中東衝突で市場緊迫、ドル円157円台・金5100ドル突破|ホルムズ封鎖リスク
TL;DR
昨日(週末)の振り返り
- 2026年3月6日の市場は、米国の雇用統計が市場予想を下回る結果となり、労働需要の減退が示唆されたことで、米連邦準備制度による利下げ期待が改めて意識されました。
- 外国為替市場ではドル円が157円台後半、ユーロ円が183円台前半で引けましたが、中東での大規模な軍事衝突の懸念から週明けに向けた緊張感が高まっていました。
- 貴金属市場では、地政学的リスクを背景に金と銀が歴史的な高値圏を維持し、投資家の安全資産への逃避買いが継続する中で週末の取引を終えました。
今日の見通し
- 2026年3月9日の東京市場およびアジア市場は、週末に報じられたイランの最高指導者殺害という衝撃的なニュースを受け、安全資産としての円買いが強まる「窓開け」の展開で始まっています。
- ホルムズ海峡の閉鎖リスクにより原油価格が急騰しており、純産油国である米国のドルが支えられる一方で、アジア通貨やユーロには強い下押し圧力がかかる見通しです。
- 貴金属は金が1オンスあたり5,100ドル、銀が95ドルを超える水準で推移しており、インフレヘッジおよび地政学リスクの回避手段として、さらなる上値模索が期待される局面です。
中東における軍事衝突の激化とグローバル市場への衝撃波
2026年3月9日の国際金融市場は、週末の地政学的激変を消化する極めて不安定な局面を迎えています。2月28日に発生したイスラエルと米国による共同軍事作戦の結果、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が殺害されたという報道は、中東全体のパワーバランスを根本から崩壊させる事態となりました。これに対しイラン側は周辺諸国の米軍資産への報復攻撃を開始しており、事態は全面的な紛争へと拡大する様相を呈しています。
この軍事衝突は、単なる局地的な紛争に留まらず、世界のエネルギー供給の動脈であるホルムズ海峡の封鎖という最悪のシナリオを引き起こしています。すでに船舶の保険適用がキャンセルされ、運賃が急騰する中で、原油価格はブレント原油で1バレルあたり80ドルを超え、さらなる高騰が確実視されています。このようなエネルギーショックは、2025年を通じて沈静化しつつあったインフレ圧力を再び呼び起こし、主要国の中央銀行による金融政策の舵取りを困難にしています。
アジアの金融ハブである香港やシンガポールでは、月曜朝の取引開始とともに「リスクオフ」の動きが加速しました。特に、エネルギー輸入依存度が高い日本やアジア諸国の通貨は、原油高による貿易赤字の拡大を懸念して売られやすい状況にあります。一方で、シンガポールのような安定した政策背景を持つ市場には、中東の富裕層などからの資金流入が見られ始めており、地域内での資金移動に偏りが生じようとしています。
米国経済の混迷とトランプ政権の通商政策
米国市場では、トランプ政権の第2期目が2年目に入り、予測不能な政策運営が市場のボラティリティを増大させています。トランプ大統領は、先週土曜日にすべての米国輸入に対する暫定関税を、現行の10パーセントから法的に認められる最大値である15パーセントに引き上げると発表しました。これは、連邦最高裁判所がトランプ氏の以前の関税計画を違憲とした裁定に対する、挑戦的な対応と受け止められています。
通商政策の混乱に加え、米国政府の閉鎖(シャットダウン)が長期化していることも深刻な影響を及ぼしています。米国労働統計局(BLS)のスタッフの多くが一時解雇状態にあり、雇用統計や消費者物価指数(CPI)などの主要なマクロ経済データの発表が遅延、あるいは一部のデータが推計値で代替されるという異常事態が続いています。投資家は正確な経済指標を確認できない「情報の霧」の中での取引を強いられており、これがドルの信認低下を招く一方で、安全資産としての金への回帰を加速させています。
さらに、連邦準備制度(Fed)の独立性に対する懸念も再燃しています。ジェローム・パウエル議長が事務所の改修を巡る刑事捜査の対象となっているとのニュースや、次期議長候補としてトランプ氏に近いケビン・ウォーシュ氏の名前が挙がっていることは、市場における中央銀行の信認を揺るがしています。市場では2026年中にあと1、2回の利下げが期待されていますが、政治的な圧力が利下げを早めるとの憶測が、長期的なインフレ懸念を増幅させています。
外国為替市場における主要通貨の分析と見通し
2026年3月9日の外国為替市場において、ドル円は地政学リスクの高まりを受けて円買いが優勢な展開で始まりました。月曜朝のドル円は157円台前半からスタートし、先週末の終値から比較して円高方向に窓を開けています。テクニカル分析の観点からは、156.00円付近に非常に厚い買い注文が確認されており、ここが短期的なサポートラインとして機能するかが注目されます。一方で、158.50円付近には戻り売りを狙う厚い売り注文が存在しており、当面はこのレンジ内での神経質な展開が予想されます。
ユーロ円についても、中東情勢の悪化を受けて円高が進行しました。ユーロ圏のGDP成長率が市場予想を下回るなど、欧州経済の停滞感が意識される中で、ユーロは主要通貨の中で最も弱いパフォーマンスを示しています。週明けのユーロ円は183円付近で窓を開けて始まり、182.00円のサポートラインを試す動きを見せています。ドイツの製造業新規受注などの経済指標も発表される予定ですが、現在は経済指標よりも地政学的ニュースが相場の決定要因となっています。
アジア通貨では、シンガポールドル(SGD)の底堅さが目立っています。シンガポール金融管理局(MAS)は、2026年を通じてインフレ抑制のために金融引き締め姿勢を維持、あるいは強化するとの見方が強まっており、これがSGDの下支えとなっています。対米ドルでは1.27から1.28のレンジで推移していますが、名目実効為替レート(S$NEER)ベースでは強含んでおり、周辺のアジア通貨が対ドルで下落する中で、SGDの相対的な強さが際立っています。
以下に、2026年3月9日時点の主要通貨ペアの予測値をまとめます。
| 通貨ペア | 現在値(目安) | 1Q26予測 (UOB) | 3Q26予測 (UOB) |
| USD/JPY | 157.20 | 153.00 | 144.00 |
| EUR/USD | 1.0850 | 1.1900 | 1.1800 |
| GBP/USD | 1.3300 | 1.3700 | 1.3500 |
| USD/SGD | 1.2800 | 1.2700 | 1.2700 |
| USD/CNY | 7.1500 | 6.9200 | 7.0200 |
出典:9
貴金属市場の歴史的な上昇と供給制約の深化
貴金属市場は、2026年3月9日時点でまさに「歴史的な高騰」の最中にあります。金価格は1オンスあたり5,163.80ドルという驚異的な水準に達しており、これは通貨価値の希釈化や財政の持続可能性に対する投資家の根深い懸念を反映しています。従来の安全資産としての役割に加え、中央銀行による継続的な金購入、特に新興国によるドル依存からの脱却を目指す動きが、金価格の岩盤のようなサポートとなっています。
銀価格の上昇はさらに劇的です。1オンスあたり95ドルを超えた銀は、AI関連の半導体製造やクリーンエネルギー分野における爆発的な工業需要と、金に追随する投資需要の二面性によって価格が押し上げられています。銀市場は長年にわたる過少投資により構造的な供給不足に直面しており、現在の価格高騰は単なる投機ではなく、物理的な不足を背景にしたものと言えます。
プラチナ市場もまた、供給制約と新たな需要の波に洗われています。2026年3月9日現在、プラチナ価格は2,150ドル付近で推移しており、前日比でも堅調な動きを見せています。南アフリカやロシアといった主要産出国の供給不安に加え、自動車の排ガス浄化触媒としての需要がハイブリッド車の再評価によって伸びていることが、プラチナ価格を支えています。金とプラチナの価格差(サヤ)は歴史的な水準にまで拡大していますが、これがプラチナへの割安感を生み、長期的な投資資金の流入を誘発しています。
以下の表は、2026年3月9日時点の主要貴金属の市場価格(スポット)です。
| 銘柄 | 価格 (USD/oz) | 前日比 (パーセント) | 2026年目標値 |
| 金 (Gold) | 5,163.80 | +1.2 | 5,500 – 6,000 |
| 銀 (Silver) | 95.12 | +2.5 | 120 – 130 |
| プラチナ (Platinum) | 2,150.75 | +0.3 | 2,400 |
| パラジウム (Palladium) | 1,755.50 | +0.4 | 1,900 |
出典:4
アジアの視点:香港とシンガポールにおける市場動向
香港市場では、地政学リスクの高まりとともに、中国本土からの資金流入が貴金属市場を活性化させています。春節明けの取引再開とともに、現物の金に対する需要が急増しており、香港の金取引所でのプレミアムが拡大しています。投資家はトランプ政権の関税政策が中国経済に与える不透明感を嫌気し、株式から実物資産へのシフトを一段と進めています。
シンガポールでは、金融セクターが地政学的混乱の中で「避難所」としての機能を強化しています。DBS銀行は、中東情勢の長期化を見据え、特に輸出入を営む中小企業に対して外国為替レートのヘッジを強く推奨しています。為替のタイミングを計ることは不可能であり、SecureFXのようなデリバティブを利用して不確実性を排除することが、事業継続に不可欠であると説いています。また、シンガポールの不動産投資信託(REIT)などの利回り資産には、金利低下を見越した買いが入っており、ストラテジストは依然としてアジア株式に対してポジティブな見解を維持しています。
日本国内の貴金属先物市場でも、円安と国際価格の上昇が相まって、金先物価格が1グラムあたり27,000円を超える水準まで上昇しています。北辰物産のデータによれば、2026年3月9日の金先物取引(2027年2月限)は、前日比では小幅な変動に留まっているものの、5日平均および25日平均を大きく上回る強いトレンドを維持しています。日本の個人投資家の間でも、円貨での資産保護を目的とした金貨やインゴットの購入が活発化しており、貴金属店頭では異例の混雑が見られる状況です。
投資戦略の構築とリスク管理
このような極限の不確実性が支配する市場において、投資家が取るべき戦略は、流動性の確保と資産の多様化に尽きます。HSBCやUOBのハウスビューでは、AI関連のテック株への過度な集中を避け、工業用金属や貴金属、そして質の高い社債への分散が推奨されています。特に、2026年はインフレ率が再び上昇する「スタグフレーション」の懸念があるため、伝統的な60/40ポートフォリオ(株式60パーセント、債券40パーセント)の有効性が低下しており、オルタナティブ資産としての金の比率を高めることが有効であるとされています。
為替取引においては、短期的なヘッドラインに振り回されるリスクが高いため、ストップロス注文の徹底と、ボラティリティに対応したポジションサイズの縮小が求められます。特に、ホルムズ海峡の情勢次第では原油価格がさらに数10パーセント急騰する可能性があり、その場合はカナダドルや米ドルのような産油国通貨が、エネルギー輸入国である日本やユーロ圏の通貨に対して一段と強含むシナリオを想定しておくべきです。
最後に、米国の財政状況とドルの長期的な趨勢にも注意を払う必要があります。トランプ政権による財政支出の拡大と関税によるインフレ圧力は、米国の実質金利を低下させ、中長期的にはドルの独歩高に終止符を打つ要因となり得ます。価値の保存手段が法定通貨からゴールドのようなハードアセットへと変容しようとしている現在、目先の価格変動に惑わされず、資産の本質的な価値を見極める姿勢が問われています。
2026年3月9日のトレード戦略
現在の相場環境におけるトレード戦略は、圧倒的な地政学的リスクを前提とした「防衛的かつ機動的なアプローチ」が基本となります。中東情勢の緊迫化とホルムズ海峡の閉鎖懸念が、すべての資産クラスのボラティリティを底上げしていることを認識しなければなりません。
外国為替市場では、ドル円およびユーロ円の「戻り売り」がメインシナリオとなります。週明けの窓開け後のリバウンドは限定的である可能性が高く、158.50円(ドル円)や184.50円(ユーロ円)付近のレジスタンスラインを背にしたショートポジション構築が検討に値します。一方で、下値には厚い買い注文も存在するため、利益確定は欲張らずに、156.00円付近での確実な決済を推奨します。
貴金属市場では、金と銀の「押し目買い」を継続します。現在の価格水準は歴史的な高値ですが、中東での紛争拡大や米国の政治的不透明感を考えれば、さらなるプレミアムが上乗せされる余地は十分にあります。特に銀は、工業需要と安全資産需要の相乗効果で、1オンスあたり100ドルの大台を突破する可能性があります。ただし、急騰後の反動売りも想定されるため、レバレッジは極限まで低く抑え、現物あるいは低レバレッジのETFでの運用が望ましいでしょう。
シンガポールドル(SGD)については、対円や対他のアジア通貨でのクロス円・クロスアジアでのロング(買い)戦略が有効です。MASのタカ派的な姿勢と安定した経済環境は、混乱期における相対的な強さを生み出します。また、エネルギー価格の上昇に備え、原油価格に連動しやすい資源国通貨や、インフレヘッジ機能を持つマテリアルセクターの株式をポートフォリオに組み入れることで、リスク耐性を高めることができます。
免責事項: 本レポートに含まれる情報は、情報提供のみを目的としており、投資助言を意図するものではありません。実際の取引においては、ご自身のリスク許容度に合わせて判断を行ってください。
引用文献
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- Gold, Silver Outlook: Dollar Strength Caps Haven Rally Amid Hormuz Risks – FOREX.com https://www.forex.com/en-sg/news-and-analysis/gold-silver-outlook-dollar-strength-caps-haven-rally-amid-hormuz-risks-2026-03-03/
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