2026年3月02日 昨日の振り返りと今日の見通し

TL;DR

昨日(週末)の振り返り

  • 週末の2月28日から3月1日にかけて、米国とイスラエルによるイランへの大規模な共同軍事攻撃が実施され、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が死亡したとの報道により、地政学的緊張が極限まで高まりました。
  • この事態を受けて、原油先物価格が一時8%超の急騰を見せ、ホルムズ海峡の事実上の封鎖懸念が浮上したことで、週明けのアジア市場ではリスク回避の「有事のドル買い」とエネルギー輸入国である日本円の売りが加速しました。
  • 貴金属市場では、安全資産としての需要が爆発し、金は1オンス5,300ドルを突破、銀は供給不足と流動性危機を背景に1日で8%以上上昇し、歴史的な騰貴を記録しました。

 

 

今日の見通し

  • 東京為替市場では、ドル円相場が156円台後半を中心とした堅調な推移を続け、中東情勢のさらなる悪化や原油高を背景に、一段の円安・ドル高が進む可能性が高いと予測されます。
  • 貴金属市場、特に銀に関しては、100ドルの心理的節目を目指す「放物線的」な上昇トレンドが継続し、国内の金価格も1グラム3万円の大台到達を試みる極めて強気な地合いが続く見通しです。
  • アジア株式市場は、日経平均株価やハンセン指数が大幅反落して始まったものの、地政学リスクの織り込みが進む中で、エネルギー関連や防衛関連セクターへの資金流入が相場を下支えする二極化の動きが想定されます。

 

 

 

中東有事の勃発とアジア・日本市場における資産価格の劇変

2026年3月2日の金融市場は、週末に発生した米国・イスラエルによる対イラン攻撃という衝撃的なニュースを消化する形で幕を開けました。イラン最高指導者の死亡という、中東のパワーバランスを根本から覆しかねない事態は、投資家のリスク許容度を急激に低下させています。特にアジア市場においては、エネルギー供給網の要であるホルムズ海峡の封鎖リスクが現実味を帯びたことで、これまでの市場の楽観論が後退し、不確実性が支配する新たな局面へと変容しようとしています。

為替市場では、伝統的な「有事の円買い」という構図が機能せず、むしろエネルギー価格の上昇が日本の貿易収支を悪化させるとの懸念から「有事の円売り」が発生しています。これは、日本経済が依然として外部のエネルギーショックに対して脆弱であることを浮き彫りにしており、通貨ペアの動向に構造的な変化をもたらしています。また、貴金属市場では金のみならず、銀やプラチナといった産業用側面を持つ金属も、供給不安を背景に資産としての価値を急速に高めています。

 

 

外国為替市場における米ドルの独歩高と円の脆弱性

東京外国為替市場において、米ドル円相場は週明けから強い上昇圧力にさらされています。午前9時時点では156.60円前後で推移していましたが、中東からのニュースが伝わるたびに買いが先行し、午後には156.80円台まで上伸しました。この動きを主導しているのは、圧倒的な「ドル選好」です。米国が紛争の当事者でありながら、エネルギー自給率の高さと基軸通貨としての強みが再評価され、資金が米ドルへと還流しています。

一方、日本円は厳しい立場にあります。原油先物価格の急騰は、日本の輸入コストを押し上げ、実需筋による円売り・ドル買いを誘発しています。さらに、日本銀行の氷見野副総裁が和歌山県での講演において、依然として緩和的な金融環境を維持する姿勢を示したことも、円安を容認するメッセージとして市場に受け取られました。金利差と実需の両面から、円を積極的に買う理由が見当たらない状況が続いています。

エネルギー価格高騰がもたらす円安の構造的要因

原油価格の上昇は、日本のような資源貧国にとって、通貨価値の低下に直結する負の要因となります。ブレント原油が1バレル82ドル付近まで上昇したことで、市場は日本の経常収支が悪化することを先読みし始めています。過去のリスク局面では円が安全資産として買われてきましたが、現在の市場は「経済のレジリエンス(復元力)」を重視しており、エネルギー自給率の低さが円の「安全通貨」としての地位を揺るがしています。

また、ホルムズ海峡の封鎖懸念は、単なるコスト増に留まらず、物流の寸断による日本国内の生産活動の停滞を想起させます。このような実体経済への悪影響が懸念される中で、ドル円相場は157円という次の心理的節目をうかがう展開となっています。輸出企業によるドル売り観測もあるものの、それを上回る投資家や輸入企業によるドル買い意欲が、相場の底堅さを支えているといえます。

シンガポールドルとアジア通貨のレジリエンス

アジア地域の他の通貨に目を向けると、シンガポールドル(SGD)の動きが注目されます。シンガポール金融管理局(MAS)は、中東情勢の影響を注視しつつも、国内の金融システムが正常に機能していることを強調する声明を発表しました。シンガポールの通貨政策は金利ではなく為替レート(S$NEER)を重視する独自のバンド制を採用しており、これが輸入インフレを抑制する強力な防波堤として機能しています。

しかし、韓国ウォンなど、エネルギー輸入依存度が高く経常収支が敏感な通貨は、対ドルで大幅な下落を余儀なくされています。アジア市場全体としては、地政学的リスクに対して「ドル高・アジア通貨安」の構図が鮮明になっており、各国の中央銀行はインフレ抑制と景気支えの両立という難しい舵取りを迫られています。

以下は、2026年3月2日の東京市場における三菱UFJ銀行発表の主要通貨レートです。

通貨TTS(販売レート)TTB(買取レート)仲値
米ドル (USD)157.54155.54156.54
ユーロ (EUR)185.70182.70184.20
英ポンド (GBP)214.06206.06210.06
シンガポールドル (SGD)124.25122.59123.42
オーストラリアドル (AUD)112.86108.86110.86

 

 

貴金属市場のパラダイムシフト

貴金属市場において、2026年3月2日は歴史的な転換点として記憶されることになるでしょう。金と銀が同時に急騰するだけでなく、その上昇の性質がこれまでのテクニカルな反発を超え、供給不安と通貨不信を背景とした実物資産への「質への逃避」を鮮明にしているからです。特に銀の上昇率は金を超越し、市場参加者の間ではシルバー・スクイーズの再来が囁かれています。

金市場では、米国とイスラエルの攻撃直後から、国際スポット価格が垂直に立ち上がりました。一時は1オンス5,400ドル付近まで値を上げ、その後も高値圏で推移しています。これは、中東紛争が局地的なものに留まらず、広範な宗教的・政治的な対立へと発展し、世界経済を長期にわたって混乱させるリスクを市場が織り込み始めた結果です。

金価格の歴史的高騰と国内小売価格の節目

日本国内における金価格の動向は、さらに劇的です。田中貴金属工業が発表した店頭小売価格は、前週末比で1,131円という記録的な上昇を見せ、1グラムあたり29,865円に達しました。これは、国際価格の上昇に円安の効果が加わった「ダブルの上昇要因」によるものです。市場関係者の多くが、今日明日中にも1グラム3万円という、かつては想像もできなかった歴史的な大台に到達すると確信しています。

こうした価格高騰は、個人の資産運用にも大きな影響を与えています。安全資産としての金への信頼は盤石であり、不透明な未来に対する唯一の防衛策として、地金や金投資信託(ETF)への資金流入が止まりません。JPモルガンやバンク・オブ・アメリカといった大手金融機関は、金価格が中長期的に1オンス6,000ドルを目指すとの強気な予測を維持しており、現在の急騰はその通過点に過ぎない可能性があります。

銀市場におけるショートスクイーズと100ドルの心理的障壁

銀(シルバー)市場では、現在進行形で驚異的なショートスクイーズが発生しています。国際価格は1日で8%超の跳ね上がりを見せ、94ドルから96ドル台へと一気に水準を切り上げました。この異常なまでの上昇を支えているのは、物理的な供給不足です。アナリストによれば、世界全体で約6,700万オンスの銀供給不足が発生しており、中東の紛争が海路を遮断することで、この不足が一段と深刻化するとの懸念が広がっています。

技術的な側面からは、95ドルの抵抗線を突破したことが大きなトリガーとなりました。この水準を超えたことで、価格が急激に上昇する「ガンマ・スクイーズ」の状態に陥っており、次の目標値である100ドルが現実的な射程に入っています。銀は金と比較して市場規模が小さいため、一度火がつくと価格変動が極めて激しくなる特性があります。2026年3月という時期は、銀が単なる産業用メタルから、最強の避難資産へと変容しようとしている瞬間なのかもしれません。

プラチナおよびパラジウム市場の供給懸念

貴金属市場の強気な地合いは、プラチナやパラジウムにも波及しています。プラチナは1オンス2,390ドル前後で推移しており、前週末から底堅く上昇しています。自動車触媒としての需要に加え、金・銀が高騰しすぎたことによる代替投資先としての魅力が高まっています。また、パラジウムも1,811ドル付近まで値を戻しており、地政学リスクに伴うロシアや中東からの供給途絶リスクが、価格の下値を支えています。

貴金属投資家にとって、現在は「何を買っても上がる」局面に見えますが、その背景にあるのは深刻な世界情勢の悪化です。実物資産を保有することは、もはや投機ではなく、ポートフォリオを守るための必須の防衛策としての意味合いを強めています。

以下は、2026年3月2日の貴金属スポット価格および主要指標です。

金属スポット価格 (USD/oz)前日比 (%)国内小売価格 (円/g)
金 (Gold)5,364.70+1.6429,865
銀 (Silver)94.93+8.00517
プラチナ (Platinum)2,390.00+1.2312,997
パラジウム (Palladium)1,811.00+2.25未公表

 

 

地域別経済への影響分析:シンガポールと香港

アジアの金融センターであるシンガポールと香港は、今回の中東危機に対して異なる反応を見せています。香港市場は、グローバルな資本フローに敏感であるため、ハンセン指数が午前中に2%を超える大幅な下落を記録しました。中国本土市場が比較的落ち着いた動きを見せているのとは対照的に、香港は地政学的リスクをストレートに反映する鏡のような役割を果たしています。特にテクノロジー関連株や、航空・観光といった原油高の直撃を受けるセクターが売られています。

対照的にシンガポールでは、政府および中央銀行(MAS)の迅速なメッセージ発信により、市場に過度なパニックは見られません。シンガポールは貿易依存度が極めて高いものの、その洗練された外国為替管理制度が通貨の安定を担保しています。しかし、ビジネスコストの上昇は避けられず、エネルギー価格の高騰が長期化すれば、物流拠点としての競争力に影響が出かねないとの警戒感は依然として残っています。

アジア全域を通じて共通しているのは、もはや「安全な場所」は存在せず、いかにしてリスクを分散し、ショックを吸収できるかというレジリエンスの戦いになっているということです。中国市場が一部のセクターで耐性を見せているのは、防衛産業やエネルギー自給に向けた構造的な買いが入っているためであり、市場の関心はすでに「平時の成長」から「有事の生存」へと移行しています。

 

 

 

2026年3月2日のトレード戦略

本日のトレード戦略を策定する上で、最も重要な指針は「トレンドへの追随」と「リスクの限定」です。中東情勢は刻一刻と変化しており、週末の衝撃的なニュースが週明けの市場に完全に織り込まれたとは言い切れません。外国為替市場、特に米ドル円においては、押し目買いのスタンスを継続します。仲値付近の156.50円から156.20円までのレンジは強力なサポートとして機能する可能性が高く、157.00円に向けた上昇をターゲットにしたロングポジションが推奨されます。ただし、突発的な停戦報道やトランプ米大統領による予想外の発言など、ボラティリティを急上昇させる「ブラックスワン」的イベントには常に警戒を払い、ストップロス注文をタイトに設定することが不可欠です。

貴金属市場については、銀の「放物線的」な動きを最大限に活用すべき局面です。95ドルという重要な心理的・テクニカル的な節目を突破したことで、ショート勢の踏み上げが加速しており、100ドルに向けたモメンタムは非常に強力です。銀の現物、あるいはETFを保有している場合は利益を伸ばす段階にありますが、新規で参入する場合は、短期的な過熱感による急落のリスクを考慮し、時間分散を行いつつ参入するのが賢明です。金に関しても、国内価格の1グラム3万円という大台到達は、売り材料ではなく、新たなステージへの入り口となる可能性が高いでしょう。

最後に、株式市場と商品の相関についてですが、現在は株を売って商品を買いという「アセットアロケーションの変更」が加速しています。特に日経平均株価などの指数に対しては弱気な見通しを立てつつ、エネルギー関連銘柄や金鉱株といった、コモディティ価格上昇の恩恵を直接受ける銘柄へのシフトが、ポートフォリオのパフォーマンスを維持するための有効な手段となります。不確実な局面だからこそ、ファンダメンタルズの裏付けがある実物資産や、それを支える通貨へと資本を集中させることが、2026年3月の荒波を乗り越えるための最良の戦略となるでしょう。

 

 


免責事項: 本レポートに含まれる情報は、情報提供のみを目的としており、投資助言を意図するものではありません。実際の取引においては、ご自身のリスク許容度に合わせて判断を行ってください。 

 

 

引用文献

  1. Asia FX falls as Middle East strikes spur oil surge; S.Korean won … https://au.investing.com/news/forex-news/asia-fx-falls-as-middle-east-strikes-spur-oil-surge-skorean-won-leads-losses-4285443
  2. Silver Price Forecast: Safe-Haven Shockwave as XAG Heads Above $100 https://www.fxleaders.com/news/2026/03/01/silver-price-forecast-safe-haven-shockwave-as-xag-heads-above-100/
  3. Silver and gold ETFs jump upto 18% as US-Israel attacks on Iran fuel safe-haven demand. What should investors do? – The Economic Times https://m.economictimes.com/mf/mf-news/silver-and-gold-etfs-jump-upto-18-as-us-israel-attacks-on-iran-fuel-safe-haven-demand-what-should-investors-do/articleshow/128936463.cms
  4. Asian stocks today: Nikkei crashes 900 points, HSI down over 2%; markets trade in red amid Iran-Israel tensions https://timesofindia.indiatimes.com/business/international-business/asian-stocks-today-nikkei-crashes-900-points-hsi-down-over-2-markets-trade-in-red-amid-iran-israel-tensions/articleshow/128935224.cms
  5. Silver Smashes $94 Resistance: Why the “Silver Squeeze” of 2026 … https://www.fxleaders.com/news/2026/03/02/silver-smashes-94-resistance-why-the-silver-squeeze-of-2026-is-heading-for-100/
  6. 外為サマリー:156円80銭前後へ上昇、「有事のドル買い」が優勢に https://minkabu.jp/news/4456865
  7. KITCO: Live Gold Prices | Gold News And Analysis | Mining News https://www.kitco.com/
  8. Gold, Silver Rate Today Live Updates (March 2): MCX gold jumps 3.5% as US-Israel-Iran tensions boost safe-haven demand; silver rallies 3.5% https://m.economictimes.com/markets/stocks/live-blog/gold-silver-price-today-live-updates-iran-israel-us-war-impact-on-mcx-gold-silver-rate-ali-khamenei-death-news-mcx-share-price/liveblog/128934885.cms
  9. 【通貨】 東京為替:日経平均の下げ幅縮小も円売りは継続 https://kabutan.jp/news/marketnews/?&b=n202603020256
  10. ドル円は午前の高値を超える=東京為替 – 2026年03月02日15:13 – みんかぶ(FX) https://fx.minkabu.jp/news/359720
  11. 金価格が1000円以上急騰し1グラム3万円目前に…イラン攻撃で“安全資産”金の価格上昇し2万9865円に – FNNプライムオンライン https://www.fnn.jp/articles/-/1008876
  12. ジェミニが分析する本日の金・銀価格 – moomooコミュニティ https://www.moomoo.com/ja/community/feed/gemini-s-take-on-gold-silver-price-today-116156053520390
  13. 2日の株式相場見通し=5日ぶり反落、中東有事を背景にリスク回避ムード – みんかぶ https://s.minkabu.jp/news/4456014
  14. Developing | Iran strikes day 3: markets open with sharp sell-off in futures and Asian shares https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3345089/iran-strikes-day-3-markets-open-sharp-sell-futures-and-asian-shares
  15. MAS weighs Middle East conflict impact on Singapore; says forex, money markets ‘continue to function normally’ https://www.businesstimes.com.sg/singapore/mas-weighs-middle-east-conflict-impact-singapore-says-forex-money-markets-continue-function-normally
  16. Comments by MAS on Market Conditions https://www.mas.gov.sg/news/media-releases/2026/comments-by-mas-on-market-conditions
  17. 三菱UFJリサーチ&コンサルティング | 外国為替相場 https://www.murc-kawasesouba.jp/fx/index.php
  18. 三菱UFJ銀 ドル円 公表仲値 156.54 – みんかぶ https://minkabu.jp/news/4456231
  19. 【速報】金価格が大幅上昇 米国のイラン攻撃で「有事の金」 – ライブドアニュース – Livedoor https://news.livedoor.com/topics/detail/30677874/
  20. 金価格1グラム2万9865円に急騰 先週末より1100円超上昇 イラン攻撃で中東情勢緊迫化 リスク回避で“安全資産”に投資集中 https://news.livedoor.com/topics/detail/30680564/
  21. Spot Prices and Charts – Silver Bullion https://www.silverbullion.com.sg/prices

【毎日更新】今日の1gあたりの金価格・相場推移 – ゴールドプラザ https://goldplaza.jp/gold/rate

コメント

タイトルとURLをコピーしました