FOMC前夜の静寂、ドル円159円台膠着と金5000ドル攻防|中東リスク継続
TL;DR
前日の振り返り
- イラン紛争が3週目に入り、イランの国家安全保障局長であるアリ・ラリジャニ氏が空爆により死亡したことが確認され、地政学的緊張が極限まで高まりました。
- ホルムズ海峡の封鎖継続による原油価格の高騰を受け、インフレ再燃への懸念から米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測が大幅に後退し、金利据え置き予想が支配的となりました。
- 外国為替市場ではドル円が159円台で推移し、日本の片山財務相による市場介入への強い警戒感が上値を抑える一方で、実需の円売りが下値を支える膠着状態が続きました。
当日の見通し
- 深夜に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表とパウエル議長の記者会見において、最新の金利見通し(ドットチャート)がタカ派的な内容になるかどうかが最大の焦点となります。
- 貴金属市場では、金価格が1オンスあたり5000ドルの心理的節目を維持できるか試される展開となり、エネルギー価格の高騰がインフレヘッジとしての需要と高金利による圧迫を同時に引き起こすと予想されます。
- 日本国内市場では日銀金融政策決定会合の初日を迎え、貿易収支の赤字傾向や介入リスクを睨みながら、深夜の米イベント待ちでボラティリティの低い時間帯が続くと見込まれます。
地政学的混迷とグローバル経済の変容しようとしている局面
中東におけるイラン紛争は、単なる地域的な軍事衝突の域を超え、世界のエネルギー供給網と主要国の金融政策を根本から揺さぶる事態へと変容しようとしています。2026年3月18日現在、米国およびイスラエルによるイランへの攻撃は継続しており、これに対してイラン側もアラブ首長国連邦(UAE)などの石油インフラへの報復を強めています。
紛争の長期化は、特に原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖という形で顕在化しています。世界の石油供給の約20%が通過するこの海峡の混乱は、WTI原油価格を1バレル100ドル前後の高水準に留めており、これが輸送コストや製造コストを押し上げる強力なインフレ圧力となっています。このような状況下で、かつて想定されていた2026年前半の利下げシナリオは事実上崩壊しつつあり、市場参加者は高金利環境の長期化を前提としたポートフォリオの再構築を余儀なくされています。
2026年3月18日の主要市場データ一覧
| 資産クラス | 指標・通貨ペア | 現在値 / 終値 | 前日比 | 主要因 |
| 外国為替 | ドル円 (USD/JPY) | 159.342 | -0.05% | 介入警戒感と金利差の拮抗 5 |
| 外国為替 | ユーロドル (EUR/USD) | 1.15380 | +0.3% | ドルの戻り売り優勢 13 |
| 貴金属 | 金スポット (XAU/USD) | 5003.77 | -0.02% | 5000ドルの心理的節目 2 |
| 貴金属 | 銀スポット (XAG/USD) | 79.31 | -0.01% | 工業需要と投資需要の混在 1 |
| 貴金属 | プラチナ (XPT/USD) | 2135.26 | +0.2% | 地政学リスクに伴う買い 9 |
| エネルギー | WTI原油 (USD/bbl) | 98.71 | +3.11% | ホルムズ海峡の供給懸念 11 |
イラン情勢の深刻化とエネルギー市場への波及
イランの国家安全保障局長であるアリ・ラリジャニ氏の死亡が確認されたことは、紛争の出口が見えない状況を象徴しています。イランの最高指導層は、中立国を通じた停戦提案を拒否しており、エネルギーインフラへのさらなる攻撃を予告しています。トランプ大統領は、イランのハルク島にある石油施設への直接攻撃の可能性についても言及しており、これが現実となれば原油価格はさらなる高騰を招くリスクを孕んでいます。
このようなエネルギーショックは、特にエネルギー輸入依存度の高い日本や韓国、南アジア諸国に深刻な影響を及ぼしています。例えば、インドネシアでは原油価格が1バレルあたり1ドル上昇するごとに、財政赤字が6.8兆ルピア拡大するという推計が出ており、新興国の財政脆弱性が浮き彫りになっています。アジアの主要なエネルギー輸入国である中国、日本、韓国は、従来の米国の軍事力による航路安全保障に依存する体制から、供給網の強靭化と備蓄の強化へと戦略的な舵を切り始めています。
外国為替市場における円安圧力と介入の均衡
日本の外国為替市場では、ドル円相場が159円台前半を中心とした狭いレンジでの動きに終始しています。この水準は、日本の通貨当局にとっての「レッドライン」とされる160円を目前にした極めてデリケートな領域です。
為替市場の現状とテクニカル分析
政府・日銀による介入警戒感 片山財務相が「いかなる時も万全の対応をとる」と発言し、市場介入への準備を示唆していることが、投機的な円売りの動きを強く牽制しています。市場では、160.00円というキリの良い数字に極めて厚い売り注文が置かれており、これが強力なレジスタンスとして機能しています。
実需とファンダメンタルズによる円売り 一方で、下値も堅い状況が続いています。2月の貿易統計では、エネルギー価格の高騰を背景に通関ベースで4600億円を超える赤字が見込まれており、実需による円売り・ドル買いが相場を下支えしています。また、日銀の金融政策決定会合においても、現段階での利上げは想定されておらず、日米の圧倒的な金利差が円安の構造的な要因として居座っています。
主要通貨ペアのオーダーブックと強弱状況
オーダーブックを確認すると、158.00円付近にはサポートラインに沿った厚い買い注文が入っており、介入がない限りはこの水準を割り込むのは難しい状況です。通貨の強弱で見ると、直近24時間では豪ドルが最も強く、カナダドルが最も弱いという結果になっています。円はマイナス圏で推移しており、依然として主要通貨の中では売られやすい傾向にあります。
2026年3月18日の主要経済指標発表予定
| 時間 | 国・地域 | 指標名 | 予想 | 前回 |
| 08:50 | 日本 | 2月貿易統計(通関ベース) | -4600億円 | -1兆1635億円 5 |
| 17:00 | 南アフリカ | 2月消費者物価指数(CPI) | 3.1% | 3.5% 10 |
| 19:00 | ユーロ圏 | 2月消費者物価指数(HICP・改定値) | 1.9% | 1.9% 10 |
| 21:30 | 米国 | 2月卸売物価指数(PPI) | 3.0% | 2.9% 10 |
| 27:00 | 米国 | FOMC政策金利発表 | 3.50-3.75% | 3.50-3.75% 5 |
| 27:30 | 米国 | パウエルFRB議長定例記者会見 | – | – 5 |
貴金属市場における価値の再定義と投資家の苦悩
貴金属市場、特に金(ゴールド)は、歴史的な高値である1オンス5000ドルの壁に直面しています。本来、紛争の激化は安全資産としての金買いを誘発しますが、現在の市場では高金利という強力な向かい風がその勢いを削いでいます。
金(Gold)市場の深層分析
高金利環境と有事の買いの衝突 2026年に入り、米国の金融政策見通しが激変しました。1月にはケビン・ウォーシュ氏が次期FRB議長に指名されたことをきっかけに、金価格が一時10%急落する場面もありました。現在の金利水準である3.5%から3.75%は、利息を産まない金にとって保有コストを増大させる要因ですが、イラン紛争による不確実性がそれを相殺し、5000ドル付近での均衡を生み出しています。
テクニカル的な下落トレンドの兆候 日足チャートでは、5営業日連続の陰線を形成しており、短期的には下落トレンドが示唆されています。平均足も陰転しており、3月16日の安値を割り込むかどうかが、さらなる調整の有無を決定する重要な分岐点となります。しかし、長期的には依然として前年比64%以上という驚異的な上昇を記録しており、中央銀行によるドル離れと金準備の積み増しという構造的な買い要因は消えていません。
銀(Silver)およびプラチナ(Platinum)の動向
銀のボラティリティと工業需要 銀は2025年に130%もの上昇を記録し、一時120ドルを超える記録的な暴騰を見せましたが、2026年3月現在は80ドルを割り込む水準まで調整が進んでいます。銀はソーラーパネル向けの導電性ペーストなどの工業用途が需要の多くを占めるため、紛争による経済活動の停滞懸念が、安全資産としての側面を上回る下落圧力となっています。JPモルガンのリサーチによれば、2026年の銀価格の平均は81ドル程度と予測されており、現在はその適正価格を探る段階にあります。
プラチナ市場の反発と不透明感 プラチナは前日に40ドルを超える急反発を見せましたが、本日の取引では再び1.6%以上の下落を記録するなど、極めて不安定な動きを見せています。地政学リスクには敏感に反応するものの、自動車産業などの実需面での不透明感が上値を重くしています。
貴金属店頭小売価格(日本国内・税込)
| 銘柄 | 3月18日価格 (円/g) | 前日比 (円) | 備考 |
| 金 (小売) | 28,299 | -188 | 国際価格下落を反映 19 |
| 金 (買取) | 27,954 | -188 | 5000ドルの攻防が影響 19 |
| プラチナ (小売) | 12,162 | -247 | 前日の反発分を打ち消し 19 |
| 銀 (小売) | 456.28 | -15.51 | 大幅続落の展開 19 |
アジア金融ハブから見た市場の変容
香港やシンガポールといったアジアの金融センターでは、今回のイラン紛争と米国の強硬姿勢を受けて、投資家の行動に明確な変化が見られます。
香港市場と中国の通貨戦略
香港証券取引所では、エネルギー価格の高騰を受けてハンセン指数が軟調に推移する場面も見られましたが、一方でAIを活用したバイオテクノロジー企業によるIPOが相次ぐなど、産業構造の転換を反映した動きも活発です。中国人民銀行は、人民元の対ドル基準値を1ドル=6.8909元と発表し、域内通貨の安定を図っていますが、エネルギー輸入コストの増大が人民元への重石となっていることは否めません。
シンガポールの現物需要と避難先としての役割
シンガポールでは、中東危機の深刻化に伴い、富裕層や機関投資家による金の現物購入が急増しています。現地の貴金属ディーラーは、需要に応えるために在庫を大幅に増やし、新たな保管庫(ボルト)の建設を進めています。これは、デジタル資産や米ドル建て資産に対する信頼が揺らぐ中で、物理的な裏付けを持つ資産への回帰が強まっていることを示しています。
また、アジア諸国のCEOたちの間では、2026年の経済見通しに対して「自信」を示しつつも、その約60%が地政学的緊張を最大の懸念事項として挙げています。ビジネスリーダーたちは、紛争がサプライチェーンの分断や物流コストの上昇を招き、ようやく回復の兆しを見せていた世界経済がスタグフレーションに陥るリスクを深刻に受け止めています。
FOMCプレビュー:ドットチャートが描く未来図
本日深夜に予定されているFOMCは、今後の金融市場の運命を左右する分岐点となります。
利下げ期待の霧散と「ドット」の修正
据え置きは確実視 先物市場に基づけば、今回の会合で金利が3.50%から3.75%に据え置かれる確率は99%に達しています。市場の関心は既にその先にあり、FRBメンバーが示す最新の金利見通し(ドットプロット)において、年内の利下げ回数がどのように下方修正されるかに注目が集まっています。
タカ派化するFRBの背景 1月に発表された個人消費支出(PCE)価格指数は、イラン紛争の影響が出る前段階で既に上昇傾向を示しており、インフレの根深さを証明しました。これにエネルギーショックが重なったことで、FRBが年内の利下げを断念する、あるいは一部の予測にあるように「再利上げ」の可能性すら検討せざるを得ない状況に追い込まれています。パウエル議長が、エネルギー価格の上昇を一時的なものとして看過するのか、あるいはインフレ目標達成への重大な障害として捉えるのかが、ドル高・金安の加速を決定づけるでしょう。
労働市場の疲弊と政策のジレンマ
一方で、米国の労働市場には疲労の色が見え始めており、景気後退を回避するために利下げを行いたいという本音も存在します。しかし、イラン紛争がもたらす「コストプッシュ型インフレ」の前では、中央銀行の伝統的な金融緩和策は効果を限定されるどころか、事態を悪化させる恐れがあります。このジレンマこそが、現在のボラティリティを生み出している根源です。
本日のトレード戦略
2026年3月18日のトレードにおいては、日本時間の深夜に控えるFOMCという巨大なイベントを控え、昼間の時間帯は極めて抑制的なポジション管理が求められます。
ドル円相場では、159円台後半でのロング(買い)は禁物です。160.00円のレジスタンスは極めて強固であり、片山財務相による市場介入という「ブラックスワン」が常に背後に控えています。理想的な戦略は、介入による急落が発生した際の157円から158円台での押し目買い、あるいは160円近辺での小規模な逆張りショートです。ただし、FOMCが極めてタカ派的な内容となった場合、介入を粉砕してドル円が急騰するリスクも考慮し、逆指値注文による徹底したリスク管理が不可欠です。
貴金属、特に金においては、5000ドルの大台がテクニカルおよび心理的な防波堤となっています。短期的にはEMA50を下回る弱い形を維持していますが、RSIなどのオシレーター系指標では売られすぎの領域に近づいています。FOMC後に一時的な金安が進み、4900ドル台前半まで突っ込む場面があれば、そこは長期的なインフレヘッジとしての買い場となる可能性があります。一方で、銀についてはボラティリティが激しすぎるため、現在は静観が賢明です。
アジア市場の動向としては、原油価格に連動しやすい資源国通貨や、中東情勢の影響を直接受けるエネルギー関連銘柄に注目が集まります。しかし、全体としては「嵐の前の静けさ」となる公算が大きく、主要なアクションは深夜27時のFOMC発表以降に集中させるべきです。感情的なトレードを避け、データに基づいた冷静な判断が、この歴史的な混迷期を乗り切る唯一の鍵となります。
免責事項: 本レポートに含まれる情報は、情報提供のみを目的としており、投資助言を意図するものではありません。実際の取引においては、ご自身のリスク許容度に合わせて判断を行ってください。
引用文献
- Gold – Price – Chart – Historical Data – News – Trading Economics, https://tradingeconomics.com/commodity/gold
- Gold steady as investors weigh Middle East risks ahead of Fed decision, https://www.businesstimes.com.sg/companies-markets/energy-commodities/gold-steady-investors-weigh-middle-east-risks-ahead-fed-decision
- Iran war is making it harder for the Federal Reserve to cut interest rates, https://www.cbsnews.com/news/federal-reserve-interest-rate-decision-iran-war/
- Wall Street ends up as traders turn to US Fed | The Straits Times, https://www.straitstimes.com/business/companies-markets/wall-street-ends-up-as-traders-turn-to-fed
- ドル/円見通し(為替/FX ニュース ):ドル円は円高で159円付近|政府 …, https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_03_18_usdjpy/
- ドル円午前の為替予想、FOMCは「長期にわたる金利据え置き示唆 …, https://www.gaitame.com/media/entry/2026/03/18/073132
- Global Forex and Fixed Income Roundup: Market Talk – 富途资讯, https://news.futunn.com/en/post/70222983/global-forex-and-fixed-income-roundup-market-talk
- 金(XAU)見通し (市況ニュース) :金価格は下落し5005ドル|各国の …, https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_03_18_xau/
- Gold prices steady near $5,000/oz with Iran war, Fed meeting in focus By Investing.com, https://za.investing.com/news/commodities-news/gold-prices-steady-near-5000oz-with-iran-war-fed-meeting-in-focus-4170154
- 本日の予定【経済指標】 – 2026年03月18日07:20|為替ニュース – みんかぶFX, https://fx.minkabu.jp/news/361476
- Morning Wrap: ASX 200 to fall, S&P 500 nears four-month low, Oil prices set to extend gains, https://www.marketindex.com.au/news/morning-wrap-asx-200-to-fall-s-and-p-500-nears-four-month-low-oil-prices-set
- Iran war poses new risk to US economic resilience | The Straits Times, https://www.straitstimes.com/business/iran-war-poses-new-risk-to-us-economic-resilience
- Market Recap (Tue 17 Mar) | How it happened. – AIMS, https://aimsfx.com/2026/03/18/%F0%9F%97%9E%EF%B8%8F-market-recap-tue-17-mar-how-it-happened/
- Asia’s silence on Trump’s Hormuz call isn’t inaction, https://asiatimes.com/2026/03/asias-silence-on-trumps-hormuz-call-isnt-inaction/
- ユーロ円は円安で183円台半ば|夜以降に円安が進む(2026年3月18日) – OANDA証券, https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_03_18_eurjpy/
- World Interest Rates – Forex – AASTOCKS.com, http://www.aastocks.com/en/forex/market/worldinterestrate.aspx
- How Will Silver Prices Fare in 2026? I J.P. Morgan Global Research, https://www.jpmorgan.com/insights/global-research/commodities/silver-prices
- Gold and silver rebound after sharp selloff, up over 2% from one-month lows – The Hindu, https://www.thehindu.com/business/markets/gold-and-silver-rebound-after-sharp-selloff-up-over-2-from-one-month-lows/article70586881.ece
- 純金積立なら三菱マテリアル GOLDPARK(ゴールドパーク) 三菱 …, https://gold.mmc.co.jp/market/
- Markets: Latest News and Updates | South China Morning Post, https://www.scmp.com/business/markets
- Trade Hong Kong 45 – Futures CFD – Live Chart – Markets.com, https://www.markets.com/instrument/hongkong45/
- Market exchange rates in China — March 18 – Xinhua, https://english.news.cn/20260318/0415125e5b4243d1a664e9efb0b24f51/c.html
- Asian shares advance as markets await signals on when the war with Iran may end, https://halifax.citynews.ca/2026/03/11/asian-shares-advance-as-markets-await-signals-on-when-the-war-with-iran-may-end-2/
- Silver prices hold steady under the influence of key support – Analysis- 18-03-2026, https://www.economies.com/commodities/silver-analysis/silver-prices-hold-steady-under-the-influence-of-key-support—analysis–18-03-2026-125612
- Crude oil prices supported by technical factors, boosting chances of a rise – Analysis- 18-03-2026, https://www.economies.com/commodities/oil-analysis/crude-oil-prices-supported-by-technical-factors,-boosting-chances-of-a-rise—analysis–18-03-2026-125613


コメント