「玄米を週4回・6カ月で認知症リスク低下」は本当か?東北大学の研究と産経報道を検証

玄米を週4回6カ月食べる研究と認知症リスク低下という報道を検証するアイキャッチ トレーダーの生活

2026年7月30日、産経ニュースは「週4回6カ月の玄米食で認知症リスク低下 『短期間、低頻度でも効果あり』 東北大が研究」と報じました。

さらに記事冒頭では、「茶碗1杯の玄米を週4回、6カ月食べ続ければ、認知症になりにくい」と紹介されています。

週4回6カ月の玄米食で認知症リスク低下 「短期間、低頻度でも効果あり」 東北大が研究
茶碗(ちゃわん)1杯の玄米を週4回、6カ月食べ続ければ、認知症になりにくい-。こんな研究結果を東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターの瀧靖之教授らが…

 

結論から言うと、この表現は研究が実際に示した範囲をかなり超えています。

今回の研究で確認された統計的シグナルは、認知症の発症率低下ではありません。遂行機能を評価するFrontal Assessment Battery(FAB)の得点変化です。しかも研究は非ランダム化・オープンラベルで、玄米群と白米群は参加者本人が希望して選んでいます。さらにFABは介入開始前から両群に有意差があり、全般的認知機能を測るMMSEには有意な介入効果が出ていません。

個人的な評価としては、

仮説生成研究としては興味深い一方、「玄米が遂行機能を改善した」という因果推論には弱く、「認知症リスクが下がる」まで広げるのは無理がある

といったところ。

 

東北大学の玄米研究を検証する研究デザインと参加者フロー
東北大学の玄米研究を検証する研究デザインと参加者フロー

 

 

 

まず、この研究で何をしたのか

論文は2025年12月11日にCritical Public Healthでオンライン公開された「Consumption of dewaxed brown rice for a six-month period improves cognitive function in older adults: an open-label trial」です。

研究対象は60歳以上の高齢者で、最終解析は56人。玄米または白米を週4回、6カ月摂取し、介入前後でFABとMMSEを評価しました。

項目 内容
研究デザイン Open-label、非ランダム化比較試験
対象 60歳以上、認知症・認知機能障害のない高齢者
適格者 74人
群分け 両方の米を試食後、本人が希望する群を選択
当初の群 玄米43人、白米31人
脱落 18人。解析から除外、欠測補完なし
最終解析 56人。東北大学発表では玄米30人、白米26人
介入 週4回、6カ月
主な認知評価 FAB、MMSE
企業関与 東洋ライスとの共同研究。米の提供と研究資金、同社役員・社員が共著者

研究そのものは「玄米を食べた人を観察しただけ」ではありません。白米群を置き、6カ月の前向き介入を行い、事前プロトコルも公開されています。この点は評価できます。

しかし、因果推論の肝となる部分に大きな弱点があります。

 

 

 

問題1 ランダム化せず、本人に玄米か白米かを選ばせている

最大の問題です。

最終論文では、初期スクリーニング後に両方の米を試食させ、参加者本人の好みで群を選ばせたと記載されています。玄米を選んだ人が43人、白米を選んだ人が31人でした。

つまり比較しているのは厳密には、

「ランダムに玄米を割り当てられた人 vs ランダムに白米を割り当てられた人」

ではなく、

「玄米を食べたいと選んだ人 vs 白米を食べたいと選んだ人」

です。

ここには健康意識、食習慣、新しい食品への関心、モチベーション、身体活動、教育歴など、測定されていない違いが入り込む可能性があります。最終論文自身もselection biasとmotivational biasの可能性を認めています。

 

 

なぜ研究者はランダム化しなかったのか

2021年に公開された事前プロトコルには理由も書かれています。

玄米と白米は見た目で簡単に区別でき、玄米用のプラセボを作れないこと。さらに米は日本人の主食で、高齢者施設では食事が生活の大きな部分を占めるため、希望しない米を6カ月食べさせれば意欲低下や脱落につながると考えたためです。

参加者の継続性を優先したパイロット研究だった、という意図は理解できます。

ただし「盲検化できない」と「ランダム化できない」は別問題です。

参加者が玄米か白米か分かるopen-labelであっても、群への割付自体はランダムにできます。したがって、プラセボを作れないことは参加者盲検化を断念する理由にはなっても、ランダム化を断念する十分な理由にはなりません。

著者自身もプロトコルで、今回効果が検出されれば将来ランダム化デザインで詳しく検討する価値がある、という趣旨を述べています。だったら今回やろうよと思ってしまう。

 

 

 

問題2 FABは対面検査なのに、評価者盲検化の有無が報告されていない

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