ホルムズ海峡リスク再燃で金・銀・プラチナ反発、ドル円は介入警戒と米雇用統計待ち
TL;DR
昨日の振り返り
- 中東のホルムズ海峡において、通航中の米軍駆逐艦がイランから攻撃を受け、米軍が報復攻撃を実施したことが報じられ、地政学リスクが急速に再燃しました。
- 日本国内では3月の実質賃金が前年同月比1.0%増となり、3か月連続のプラスを記録したことで、賃金と物価の好循環が強まりつつあることが確認されました。
- 貴金属市場は、米国とイランの和平交渉に対する不透明感から安全資産としての需要が強まり、金や銀、プラチナが軒並み反発する展開となりました。
今日の見通し
- 今夜発表の4月米国雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが6.0万人と大幅に減速する予想となっており、結果次第でドルの方向性が大きく左右される見込みです。
- ドル円相場は、来週のベッセント米財務長官の訪日を前に、政府・日銀による為替介入への警戒感が一段と強まっており、156円台後半を中心とした神経質な動きが続こうとしています。
- 貴金属価格は、イランによるホルムズ海峡の船舶通航規制導入や地政学的緊張を背景に、インフレヘッジおよび安全資産としての買いが継続し、高値圏での推移が予想されます。
日本の労働市場における歴史的転換と実質賃金の推移
日本の経済情勢において、本日発表された3月の毎月勤労統計調査(速報値)は、極めて重要な意味を持つデータとなりました。厚生労働省の発表によれば、物価変動を考慮した1人当たりの実質賃金は、前年同月比で1.0%の増加を記録しました。これは3か月連続のプラスであり、2021年以来の持続的な改善傾向を示しています。この背景には、名目賃金に相当する現金給与総額が前年比で2.7%増(規模5人以上では3.3%増)と力強く伸びたことが挙げられます。
特に注目すべきは、基本給にあたる所定内給与の伸びです。全就業形態合計で3.2%増となり、これは33年5か月ぶりの高い伸び率です。企業規模別に見ると、従業員30人以上の事業所では3.9%増とさらに高い伸びを示しており、長年続いた賃金停滞の構造が、ようやく根底から変容しようとしています。一般労働者の所定内給与に限れば、1994年以降で過去最高の伸びを記録しており、春闘での賃上げ回答が実際の給与にしっかりと反映されていることが裏付けられました。
一方で、物価面では電気・ガス料金に対する政府の補助金制度が奏功し、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の伸びが1.6%にとどまったことも、実質賃金を押し上げる要因となりました。しかし、中東情勢の悪化に伴う原油価格の高騰や円安による輸入物価の上昇が、今後の物価押し上げ圧力として懸念されています。厚生労働省の担当者も、現時点では中東情勢の直接的な影響は限定的であるとしつつも、今後の動向を注視する必要があるとの見解を示しています。
地政学リスクの再燃とホルムズ海峡を巡る緊張状態
国際情勢に目を転じると、2026年5月7日に発生したホルムズ海峡での衝突が市場に大きな衝撃を与えています。米国防総省の発表によると、オマーン湾に通航中であった米海軍の駆逐艦3隻に対し、イラン側からミサイル、ドローン、および小型船による多角的な攻撃が仕掛けられました。これに対し米軍は自衛のための報復攻撃を実施しており、一時和らぎかけていた米国とイランの緊張が再びピークに達しています。
これを受けてイラン政府は、ホルムズ海峡を通過するすべての船舶に対し、事前の申請書提出を義務付ける新たな規則を導入しました。この規則は事実上の通航制限として機能する可能性があり、世界のエネルギー輸送の要衝における不透明感が一段と増しています。すでに原油価格は高騰しており、これはインフレ加速や高金利の長期化懸念を招く要因となっています。
貴金属市場においても、この衝突は即座に反映されました。直近1週間で米国とイランの戦闘終結が近いとの報道を受けて和らいでいた懸念が、今回の事態を受けて再び強まり、金相場は安全資産としての買い戻しが活発化しています。特にアジア時間での金価格は、こうした中東発のニュースに敏感に反応しており、地政学リスクプレミアムが再び価格に上乗せされる展開となっています。
外国為替市場における日米当局の攻防と介入警戒
ドル円相場は本日、156円台後半での推移を続けています。市場の関心は、政府・日銀による為替介入の可能性に集中しています。4月30日の大規模介入に続き、5月に入ってからも1日、4日、6日と、介入を想起させる急激な円高の動きが確認されており、通貨当局が円安阻止に向けた強い姿勢を維持していることは明白です。
今後の最大の焦点は、5月11日から3日間に予定されているベッセント米財務長官の訪日です。長官は滞在中、高市首相や片山財務相、植田日銀総裁と会談する予定であり、為替政策に関する日米の認識共有が行われる見通しです。重要閣僚の訪日を控えた時期であることから、投機筋による過度な円売りは抑制されやすい局面ですが、日米金利差という根本的な背景に変化がないため、下値は限定的となっています。
テクニカル面では、155.00円付近に厚い買い注文が集まっており、この水準が強力なサポートラインとして意識されています。一方で、上値については158.00円や160.00円といった心理的節目に売り注文が集中しており、当局の介入警戒感と相まって、突破には強力な材料が必要な状況です。ユーロ円についても、184円付近で方向感の乏しい展開ながら、依然として円安がやや優勢な状況が続いています。
貴金属市場の現物価格動向と市場構造の分析
2026年5月8日の貴金属市場は、地政学的リスクを背景とした買いと、米国の経済指標待ちの姿勢が交錯しています。三菱マテリアルが本日10時に発表した金の店頭小売価格は26,288円/gとなり、前営業日比で47円の下落となりましたが、依然として歴史的な高値圏を維持しています。買取価格についても、25,943円/gと前日比46円の下落を見せています。
国際指標となるニューヨーク市場のスポット価格では、金が1オンスあたり4,721.90ドル前後で推移しており、前日比で36.30ドルの上昇(+0.77%)となっています。銀は79.81ドル(+1.53ドル)、プラチナは2,046.00ドル(+29.00ドル)と、主要な貴金属が揃って反発しました。これは中東での報復攻撃のニュースを受け、リスク回避の資金が貴金属市場へ流入したことを示しています。
日本国内の貴金属買取大手であるゴールドプラザの発表でも、本日の金税込買取価格は25,924円/gとなっており、前日の25,772円/gから上昇しています。また、田中貴金属工業のリサイクル価格においても、プラチナ900のリングが7gで58,016円、K18のイヤリング2gで相応の価格が提示されるなど、現物市場での取引は活発に行われています。
米国雇用統計の展望とFRBの金融政策への影響
本日の夜(日本時間21時30分)に発表される4月の米国雇用統計は、今後の世界的な景気動向とFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ時期を占う上で、重要な指標となります。市場予想によれば、非農業部門雇用者数の変化は前月の17.8万人増から6.0万人増へと大幅に減速する見込みです。失業率は4.3%で横ばいと予想されていますが、平均時給の伸び(前年比)が前回の3.5%から3.8%へ加速するかが注目されています。
もし雇用者数が予想を上回り、失業率が低下、かつ平均時給も強い結果となれば、米国の労働市場の底堅さと根強い賃金インフレが意識されます。その場合、FRBの利下げ観測が後退し、ドル買い・円売りの流れが加速して158円をうかがう展開も想定されます。反対に、雇用統計が予想を下回る弱い内容となれば、景気減速懸念から利下げ期待が高まり、ドル売り・貴金属買いの流れが強まることになります。
現在、市場はイラン情勢という地政学リスクと、この雇用統計というマクロ経済指標の板挟み状態にあります。特に原油価格の上昇がインフレ期待を押し上げる中で、雇用統計が強い数字を示した場合、FRBはさらに難しい政策判断を迫られることになり、市場のボラティリティは一段と高まろうとしています。
| 銘柄・指標 | 日本国内価格(税込) | 前営業日比 | 海外スポット価格 | 前営業日比 |
| 金(Gold) | 26,288円/g | -47円 | 4,721.90ドル/oz | +36.30ドル |
| 銀(Silver) | — | — | 79.81ドル/oz | +1.53ドル |
| プラチナ(Platinum) | 2,046円/g(海外) | — | 2,046.00ドル/oz | +29.00ドル |
| ドル円(USD/JPY) | 156.87円 | 円安 | — | — |
| 実質賃金(3月) | 1.0% | +3ヶ月 | — | — |
本日(2026年5月8日)のトレード戦略
本日のトレード戦略において最も重視すべきは、米国雇用統計発表前後の急激な価格変動への対応です。指標の予想値が非常に低いため、少しでも上振れすればドルの急騰、逆に予想通りかそれを下回ればドルの大幅な調整が起こりやすい地合いとなっています。
ドル円については、155円付近に強力なサポートが確認されているため、この水準を背にした押し目買いを基本としつつも、介入の可能性を考慮してポジション量は控えめにすべきです。
貴金属については、地政学リスクが再び高まっていることから、短期的には下値が非常に堅いと判断されます。金価格は4,680ドル付近でのサポートが機能しており、ホルムズ海峡の緊張が続く限り、調整局面は絶好の買い場となる可能性があります。銀についても、産業用需要の強さに加え、インフレヘッジとしての側面が強調されており、強気姿勢を維持できる局面です。
最後に、週明けに控える米財務長官の訪日は、為替市場にとって「不気味な静寂」をもたらす可能性があります。週末のポジション持ち越しには大きなリスクが伴うため、本日中に利益を確定させるか、逆指値注文をタイトに設定しておくことが推奨されます。地政学とマクロ経済の双方が激しく動く中で、資金管理を最優先とした柔軟な立ち回りが求められています。
免責事項: 本レポートに含まれる情報は、情報提供のみを目的としており、投資助言を意図するものではありません。実際の取引においては、ご自身のリスク許容度に合わせて判断を行ってください。
引用文献
- マーケット情報 – 日本マテリアル, https://www.material.co.jp/marketnews.php
- 3月実質賃金、3カ月連続プラス=1.0%増、政府補助で物価上昇鈍る – エキサイトニュース, https://www.excite.co.jp/news/article/Jiji_3770508/
- 実質賃金が3カ月連続プラス – デイリースポーツ, https://www.daily.co.jp/society/economics/2026/05/08/0020330849.shtml
- 金(XAU)見通し (市況ニュース) :金価格は下落し4687ドル|米国とイランの和平合意の先行き不透明感が影響した模様(2026年5月8日) – OANDA証券, https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_05_08_xau/
- 2026年5月8日|アメリカ・カナダ4月雇用統計の予想とFXへの影響 【FX/イベント】就寝前にあしたのネタをチェック! #外為ドキッ – 外為どっとコム マネ育チャンネル, https://www.gaitame.com/media/entry/2026/05/07/185442
- 週間為替展望(ドル/ユーロ)-米財務長官訪日と米CPIに注目 …, https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/mn_1013279_202605081123/
- NY時間に伝わった発言・ニュース – 2026年05月08日05:10|為替ニュース|みんかぶ FX/為替, https://fx.minkabu.jp/news/366531
- KITCO: Live Gold Prices | Gold News And Analysis | Mining News, https://www.kitco.com/
- 毎月勤労統計調査(令和8年2月分結果速報)を公表(2026/4/9更新), https://www.aohsawa-sr.com/%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/%E9%81%8E%E5%8E%BB%E3%81%AB%E6%8E%B2%E8%BC%89%E3%81%97%E3%81%9F%E6%83%85%E5%A0%B1-%E7%B5%B1%E8%A8%88-%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E9%96%A2%E4%BF%82/
- ドル円は円安で156円台後半|日付が変わってから円安が進む(2026年5月8日) – OANDA証券, https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_05_08_usdjpy/
- ユーロ円は円安で184円付近|方向感の乏しい展開ながら円安がやや優勢(2026年5月8日), https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_05_08_eurjpy/
- 金価格推移:純金積立なら三菱マテリアル GOLDPARK(ゴールドパーク), https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/
- 【毎日更新】今日の1gあたりの金価格・相場推移 – ゴールドプラザ, https://goldplaza.jp/gold/rate
- 最新のリサイクル価格表|RE:TANAKA – 田中貴金属工業, https://gold.tanaka.co.jp/retanaka/price/
- Precious Metals Update: Silver Surges, Gold Slips May 1, 2026, https://texmetals.com/all-news/precious-metals-market-update-5-1-2026

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