TL;DR
昨日の振り返り
- 直前取引日のドル円は、米7月雇用者数の減少と過去分の下方修正を受け158.30円台から156.68円まで下落し、その後157.70円台へ戻しました。
- Goldは米利上げ観測の後退を支えに前週末に上昇し、10日アジア時間も利益確定を受けながら現物4300ドル台を維持しました。
- 米株は上昇した一方、原油も反発し、金利低下によるリスク選好と地政学・インフレ懸念が同時に残る相場でした。
今日の見通し
- ドル円は米金利低下と日銀の追加利上げ観測が円高要因ですが、弱い日本の経常収支と原油高が円高の勢いを抑える可能性があります。
- Goldは4300ドルの維持力、Silverは63ドル台、Platinumは1740ドル近辺の相対強弱を確認し、12日の米CPI前の持ち高調整に注意します。
- 豪ドルは0.70米ドル台を保っていますが、11日のRBA会合を前に、据え置き予想とインフレ見通しの下方修正観測が上値を抑える可能性があります。
米雇用の弱さと日銀の利上げ観測が交差する為替・貴金属
10日の結論は、ドル円では米利上げ観測後退と日銀の引き締め観測が下押し要因となる一方、日本の外部収支悪化と原油高が円高を相殺しやすいということです。Goldは4300ドル台を維持していますが、週末の上昇後で利益確定が入りやすく、12日の米CPIまではドルと米金利を確認しながら条件付きで判断する局面です。
弱い米雇用でドル円は156円台後半へ
みんかぶが10日朝にまとめた前週末の値動きでは、米7月非農業部門雇用者数は前月比2.3万人減と、市場予想の8.0万人増を大きく下回りました。さらに過去2か月分は合計10.3万人下方修正されました。単月の振れだけでなく、直近の雇用増加ペースそのものが弱かったと受け止められ、9月の米利上げ確率は1週間前の67%程度から44%程度へ低下しました。
ドル円は発表前の158.30円台から156.68円まで下落した後、週末終値にかけ157.70円台へ戻しました。初動のドル安が一方向に続かなかったのは、中東情勢を巡る安全需要、急落後の買い戻し、参加者の持ち高調整など複数の要因が重なった可能性があります。雇用統計が弱いという事実と、その後の価格経路は分けて考える必要があります。
| 確認項目 | 10日朝に確認できる事実 | 市場への読み方 |
|---|---|---|
| 米7月非農業部門雇用者数 | 前月比2.3万人減 | 米利上げ観測を後退させやすい |
| 過去2か月分の改定 | 合計10.3万人下方修正 | 雇用の基調にも弱さがある可能性 |
| 9月利上げ確率 | 約44%、1週間前は約67% | 短期金利とドルの上値を抑えやすい |
| USDJPY | 158.30円台から156.68円 | 発表直後は円高・ドル安で反応 |
| 週末の戻り | 157.70円台 | 初動を一部取り戻した状態 |
雇用統計後の関係を単純化すると、利上げ確率の低下は米短期金利を通じてドルを押し下げ、Goldを支えます。ただし、日銀、日本の国際収支、原油が同時に反対方向へ作用するため、ドル円とGoldが常に鏡像になるわけではありません。

日銀の主な意見は円の下支え、経常収支は重荷
日銀が10日に公表した7月30~31日会合の「主な意見」では、市場が考えるより利上げペースが速くなる可能性や、機動的な対応、利上げ幅を議論すべきだという趣旨が示されました。金融引き締めが確定したわけではありませんが、米国の利上げ確率が低下する局面で日本の追加利上げ観測が強まれば、日米金利差縮小の思惑からドル円の上値を抑えやすくなります。
一方、6月の日本の経常収支は923億円の赤字で、市場予想の1兆2250億円の黒字を大きく下回りました。季節調整済みでも1兆3969億円の黒字にとどまり、貿易収支は1352億円の赤字でした。単月データだけで円の方向を決めることはできませんが、エネルギー輸入価格が上がる局面では円買い材料を弱める可能性があります。
10日朝のドル円理論価格は157.73円、割高の目安は158.76円、割安の目安は156.70円とされ、実勢は157円台後半でした。これは売買を保証する水準ではありませんが、前週末安値156.68円と割安目安156.70円が近いこと、158円台後半では割高感と日銀観測が意識されやすいことを示す参考になります。1週間物の予想変動率は9.39%で、雇用統計後も短期の変動警戒は残っています。
Goldは4300ドル台、SilverとPlatinumは工業需要も確認
10日アジア時間の現物Goldは4322.28ドルと0.5%安、12月限先物は4381.60ドルと0.4%安でした。前週末に7週間ぶりの高値を付けた後の利益確定が主因と報じられています。ただし、米利上げ確率が下がったため、金利を生まないGoldには4300ドル超で押し目需要が入りやすいとの見方もあります。4300ドルを明確に割り込むまでは上昇基調が維持されやすい一方、CPI前に4380~4400ドルへ近づく場面では追随買いを慎重にしたいところです。
Silverは63.45ドルで0.2%安、Platinumは1742.50ドルで0.1%安でした。いずれもGoldより下落率は小さいものの、SilverとPlatinumには太陽光、自動車、製造業など工業需要の要素があります。香港・中国株や豪ドル、鉄鉱石が弱いのにGoldだけが上がる場合、安全資産需要が中心で、三金属がそろって強いとは判断できません。
国内の田中貴金属10日9時30分公表価格は、Gold小売が1グラム2万4416円で前営業日比469円高、Silverが370.04円で12.54円高、Platinumが9964円で67円高でした。ドル建て相場の上昇が円高によって一部相殺されても、三金属とも国内価格は上昇しています。特にSilverの上昇率が相対的に大きく、短期的な値幅拡大には注意が必要です。
| 貴金属 | 海外市場の参考値 | アジア時間の方向 | 国内小売価格 | 前営業日比 |
|---|---|---|---|---|
| Gold | 現物4322.28ドル | -0.5% | 24,416円/g | +469円 |
| Silver | 現物63.45ドル | -0.2% | 370.04円/g | +12.54円 |
| Platinum | 現物1742.50ドル | -0.1% | 9,964円/g | +67円 |
海外の参考値は10日アジア時間の一時点、国内価格は田中貴金属の9時30分公表値です。取引時間と価格の定義が異なるため、騰落率を直接比較せず、それぞれの市場で方向を確認します。
国内価格を見る際は、海外価格だけでなくドル円も分解します。Goldがドル建てで横ばいでも円安なら円建て価格は上がりやすく、逆に海外Goldが上昇しても円高が急なら国内価格の上昇幅は縮みます。前週末は海外Goldの上昇が大きかったため国内三金属も上昇しましたが、本日はドル円が157円台で不安定です。海外価格と国内価格を同じ時刻の一つの相場として扱わず、外貨建て資産と為替の二つのリスクを管理します。
GoldとSilverの比率も方向確認に使えます。Goldが4300ドル台を維持する一方でSilverが63ドルを割るなら、安全資産需要が工業需要を上回っている可能性があります。反対にSilverが64ドル台へ先行し、Platinumも1760ドル方向へ進むなら、貴金属全体だけでなく景気敏感需要が戻っている可能性があります。ただし比率の変化は結果であり、単独で売買判断には使いません。
原油反発はGoldの支えと逆風を同時に作る
Brent原油は10日アジア時間に0.9%高の84.32ドル、WTIは0.7%高の78.74ドル付近でした。ホルムズ海峡の新航路を巡る協議が最終段階に近づいたとの報道がある一方、再開には条件が残るとされ、供給不安が完全に消えたわけではありません。原油高は地政学的な不確実性を通じてGoldを支える反面、インフレ期待を押し上げて米金利低下を妨げればGoldの上値を抑えます。
ドル円では、原油高は日本の輸入負担を通じて円安材料になりやすく、弱い米雇用によるドル安と逆方向に働きます。したがって、原油が84ドル台からさらに上昇し、米国債利回りも反発するなら、ドル円が157円台後半から158円台へ戻る余地があります。反対に原油が反落し、米短期金利も低下するなら、日銀観測と重なって156円台を再び試しやすくなります。
香港・豪州市場は金融政策待ち
10日午前の香港ハンセン指数は0.68%高、上海総合は0.46%高、韓国KOSPIは0.57%高でした。香港は米金融政策と連動しやすいため、米利上げ確率の低下が支えになったと整理できます。一方、オーストラリアASX200は0.51%安で、アジア全体が一様なリスク選好ではありませんでした。
豪ドルは前週末に0.5%高の0.7067米ドル、鉄鉱石は1.0%安の95.15ドルでした。豪ドルの上昇と主要輸出品の下落が同時に起きており、AUDUSDの上昇を資源価格だけで説明することはできません。11日のRBA会合は政策金利据え置きが予想され、市場は四半期報告でインフレ見通しが引き下げられるかを注視しています。声明が追加利上げの可能性を弱めれば0.70米ドル台前半へ反落しやすく、逆にインフレ警戒を残せば0.71方向を試す余地があります。
香港では通貨制度上、米金利の変化が金融環境へ波及しやすいため、米利上げ確率の低下は株式の割引率を通じて追い風になり得ます。ただし、ハンセン指数の上昇だけで中国景気が改善したとは判断できません。上海株、人民元、鉄鉱石、Silver・Platinumが同時に強まるかを確認し、金融緩和期待と実体需要の改善を区別します。
オーストラリアではASX200が下落し、鉄鉱石も安い一方、豪ドルは上昇しました。これは米ドル側の弱さがAUDUSDを押し上げた可能性を示します。RBA会合前に豪ドルが0.71へ近づいても、国内金利見通しが上昇していなければ上値の持続性は限定され得ます。AUDJPYでは豪ドル要因に加えて日銀観測が円を支えるため、AUDUSDの上昇をそのまま円クロスへ当てはめないことが重要です。
米CPIまでの二つのシナリオ
ドル円の上昇シナリオは、原油高が続き、米国債利回りが前週末の低下から反発し、157.70円台を維持する場合です。158.30円を回復すれば158.75円から159.00円が次の確認帯になります。ただし、日銀の追加利上げ観測が残るため、158円台後半では上値追いより反落への備えを優先します。
下落シナリオは、米金利が低下し、原油が反落し、156.68円を下抜く場合です。156.00円、次に155.50円が視野に入ります。日銀観測が強まれば下落速度が上がる可能性がありますが、日本の経常収支悪化や中東リスクが円買いを抑えるため、156円台での往復も想定します。
Goldの上昇シナリオは、米金利とドルが低下し、4300ドルを維持する場合です。4350ドルを回復すれば4380~4400ドルを試しやすくなります。下落シナリオは、原油高がインフレ懸念を強め、米金利が上昇し、4300ドルを割る場合です。SilverとPlatinumはアジア株や工業金属が弱いとGoldより下落が大きくなる可能性があります。
12日の米CPI予想は総合が前月比0.1%上昇、コアが0.2%上昇です。発表までは新しい米国材料が限られるため、前週末の大きな値動きに対する調整が出やすい時間帯です。新規ポジションは水準だけでなく、米2年債利回り、原油、アジア株の方向がそろうかを確認します。
時間帯別に確認するリスク
東京午前は、日銀の「主な意見」と経常収支を消化するため、ドル円が157.70円前後を挟んで上下しやすい時間です。仲値後も158円を回復できない場合は、国内実需のドル買いだけでは上値が重いと判断できます。ただし、薄い市場で156.70円へ近づいた際は前週末安値を意識した買い戻しも想定し、安値追いを急ぎません。
香港・シンガポール時間は、ハンセン指数、中国本土株、人民元、原油の組み合わせを確認します。株高と人民元高がそろえば豪ドルやSilver・Platinumの支えになりやすい一方、株高でも鉄鉱石と豪ドルが下がるなら、金融緩和期待だけが先行している可能性があります。Goldはアジア株が強くても米金利が低下すれば維持されるため、株式だけで安全資産需要の後退を決めません。
欧州からニューヨーク時間は大きな米指標が予定されていないため、米国債の前週末上昇に対する反動と、原油・中東関連の新しい見出しが主な変動要因です。米2年債利回りが低下を続け、ドル円が157.30円を割るなら円高シナリオの信頼度が上がります。反対に利回りと原油が同時に反発し、Goldが4300ドルへ近づくなら、米CPI前の利益確定が強まっていると整理します。
本日のトレード戦略
外国為替の戦略
ドル円の想定レンジは156.70~158.80円です。157.70円を上回り、米2年債利回りと原油がともに上昇するなら158.30円、次に158.75円を確認します。この上昇シナリオは157.30円割れで無効とします。反対に156.68円を割り、米金利低下も続くなら156.00円方向を想定し、157.70円回復で下落シナリオを無効とします。
EURUSDは1.1500~1.1610ドルを観察帯とします。前週末高値1.1581ドルを上抜き、米金利低下が続けば1.1600ドル台を試しやすい一方、1.1530ドル割れではドル安継続の前提を外します。EURJPYは181.30~183.00円を目安とし、ドル円の円高とEURUSDのドル安が相殺するため、片方だけで方向を決めません。
AUDUSDは0.7010~0.7110ドルを想定します。0.7067ドルを維持し、中国株と商品市況が改善すれば0.71方向を検討できますが、鉄鉱石安とRBAの慎重姿勢が重なる場合は0.70台前半へ戻る可能性があります。強気の無効化は0.7030ドル割れ、弱気の無効化は0.7110ドル超えです。10日は大きな米指標が予定されていないため、翌日のRBA、12日の米CPIを前に取引量を抑える選択も合理的です。
貴金属の戦略
Goldは4300~4400ドルを主な観察帯とします。4300ドルを維持し、米2年債利回りとドル指数が低下するなら4350ドル超えを確認して押し目形成を検討します。強気シナリオは4290ドル割れで無効です。4300ドル割れと米金利上昇が重なる場合は4270ドル方向を警戒し、4350ドル回復で弱気シナリオを無効とします。
Silverは62.80~64.20ドルを観察帯とします。63.45ドルを維持し、Goldと香港・中国株が同時に上昇するなら64ドル台を試す余地があります。強気の無効化は62.70ドル割れ、弱気の無効化は64.30ドル超えです。Goldだけが上昇し株式が弱い場合は、安全資産需要が中心と判断してSilverの追随を前提にしません。
Platinumは1710~1770ドルを中心に見ます。1742.50ドルを上回り、中国株、豪ドル、工業金属が安定するなら1760~1770ドルを確認します。強気の無効化は1710ドル割れ、弱気の無効化は1775ドル超えです。三金属とも原油高には地政学の支えと金利上昇の逆風があるため、原油だけを根拠に方向を決めません。
引用文献
- 本日の見通し:弱い米雇用統計でドル売り優勢
- 日銀会合の主な意見、利上げペース加速の可能性
- 日本6月経常収支は923億円の赤字
- ドル円理論価格と割高・割安水準
- ドル円オプション市場、雇用統計後も変動警戒
- アジア株は豪州を除き上昇、RBA会合待ち
- 金は7週間ぶり高値後に利益確定、米CPI待ち
- アジア株上昇、米利上げ観測後退と原油反発
- オーストラリア市場、豪ドル・金・鉄鉱石の前週末動向
- 田中貴金属 Gold価格
- 田中貴金属 Silver価格
- 田中貴金属 Platinum価格
免責事項: 本レポートに含まれる情報は、情報提供のみを目的としており、投資助言を意図するものではありません。実際の取引においては、ご自身のリスク許容度に合わせて判断を行ってください。


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