GoldのO/NのIVからその日の変動範囲を計算する方法

O/N IVから計算した±1σの変動幅。XAU/USDは143ドル、USD/JPYは228pips、EUR/USDは95pips データ分析・検証

大手銀行が出してる週間予想レートとかもだいたいこれですが、大したことはやってません。

朝の時点で「今日はどこまで動きうるか」を数字にして、ObsidianのDaily Noteに書いているだけです。毎朝8時45分ごろにやってる。

 

 

TL;DR

  • オプション市場が出しているO/N(オーバーナイト)のIV(インプライドボラティリティ)を目で見て確認します
  • そこから、満期までに価格が収まりそうな範囲を ±1σ・±2σ で計算します
  • 2026年9月10日の朝なら、ドル円は 152.30 〜 154.59(±1σ、幅228pips)でした
  • 計算式は \( S_0 \, e^{\pm \sigma \sqrt{T}} \) の1行です。電卓や表計算ソフトで出せます

 

Investing.comさんのFXオプションのIV

 

 

 

何を書いているか

実際の今朝(9/10 8時46分)の数字。残り時間は14.23時間でした。

見やすくすると、

通貨ペア スポット O/N IV ±1σ の範囲
XAU/USD 4,393.80 40.35% 4,322.91 〜 4,465.85
USD/JPY 153.44 18.45% 152.30 〜 154.59
EUR/USD 1.16360 10.11% 1.15887 〜 1.16835

ゴールドの幅は143ドル、ドル円は228pipsです。±2σも同時に出していて、そちらはドル円で151.17 〜 155.74になります。

朝これを見ておくと、その日の値動きが「想定内か、想定外か」をその場で判断できます。152円台後半で下げ止まったなら±1σの下限付近です。151円を割ったなら±2σの外側なので、何か起きたと考えたほうがいい。

 

 

 

計算式

対数正規を仮定した、教科書どおりの式です。

\[ S_{\text{up}} = S_0 \, e^{+\sigma \sqrt{T}} \qquad S_{\text{down}} = S_0 \, e^{-\sigma \sqrt{T}} \]

\( S_0 \) はスポット、\( \sigma \) は年率のIVをそのまま小数にしたもの(40.35% なら 0.4035)です。\( T \) は満期までの残り時間を年に直したもので、残り時間を \( h \) 時間とすると次のようになります。

\[ T = \frac{h}{8760} \]

O/Nオプションの満期は23:00 JST(NYカット)なので、朝8時46分なら \( h = 14.23 \)、\( T = 0.001625 \) 年になります。

ドル円で計算するとこう。

\[ \sigma \sqrt{T} = 0.1845 \times \sqrt{0.001625} = 0.007437 \]

あとはスポットに掛けるだけです。\( 153.44 \times e^{0.007437} = 154.59 \)、\( 153.44 \times e^{-0.007437} = 152.30 \)。

 

計算はwolframalphaとかでやる。計算式は単語登録して数字を変えるだけにしておくと良き。

 

 

 

朝と夕方では幅が違う

ここが実務では効きます。Tは残り時間なので、時間が経つほど幅は狭くなります。

同じIVのまま夕方18時に計算し直すと、残りは5時間です。\( \sqrt{5 / 14.23} = 0.59 \) なので、幅は約6割に縮みます。ドル円の±1σは2.28円から1.35円になります。

つまり「今日のレンジ」は固定値ではありません。朝に出した幅を1日中使い回すと、夕方には広すぎる目安を見ていることになります。私は朝の数字を基準にしつつ、後場に判断するときは頭の中で6割くらいに縮めて見ています。

 

 

 

使う上での前提

  • IVは予想であって予言ではありません。市場参加者がいま織り込んでいる幅というだけで、当たる保証はありません
  • ±1σは約68%の目安です。やってみると分かりますが、材料が出れば超えていくことはよくあります。あくまで目安。外れること自体は異常ではありません。
  • 対数正規は現実の分布より裾が薄い。指標や介入で飛ぶ日は、±2σの外に出ることが正規分布の想定より多く起きます

なので、これを損切りの位置の根拠にするのは薦めません。使い道は「今日はどのくらいのボラティリティを想定しておくか」の目安と、動いた後に「これは想定内か」を確かめる物差しです。

 

 

 

自動化しない理由

毎朝やるくらいなら自動化しろよ、と思う人もいると思います。ただ、Investing.comは利用規約で、自動でデータを取ることを原則禁止しています。第10条「Limitations on Use」の c) にこうあります。

You are expressly forbidden from employing any automated system or software to extract data for content from this website for any purpose. This includes, but is not limited to, scraping, data mining, robot or spider programs, and other automatic devices, tools, or processes to access, extract, download, or copy any data or information from the website.

Investing.com Terms and Conditions 第10条 c)(2026年9月10日に確認)

「for any purpose(目的を問わず)」とあるので、個人で使うだけでも対象です。スクレイピングはもちろん、ブラウザを自動で動かして数字を読み取るのも「automatic devices, tools, or processes」に入ります。運営元のFusion Mediaから書面で許可をもらえば別ですが、そうでなければ自分の目で見るしかありません。

ちなみに robots.txt では、このページへのアクセスは止められていません。robots.txt で止められていないことと、規約で許されていることは別の話です。

 

 

 

まず何をするか

やることは、朝に1回手で計算するだけです。

  1. オプションのO/N IVを見る(investing.comのFXオプションのページで見られます)
  2. 23:00 JST までの残り時間を数えて、8760で割る。これがT
  3. スポットに \( e^{\pm \sigma \sqrt{T}} \) を掛ける。表計算ソフトなら =EXP(...) で足ります
  4. 出てきた上下を、その日のチャートに水平線で引いておく

4番目までやると、日中に「もう上限に近い」「まだ半分も動いていない」が視覚的に分かります。1週間続けると、自分がふだんどのくらいのボラティリティの日にトレードしているかも見えてきます。

なお、O/Nオプションの満期が23:00 JSTである理由は、そこがNYカットにあたるからです。東京・ロンドン・NYの時間帯で値動きの性質がどう変わるかは基礎コースの「FXの取引時間」で扱っています。こうした数値をどこから取ってくるかという話は検証コースの「検証用データの入手先」のほうです。

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