この連載は研究用です。 読み物として楽しんでもらえれば。
前回のおさらい
第11回は、完成版の最初の1本を ADX からほかのテクニカル5種類に入れ替えて比べました。一番良く見えた EMA 9/21 の差は、ほぼ1つのサイクルから来ていて、ADX と区別はつきませんでした。そこで、このあとも ADX の完成版を使います。
今回は、その完成版の 設定値 を何通りも変えて回し、最大DDをどれだけ減らせるか、結果が設定値にどれだけ左右されるかを見ます。
変える設定値
完成版の部品の中で、玉の量を決めている4つを変えます。ほかの値は第10回のままです。
| 設定値 | 意味 | 試す値 |
|---|---|---|
| サブ玉のロットの割合 | メイン玉の合計ロットの何%をサブ玉1本にするか | 10・20・30・50% |
| サブ玉1本の上限ロット | サブ玉1本の大きさの上限 | 0.05・0.10・0.20・0.50 |
| 玉の上限 | メイン玉とサブ玉を合わせた本数の上限 | 30・50・100本 |
| サブ玉を始める本数 | メイン玉が何本になったらサブ玉を始めるか | 5・7・10本 |
4 × 4 × 3 × 3 = 144通り です。そのうち1通り(50%・0.50・100本・7本)は第10回と同じ設定なので、新しい試行は143通りです。
組み合わせは回す前に決めて記録し、結果を見てから足したり減らしたりはしません。
先に書いておく注意
今回は、18か月の全期間で回して、その中から良いものを選びます。これは 過剰最適化そのもの です。本来なら、少なくとも「前の期間で選んで、次の期間で確かめる」ウォークフォワードで見るべきところです。
それでもやるのは、「どこをどうイジると最大DDが減るのか」を見るためです。選んだ設定がこの先も通用するかは、今回の結果からは言えません。
結果
144通りとも、口座は破綻しませんでした(そのために初期証拠金を$50,000に設定したので当たり前)。ただし、損益合計がプラスで終わったのは44通りだけで、残りの100通りはマイナスです。
玉の上限で結果がほぼ決まる
| 玉の上限 | 組み合わせ | プラスで終わった数 | 損益合計(中央値) | 損益合計(一番良い組) | 最大DD(中央値) | 最大DD(一番悪い組) | 含み損込みの一番低いところ(一番悪い組) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 30本 | 48 | 0 | −7,718 | −3,640 | −13,442 | −46,308 | 4,020 |
| 50本 | 48 | 4 | −9,690 | +11,145 | −17,652 | −40,280 | 11,728 |
| 100本 | 48 | 40 | +11,481 | +14,060 | −9,386 | −26,572 | 33,325 |
(金額はUSD。証拠金は50,000 USD。)
玉の上限を30本や50本に絞れば最大DDが減りそうですが、結果は逆でした。30本の48通りはすべてマイナスで、最大DDの中央値も100本より大きくなっています。一番悪い組(50%・7本・30本)は、2026年1月29日に含み損込みの資産が 4,020 USD まで減りました。証拠金の9割以上が消えています。
サブ玉1本の上限ロットはほとんど効かない
ほかの3つをそろえて、サブ玉1本の上限ロットだけを変えた組が36組あります。そのうち21組は、4つの値(0.05〜0.50)のどれでも結果が1セントも変わりませんでした。サブ玉がこの上限に届く場面が、ほとんど無かったということです。144通りのうち、結果が違ったのは61通りでした。
玉の上限100本の中でも、隣の設定で大きく割れる
上限100本の48通りを、サブ玉の割合と、サブ玉を始める本数で並べました(上限ロット4通りの中央値)。
| サブ玉の割合 | 始める本数 5本 | 7本 | 10本 |
|---|---|---|---|
| 10% | +11,648(DD −6,095) | +10,986(DD −7,629) | +8,303(DD −16,930) |
| 20% | +12,423(DD −6,095) | −12,953(DD −26,572) | +11,090(DD −8,650) |
| 30% | +11,891(DD −11,290) | −11,982(DD −26,572) | +11,462(DD −5,762) |
| 50% | +12,776(DD −9,386) | +13,999(DD −16,628) | +12,197(DD −16,628) |
ほとんどのマスは +8,000〜14,000 USD に収まっています。ところが、20%・7本と30%・7本だけは −12,000 USD 前後です。隣のマスとは損益で約25,000 USD 違います。設定値を1段ずらしただけでこれだけ変わるので、どのマスの数字も、この18か月の値動きにたまたま合った・合わなかったの差が大きいと見たほうがよさそうです。
目立った組と第10回の設定
| 組 | サブ玉の割合・上限ロット・玉の上限・始める本数 | 損益合計 | 最大DD | 含み損込みの一番低いところ | 同時に持った最大ロット | 年率シャープレシオ | DSR |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第10回の設定 | 50%・0.50・100本・7本 | +13,999 | −17,354 | 45,303 | 6.00 | 0.59 | 0.023 |
| 損益合計が一番大きい | 50%・0.10・100本・7本 | +14,060 | −15,902 | 46,842 | 5.50 | 0.63 | 0.026 |
| 最大DDが一番小さい | 30%・0.05・100本・10本 | +11,482 | −5,499 | 48,056 | 2.51 | 1.00 | 0.067 |
| シャープレシオが一番大きい | 20%・0.05・100本・5本 | +12,423 | −6,095 | 47,188 | 1.00 | 1.17 | 0.099 |
(DSR は試行回数 N=180 で割り引いたシャープレシオの信頼度で、0.95以上が合格。N が100を超えているので、N=100 換算の値は出していません。)
シャープレシオが一番大きいもの(20%・0.05・100本・5本)を、MT5で回した画面です。上がGoldの値動きと売買、下の青い線が残高、緑の線が含み損益込みの資産(有効証拠金)です。

残高はほぼまっすぐ右上がりですが、緑の線は何度も下に突き出しています。一番深いのは2026年2月3日で、玉が上限の100本(合計1.00ロット)まで積み上がり、それまでの最高値から 6,095 USD 下がりました。1月末にGoldが 5,500 USD 台から急落したところです。2025年6月9日にも、90本を抱えて含み損込みの資産が 47,188 USD まで下がっています。
残高だけを見るとなめらかでも、その裏ではこれだけの含み損を何度も抱えています。
MT5 のレポートの、数字の部分です。

この組は、144通りを全部回したあとで、シャープレシオが一番高いものを選んでいます。この18か月の値動きにいちばん合わせ込んだ設定、つまり 過剰最適化した設定 です。それでも DD はこれだけあります。
- 証拠金最大ドローダウンは 5,967.73 USD(10.49%)です。 一番都合のいい設定を後から選んでも、日本円で90万円ほどの含み損を抱えます
- 証拠金絶対ドローダウンは 2,771.30 USD です。 含み損込みの資産が、初期証拠金の 50,000 USD を最大 2,771 USD 割り込んでいます
- 最大連敗は16回で、合わせて −5,925.50 USD です。 18か月の利益の半分近くを、連敗1回で失っています
- 総利益 167,131 USD と総損失 154,708 USD の差が、手元に残った 12,423 USD です。動かした金額の 7%ほど しか残っていません
結果を見てから選んだ設定でこの DD です。この設定をこの先の相場で回せば、DD はこれより大きくなると考えておくのが自然です。
最大DDが一番小さい組(30%・0.05・100本・10本)は、第10回の設定に比べて損益合計が約2,500 USD 減るかわりに、最大DDが約3分の1になりました。同時に持つロットも6.00から2.51に減っています。
ただし、この組は144通りの中から全期間の結果を見て選んだものです。上の表のとおり、同じ30%で始める本数を7本にするだけで −11,982 USD に転落します。144通りで一番良いDSRも0.099で、合格ラインの0.95には遠く届きません。
わかったこと
- 玉の上限は、100本のままにしておくのが良さそう。30本・50本に絞ると、最大DDは減らずに損益が悪くなりました。
- サブ玉1本の上限ロットは、この範囲ではほとんど効きません。
- サブ玉の割合と始める本数を変えると、最大DDを約3分の1にできる組はあります。ただ、隣の設定で大きく負けているので、その組がこの先も良いとは言えません。
- 144通りのどれも、試行回数で割り引くと合格しませんでした。
- 試行回数について
今回は N=38〜180 です(143通り)。第11回(N=37)の続きで数えています。
次回
第13回は、両建てグリッドがどんな値動きで勝ち、どんな値動きで負けるのかを、簡単な数式とシミュレーションで整理します。
ソースコード
研究用です。InpCombo に 0〜143 を入れると、上の表の組み合わせに切り替わります(-1 なら第10回と同じ設定)。上記の最もシャープが良かったのはInpCombo=33。
HG13_Tune
ソースコードは note に置いています。こちらからゲットしてください。



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