できなかった残りが「損切りで受けるべきコスト」です。
ICTでの呼び方

事前に決めた高安の外へ出て短時間で戻り、反対方向の構造転換を伴う形はLiquidity Sweepとして整理できます。続伸するブレイクとの比較はICT / SMC入門「Liquidity Sweep」で確認できます。

チェックリスト

次の記事に進む前に、以下が自分の言葉で説明できるか確認してください。

ミニテスト

最後に4問だけ確認です。不正解なら別の選択肢を選び直せます。正解すると解説が表示されます。

Q1. フェイクブレイクが起きる直接の理由は?

抜けた瞬間の急伸は損切りの巻き込みでも作れます。その先が続くかは、新しい参加者が入ってくるかどうか、つまり注文の量の問題です。

Q2. ダマシからの逆流が「速い」のはなぜ?

高値づかみになったブレイク組の損切りは、全部が売り注文として同方向に出ます。だからダマシ確定後に粘るのは分が悪いのです。

Q3. ヒゲ抜け(終値は線の内側)が教えてくれることは?

ヒゲは「行ったが押し返された」痕跡です。実体で抜けて確定した足とは情報の質が違います。だから確定足を待つ確認に意味があります。

Q4. ブレイクで入った直後にダマシと確定した。このコースの推奨に近い対応は?

ダマシ確定=エントリー根拠の消滅です。逆流は速いので粘るほど傷が深くなり、悔しさからのドテンはリベンジトレードと同じ構造です。