2026年3月12日 昨日の振り返りと今日の見通し

中東緊張でドル円159円台、金・銀は調整局面|原油高とドル独歩高

TL;DR

昨日の振り返り

  • 中東情勢の緊迫化に伴い原油価格が急騰し、インフレ懸念から米ドルと米債利回りが上昇したことで、金や銀などの貴金属は大幅な反落を余儀なくされました。
  • 為替市場では有事のドル買いが加速し、ドル円は158円台後半まで円安が進んだ一方、銀市場ではCMEによる証拠金引き上げが引き金となり急落が発生しました。
  • 貴金属全般において利益確定売りが先行しましたが、地政学リスクによる下値支持も意識され、下げ幅は一定の範囲内に留まりました。

 

 

今日の見通し

  • ドル円は159円台に乗せる動きを見せており、心理的節目である160円を視野に入れた強含みの推移が続く見容となっています。
  • 貴金属市場はドルの独歩高が重石となるものの、中東でのエネルギー供給途絶リスクが依然として価格の下支え要因として機能する見込みです。
  • 豪ドルについては来週のオーストラリア準備銀行(RBA)による利上げ期待から底堅い動きが予想され、アジア通貨内での選別色が強まる局面となるでしょう。

 

 

 

中東情勢の激化とグローバル・マクロ経済への波及効果

2026年3月12日現在の金融市場は、中東地域、特にイランと米国・イスラエル間の軍事衝突がエネルギー供給網に与える深刻な影響を織り込みながら推移しています。ホルムズ海峡における船舶への攻撃が激化しており、既に14隻の船舶が標的となったことで、世界の石油輸出の約5分の1が物理的に遮断されるリスクに直面しています。イラン当局は、原油価格が1バレル200ドルに達する可能性を警告しており、この供給不安は市場に強いインフレ懸念を植え付けています。

これに対し、国際エネルギー機関(IEA)加盟国は、史上最大規模となる4億バレルの石油備蓄放出に合意しましたが、市場の反応は限定的です。アナリストの分析によれば、この放出量は中東での長期的な紛争による供給不足を補うには不十分であり、1日あたり1,500万バレルの供給減少が現実味を帯びている状況では、原油価格の上昇圧力を完全に抑え込むことは困難であると見られています。

このようなエネルギー価格の高騰は、米国の金融政策にも直接的な影響を及ぼそうとしています。米国の2月消費者物価指数(CPI)は市場予想の範囲内であったものの、原油高による二次的なインフレ圧力を警戒し、連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待が後退しています。投資家は現在、利下げが2026年後半まで行われない可能性を考慮し始めており、これが米ドル指数の上昇と米債利回りの高止まりを招いています。

 

 

 

貴金属市場の詳細分析と投資センチメント

金市場におけるダブル・プレッシャーの構造

金価格は、安全資産としての需要と、ドル高・利回り上昇という二つの相反する力の間で揺れ動いています。2026年3月11日のニューヨーク市場において、金先物4月限は前営業日比63ドル安の5,179.1ドルと大幅な反落を記録しました。スポット価格も一時5,152ドル付近まで押し下げられ、心理的な壁であった5,200ドルを下回る場面が見られました。

しかし、長期的な視点では金の上昇トレンドが完全に崩れたわけではありません。中央銀行による継続的な買い入れや、ETF(上場投資信託)への資金流入は依然として堅調であり、世界の金ETF保有残高は3年ぶりの高水準となる9,900万オンス(約4,270億ドル相当)に達しています。短期的な利益確定売りが進んだ後は、再び地政学的な不確実性を背景とした上昇局面への変容が期待されており、スタンダードチャータード銀行などは引き続き強気の見通しを維持しています。

 

 

銀市場における急落の背景と需給バランス

銀市場では、3月11日に3パーセントを超える劇的な価格下落が発生しました。この背景には、CMEグループが銀先物の維持証拠金を36パーセント引き上げたというテクニカルな要因が大きく関わっています。証拠金の急激な上昇により、過度なレバレッジをかけていた投機筋が強制的なポジション解消を迫られ、売りが売りを呼ぶ展開となりました。

銀は貴金属としての側面だけでなく、工業用金属としての需要が全体の約60パーセントを占めています。特に太陽光パネル用の銀ペーストなどの需要が拡大している一方で、2026年は6年連続の供給不足に陥る可能性が高く、その不足幅は1億オンスを超えると予測されています。短期的な価格調整は進んでいるものの、この構造的な需給のタイトさは、中長期的には価格の強いサポート要因になると考えられます。

 

 

プラチナ市場のボラティリティと工業需要

プラチナもまた、マクロ経済の影響を受けて不安定な値動きを見せています。直近では2,150ドルから2,250ドルのレンジで推移しており、前日の取引では一時2,247ドルまで上昇したものの、その後はドル高に押される形で2,200ドル付近まで値を戻しました。

プラチナ市場の独自要因として、自動車触媒や水素エネルギー関連の工業需要が挙げられます。特に南アフリカなど主要生産国からの供給不安が根強く、リサイクル供給もリスクにさらされていることから、需給バランスは極めて脆弱です。2026年を通じてプラチナは、金や銀との相関を維持しつつも、独自の供給制約によって突発的な価格急騰を起こしやすい性質を強めようとしています。

 

 

 

日本国内の貴金属取引と価格推移

田中貴金属工業による3月12日の公表価格

日本国内の貴金属市場においても、国際相場の下落を受けて価格の引き下げが行われました。地金大手の田中貴金属工業が3月12日午前9時30分に発表した価格によれば、金の店頭小売価格は前日比111円安の29,231円となりました。銀およびプラチナも同様に値を下げており、特にプラチナは220円安と大きな下落幅を記録しています。

下表は、2026年3月12日時点での日本国内における主要貴金属の税込価格をまとめたものです。

 

 

国内貴金属店頭価格一覧(2026年3月12日発表)

貴金属種別店頭小売価格(税込)前日比店頭買取価格(税込)前日比
金(1gあたり)29,231円-111円28,874円-111円
プラチナ(1gあたり)12,392円-220円11,970円-220円
銀(1gあたり)490.82円-15.73円473.77円-15.73円

また、コイン価格についても同様に改定が行われています。金貨の小売価格は、1オンス(31.1035g)あたり964,502円となっており、実物資産への関心が高い投資家にとっては、価格調整局面での買い増しを検討する指標となっています。

 

 

日本市場における投資家行動の変容

日本の投資家の間では、円安の進行が続く中で、円建ての資産防衛手段として貴金属を保有する動きが定着しています。2026年3月2日には、田中貴金属の金小売価格が30,305円という過去最高値を更新したこともあり、一時的な価格調整はむしろ新規の買い付け機会として捉えられている側面があります。為替が160円を伺う展開となる中、国際的なドル建て価格の下落分が円安によって相殺され、国内価格が底堅く推移するという特有の構図が続いています。

 

 

 

外国為替市場:ドルの独歩高とアジア通貨の動向

ドル円相場の現状とテクニカル分析

為替市場では、米ドルが他通貨を圧倒する展開が続いています。2026年3月12日の正午時点において、東京外国為替市場のドル円は159.05円付近で取引されており、前日のニューヨーク市場終値(158.95円)からさらに円安方向に進んでいます。米長期金利の低下局面でも円が買われる勢いは弱く、原油価格の持ち直しによるドル買い需要が相場を牽引しています。

オーダーブックのデータに基づくと、156円から157円付近には極めて厚い買い注文が集中しており、これが心理的・テクニカル的な強固なサポートラインとして機能しています。一方、上値については159.50円から160.00円にかけて断続的な売り注文が確認されており、日本の通貨当局による為替介入への警戒感も相まって、この水準での攻防が激化しようとしています。

 

 

ドル円の相関関係と通貨の強弱

直近24時間の相関分析によれば、ドル円はポンド円や豪ドル円と強い正の相関関係にあります。これは、市場全体で「円売り」のバイアスが強く、特定の通貨ペアに限らず円が全面的に売られている状況を示唆しています。一方で、ユーロドルとは強い逆相関の関係にあり、ドルの強さがユーロを下押しする構図が鮮明です。

通貨強弱チャートを見ると、オーストラリアドル(AUD)が最強通貨として浮上しているのに対し、日本円(JPY)は最弱通貨の位置に固定されています。この背景には、資源国通貨としての豪ドルの強みと、後述するRBAの利上げ期待が影響しています。

 

 

シンガポールおよび香港の市場環境

シンガポールドル(SGD)は、中東情勢の影響を受けやすいアジア通貨の中で、例外的な強さを見せています。シンガポール金融管理局(MAS)による通貨高を容認する独自の金融政策により、対ドルでの下落率は他のアジア通貨の平均を下回る1.6パーセントに留まっています。

香港市場においては、地政学リスクを嫌気したリスクオフの動きが株価指数に現れており、ハンセン指数は2.4パーセントを超える下落を記録しました。香港ドルのペッグ制を維持するためのコストや、中東資本の動向を注視する動きが広がっており、金融セクターを中心に慎重な姿勢が強まっています。

 

 

アジア主要市場の為替・指標比較(2026年3月12日)

指標・通貨ペア現在値(目安)前日比変化率特徴・備考
ドル円159.05円+0.06%160円を伺う展開、円安基調継続
ユーロドル1.1538ドル-0.25%ドル高の影響で上値が重い
豪ドル米ドル0.6750ドル(推定)+0.12%RBA利上げ期待で底堅い
シンガポールドル1.2762ドル堅調維持アジア通貨の中で高い耐性 17
ハンセン指数25,095-2.46%リスクオフの売りが波及 18

 

 

 

オーストラリア準備銀行(RBA)の影響と今後の焦点

2026年3月17日に予定されているRBAの理事会を控え、市場では0.25パーセントの利上げが行われるとの観測が急速に強まっています。ミシェル・ブロックRBA総裁は、全ての会合が利上げの検討対象であることを示唆しており、これは市場がこれまで抱いていた「据え置き」の期待を根本から変容させようとしています。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のデータによれば、豪ドルのコールオプション(買い権利)の取引量がプットオプションの6倍に達しており、ヘッジファンドなどの大口投資家が豪ドルのさらなる上昇に賭けていることが分かります。中東情勢によるインフレ圧力と、堅調な雇用市場(失業率4.1パーセント)がRBAに強気な姿勢を取らせる要因となっており、アジア時間における豪ドルの動きがドル円のクロスレートを通じて日本市場にも波及する可能性が高いと考えられます。

 

 

 

貴金属市場の地域別価格比較:香港とシンガポール

アジアの主要な貴金属取引拠点である香港とシンガポールにおいても、3月12日のスポット価格は世界的なトレンドに沿った動きを見せています。

香港市場における貴金属価格(BOCHK参照)

香港市場では、ロンドン金(London Gold)のスポット価格が1オンスあたり41,874香港ドル近辺で取引されています。下表は香港における主要な取引単位ごとの価格です。

貴金属種別(香港)単位買値(HKD)売値(HKD)
99金地金1両(Tael)49,890.0049,940.00
ロンドン金1オンス41,874.0041,924.00
ロンドン銀10オンス6,986.007,016.00
チューリッヒプラチナ1オンス17,838.0018,038.00

 

 

シンガポール市場における貴金属価格(Silver Bullion参照)

シンガポール市場では、シンガポールドル(SGD)建てでの取引が活発です。3月12日午前のデータによれば、金スポット価格は1オンスあたり6,573 SGDとなっており、前日の水準から約35 SGD下落しています。

貴金属種別(シンガポール)単位買値(SGD)売値(SGD)前日比変化
金(Gold)1オンス6,570.556,573.10-35.06
銀(Silver)1オンス108.12108.31-1.17
プラチナ(Platinum)1オンス2,748.302,761.06-18.50

シンガポール市場の投資家は、特に物理的な現物保有への関心が高く、ETFの解約に伴う現物への切り替え需要も観測されています。このような現物志向の強さは、紙ベースの市場価格が下落した際の強力な下支えとして機能する傾向があります。

 

 

 

2026年3月12日のトレード戦略

本日の市場環境下で利益を最大化するためには、ドル強気相場の継続を前提としつつも、突発的な地政学的ニュースによる価格の跳ね上がりを警戒する柔軟性が求められます。

貴金属については、金は5,150ドル、銀は84ドルという重要なテクニカルポイント付近での下げ止まりを確認することが重要です。特に銀は証拠金引き上げによる過剰な投げ売りが一巡した可能性があり、80ドルから85ドルのゾーンは中長期的なエントリーポイントとして魅力的な水準になりつつあります。ただし、米ドルの独歩高が継続している間は、買いポジションの構築は慎重に行い、分割でのエントリーを推奨します。

外国為替においては、ドル円の159円台半ばから160円にかけての売り圧力と、157円付近のサポートラインを意識したレンジトレードが基本となります。160円という節目は非常に強固なレジスタンスとなる可能性が高いですが、中東での新たな軍事行動が報じられた場合には、有事のドル買いによって一気に突き抜けるリスクもあります。

また、豪ドルの強さを利用した「豪ドル円」や「豪ドル米ドル」のロング(買い)ポジションは、RBAの利上げ期待を追い風にした有効な戦略となるでしょう。全体として、ボラティリティが非常に高い状態にあるため、通常よりも広めの損切りラインを設定するか、ポジションサイズを抑えてリスク管理を徹底することが、本日の厳しい相場環境を生き抜くための鍵となります。

中東の情勢は刻一刻と変容しようとしており、エネルギー価格の動向が全ての資産クラスの主導権を握っています。IEAの備蓄放出の影響が薄いことが確認されれば、再びインフレ懸念が貴金属の買い要因として復活するシナリオも想定されます。投資家は常に最新のニュースヘッドラインに注意を払い、迅速な判断を下せる体制を整えておくべきです。 

 

 

 


免責事項: 本レポートに含まれる情報は、情報提供のみを目的としており、投資助言を意図するものではありません。実際の取引においては、ご自身のリスク許容度に合わせて判断を行ってください。

 

 

 

引用文献

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  3. Why gold and silver prices are down today: Gold slips $44 while silver falls $2.80 — What is crushing precious metals despite global turmoil? – The Economic Times, https://m.economictimes.com/news/international/us/why-gold-and-silver-prices-are-down-today-gold-slips-44-while-silver-falls-2-80-what-is-crushing-precious-metals-despite-global-turmoil/articleshow/129461883.cms
  4. ドル/円見通し(為替/FX ニュース ):ドル円は円安で158円台後半 …, https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_03_12_usdjpy/
  5. 東京外国為替市場概況・12時 ドル円、持ち直し, https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/mn_1003575_202603121208/
  6. Hedge Funds Load Up on Aussie Call Options as RBA Decision Nears, https://www.livemint.com/market/hedge-funds-load-up-on-aussie-call-options-as-rba-decision-nears-11773280602572.html
  7. RBA’s “Live Meeting” Remarks Set Up a Clear-Cut March Rate Decision—Market Continues to Downplay the Potential Risk | Bitget News, https://www.bitget.com/amp/news/detail/12560605258123
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  10. Gold silver and platinum regain momentum as 2026 opens with familiar risks and new tensions | Saxo Hong Kong, https://www.home.saxo/en-hk/content/articles/commodities/gold-silver-and-platinum-regain-momentum-as-2026-opens-with-familiar-risks-and-new-tensions-06012026
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  12. How Will Silver Prices Fare in 2026? I J.P. Morgan Global Research, https://www.jpmorgan.com/insights/global-research/commodities/silver-prices
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  19. Vodafone Idea share price falls 4% even as company discloses plans of meeting institutional investors, https://www.livemint.com/market/stock-market-news/vodafone-idea-share-price-to-be-in-focus-as-the-company-discloses-plans-of-meeting-institutional-investors-11773285279859.html
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