TL;DR
昨日の振り返り
- ドル円は162.43円から163.24円まで上昇し、163.17円で終了しました。原油高、米金利上昇、有事のドル買いが重なり、1986年以来の円安水準です。
- COMEX Goldは前日比1.51%高の4,076.40ドルで終了し、SilverとPlatinumもアジア時間にそれぞれ1.8%、1.6%上昇しました。
- WTI原油は2.26%高の84.34ドル、米10年債利回りは4.626%へ上昇し、円と金利を生まない貴金属の双方に逆風となり得る材料が残りました。
今日の見通し
- ドル円は163.00円を中心に、163.24円超えなら163.50~163.70円、162.80円割れなら162.43円方向を確認します。日本当局の介入警戒が最大の変動要因です。
- Goldは4,100ドルを維持できるかが焦点です。4,120ドル超えなら4,150ドル、4,075ドル割れなら4,050~4,000ドルを次の判断帯とします。
- 日本時間15時の英国物価指標、16時20分のインドネシア中銀、23時30分の米週間石油在庫に加え、中東情勢と米20年債入札を確認します。
ドル円163円台とGold4100ドル台を支える原油高を検証
本日の結論は、ドル円では原油高と米金利上昇によるドル買い・円売りが優勢ですが、163円台では為替介入への警戒が急速に高まるということです。Gold、Silver、Platinumはそろって上昇しているものの、米金利も上昇しており、追随買いには価格の定着確認が必要です。
確認できた事実
7月21日のドル円は162.50円で始まり、安値162.43円から高値163.24円まで上昇し、163.17円で終了しました。前営業日の終値162.50円から67銭のドル高・円安です。ユーロドルは1.1398ドルまで下落し、ドル高が円だけに限定されていないことを示しています。
| 通貨ペア | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 |
|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 162.50円 | 163.24円 | 162.43円 | 163.17円 |
| EURUSD | 1.1414ドル | 1.1429ドル | 1.1398ドル | 1.1398ドル |
| EURJPY | 185.48円 | 186.12円 | 185.41円 | 186.01円 |
7月22日早朝のシンガポール市場ではドル円が163.21円付近、ドル指数は101.20近辺でした。ドル円は1986年以来の円安水準にあります。Brent原油が一時91.99ドル、米10年債利回りが4.64%付近まで上昇したことが、ドル買いと円売りの双方を促したと考えられます。
ただし、原因を円固有の弱さだけに求めるのは適切ではありません。米国のイラン攻撃、紅海の輸送リスク、原油高、米国債利回り上昇を背景に、ユーロやポンドに対してもドルが上昇しました。ドル全面高の局面では、日本当局が円だけを支える介入を行っても効果が短期間にとどまる可能性があります。
163円台では介入の水準より速度を確認
片山財務相は7月22日10時11分、必要があればいつでも適切に断固たる対応を取ると発言しました。木原官房長官も必要に応じて対応する姿勢を示しています。発言自体は従来の表現に近いものですが、ドル円が約40年ぶりの水準にあるため、東京時間の値動きは通常より介入報道に敏感です。
介入の有無を特定の価格だけで判断することはできません。市場では160~165円を新たな中心レンジとみる見方もありますが、短時間で1円以上上昇する、板が薄い時間に一方向へ走る、当局発言後も加速するといった「速度」が重要です。
ドル円の1週間物インプライド・ボラティリティーは5.61%へ上昇しました。前日の4%台から持ち直しているものの、中東情勢と介入リスクを考えると極端に高い水準ではありません。オプション市場が想定する値幅を現物が上回る局面では、ストップ注文を巻き込んで動きが加速する可能性があります。
| USDJPYオプション | 1週間 | 1カ月 | 3カ月 |
|---|---|---|---|
| インプライド・ボラティリティー | 5.61% | 6.41% | 6.97% |
原油高と米金利上昇がドル円を押し上げる
WTI原油先物9月限は前日比1.86ドル高、2.26%高の84.34ドルで終了しました。フーシ派がサウジアラビアの船舶や港を対象とする海上封鎖を表明し、中国・インド向けの原油タンカーが紅海で引き返したとの報道が材料です。アジア時間のBrent原油も91.55ドル付近で推移しました。
| エネルギー市場 | 価格 | 前営業日比・特徴 |
|---|---|---|
| WTI原油9月限 | 84.34ドル | +1.86ドル、+2.26% |
| Brent原油・アジア時間 | 91.55ドル | +0.6% |
| Brent前日高値 | 91.99ドル | 6週間ぶりの高値圏 |
原油高は日本の輸入代金を増やし、貿易収支と交易条件を通じて円の重石になります。7月22日に公表された日本の6月通関ベース貿易収支は4,069億円の赤字で、市場予想の1,210億円の赤字より弱い結果でした。季節調整済みでは8,819億円の赤字となり、予想の5,748億円の赤字を上回っています。
同時に原油高は米国のインフレ懸念を強め、米国債利回りを押し上げます。米2年債利回りは4.262%、10年債は4.626%、30年債は5.131%へ上昇しました。期待インフレ率も2.269%へ上昇しています。
| 米国債市場 | 利回り | 前営業日比 |
|---|---|---|
| 2年債 | 4.262% | +5.5bp |
| 10年債 | 4.626% | +3.4bp |
| 30年債 | 5.131% | +1.9bp |
| 10年物期待インフレ率 | 2.269% | +1.3bp |
短期金利の上昇幅が長期金利より大きく、利上げ観測が再び意識されています。もっとも、原油高が景気悪化を招くとの見方が強まれば、長期金利が低下する可能性もあります。原油上昇だけでドル円の上昇を決めつけず、米2年債と10年債が同じ方向へ動くかを確認します。
Goldは米金利上昇に逆行して反発
COMEX金先物8月限は前日比60.50ドル高、1.51%高の4,076.40ドルで終了しました。米金利とドルが上昇する中でGoldも上昇したため、前営業日は通常の逆相関よりも買い戻し、安全資産需要、商品全体への資金流入が優勢だったと考えられます。
7月22日のアジア時間には、現物Goldが4,113.73ドル、COMEX金先物が4,119.10ドルまで上昇しました。現物Silverは59.82ドル、Platinumは1,655.61ドルで、いずれも上昇しています。東京時間10時09分の東京金先物は1グラム21,975円で、円安も国内金価格を押し上げました。
| 貴金属 | 確認価格 | 変化 |
|---|---|---|
| COMEX Gold前日終値 | 4,076.40ドル | +1.51% |
| 現物Gold・アジア時間 | 4,113.73ドル | +0.9% |
| 現物Silver・アジア時間 | 59.82ドル | +1.8% |
| 現物Platinum・アジア時間 | 1,655.61ドル | +1.6% |
| 東京金先物 | 21,975円/グラム | +0.72% |
Gold、Silver、Platinumがそろって上昇している点は前日より強い動きです。ただし、Goldの上昇が安全資産需要、SilverとPlatinumの上昇が株高や工業需要期待によるものなら、同じニュースでも反応が分かれる可能性があります。米金利がさらに上昇しても4,100ドルを維持できるかが、Goldの地合いを判断する材料です。
アジア株高でも香港・上海は逆行
アジア市場では、米国の半導体株反発を受けて韓国KOSPIが6%超、日経平均が1.9%、MSCIアジア太平洋株指数が1.2%上昇しました。一方、香港株は0.61%安、上海株は0.64%安で始まりました。
この差は、アジア全体が一様なリスク選好ではないことを示します。半導体株の買い戻しはSilverとPlatinumの工業需要期待を支えますが、中国・香港株の弱さが続けば、景気敏感金属の上値を抑える可能性があります。Goldだけが高値を維持し、SilverやPlatinumが失速する場合は、安全資産需要への偏りと解釈できます。
本日の重要材料と二つのシナリオ
本日は日本時間15時に英国の消費者物価指数、小売物価指数、生産者物価指数、16時20分にインドネシア中銀の政策金利、23時30分に米週間石油在庫が予定されています。米国の主要景気指標が少ないため、米20年債入札、原油、中東情勢、介入関連発言への反応が中心です。
| 日本時間 | 指標・イベント | 主な関連市場 |
|---|---|---|
| 15:00 | 英国CPI・RPI・PPI | GBPUSD、GBPJPY、英国金利 |
| 16:20 | インドネシア中銀政策金利 | ルピア、アジア通貨 |
| 23:30 | 米週間石油在庫 | WTI、Brent、米金利、ドル |
| 米国時間 | 米20年債入札 | 米長期金利、ドル、Gold |
| 終日 | 中東情勢・日本当局発言 | 原油、USDJPY、Gold |
ドル円上昇シナリオでは、WTIが85ドルを超え、米10年債利回りが4.64%を上抜けます。ドル円が163.24円を明確に超えれば、163.50円、163.70円、164.00円が次の確認帯です。ただし、介入警戒により上昇途中で急落する可能性があります。
ドル円下落シナリオでは、停戦・輸送正常化に関する報道で原油が低下し、米10年債利回りが4.60%を下回ります。ドル円が163.00円を割り、戻りも163円台に乗せられない場合は、162.80円、162.43円を確認します。実弾介入が疑われる急落では、通常の支持線が機能しない可能性があります。
本日のトレード戦略
外国為替の戦略
ドル円の基本レンジは162.80円から163.70円です。163.00~163.24円では前日高値と心理的節目が近く、方向が定まるまで新規ポジションを小さくします。
| 条件 | 条件付き戦略 | 目標の目安 | 無効化条件 |
|---|---|---|---|
| 163.24円超え、米10年債4.64%超 | 押し戻し後の163.20円維持を確認 | 163.50円、163.70円 | 163.00円割れ |
| 163.00円割れ、米10年債4.60%割れ | 戻りが163.00円以下か確認 | 162.80円、162.43円 | 163.25円回復 |
| 当局発言後に50銭以上急落 | 初動を追わず介入報道と他通貨を確認 | 162.50円、162.00円 | 急落分の全戻し |
| 原油上昇でもドル円が上がらない | 円買いとドル売りのどちらかを確認 | レンジ下限 | 米金利とドル指数の再上昇 |
介入と断定するには、ドル円だけで短時間に大きく円高となり、複数の報道が確認できることが必要です。確認できない段階で値動きを追うと反発に巻き込まれます。EURUSDは1.1400ドルが分岐点で、英国物価指標の前後はGBPUSDとGBPJPYの値幅拡大にも注意します。
貴金属の戦略
Goldは4,075~4,120ドルを最初の判断帯とします。4,120ドルを上抜け、米10年債利回りが4.64%を下回る場合は、4,150ドル方向への上昇継続を検討できます。このシナリオは4,075ドル割れ、またはドル指数と米金利の同時上昇で無効です。
Goldが4,075ドルを割り、米10年債利回りが4.64%を超える場合は、4,050ドル、4,000ドル方向への調整を警戒します。この下落シナリオは4,120ドルを回復して定着した場合に無効です。
Silverは59.82ドルを基準とし、60ドルを維持できるかを確認します。Goldが4,120ドルを超え、アジア株も上昇を続ける場合は、Goldより強い動きが続く可能性があります。60ドル到達後に株価とSilverが同時に反落する場合は追随を見送ります。
Platinumは1,655.61ドルを基準とします。1,660ドル超えと香港・上海株の下げ止まりがそろえば、工業需要を意識した反発継続を検討できます。Goldが高値を維持してもPlatinumが1,640ドルを割る場合は、安全資産と景気敏感金属の差が拡大している可能性があり、買いシナリオは無効です。
本日は三つの貴金属が上昇していますが、原油高と米金利上昇は中期的な逆風です。原油、ドル指数、米10年債利回り、アジア株のうち少なくとも二つが同じシナリオを支持するまで待ち、急騰直後の高値追いを避けます。
引用文献
- 21日の為替市場の四本値(ドル円・ユーロドル・ユーロ円)
- ドル円、163円台に上昇 1986年以来の高値水準=NY為替概況
- 本日の見通し 中東情勢をにらみ、ドル高優勢
- 通貨オプション ボラティリティー ドル円1週間5%台後半
- 反発、米長期金利上昇も株高で投資家心理改善し堅調=NY金概況
- 米10年債利回り上昇 原油高 中東情勢が依然として混沌=NY債券
- 続伸、フーシ派がサウジに対する海洋封鎖を発表=NY原油概況
- 東京金 NY金先の上昇が支え
- 日本経済指標 通関ベース貿易収支
- 本日の予定 経済指標
- Yen slides past 163, raising intervention alert
- Asian stocks extend gains as US rebounds, chipmakers lead
- Gold nears two-week high as Fed outlook, Middle East conflict stay in focus
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