2026年3月11日 昨日の振り返りと今日の見通し

米CPI前でドル円158円攻防、金5200ドル台維持|ホルムズ海峡機雷報道と原油

TL;DR

昨日の振り返り

  • 中東での紛争激化を受け、安全資産としての米ドルと金への資金流入が加速しましたが、ドナルド・トランプ大統領による紛争終結への期待感から原油価格が下落し、インフレ懸念が一時的に和らぎました。
  • 金価格は米ドル指数の低下と米国債利回りの低下を背景に反発し、スポット価格は1.9パーセント上昇して1オンスあたり5231.79ドルに達しました。
  • 外国為替市場では、日銀の政策修正に対する不透明感から円安が進行し、ドル円は一時158.50円付近まで上昇しましたが、米国のCPI発表を控えたポジション調整により上値が抑えられました。

 

 

今日の見通し

  • 本日発表される米国の2月消費者物価指数(CPI)が市場の最大の関心事であり、インフレの粘着性が示されれば米ドル高・貴金属安、予想を下回ればその逆の反応が予想されます。
  • 貴金属市場では、地政学リスクを背景とした買い支えが続くものの、インフレ指標の結果次第では5200ドルの節目を巡る攻防が激化する見通しです。
  • アジア市場においては、シンガポールや香港の株式市場が底打ちの兆しを見せる一方で、エネルギー供給網の混乱によるコスト増が引き続き企業利益の圧迫要因として意識されます。

 

 

 

地政学の激動と経済指標の交錯:2026年3月11日の市場深層分析

2026年3月11日の金融市場は、中東で続く軍事衝突という極めて高い地政学的緊張感と、米国の金融政策の行方を左右するインフレデータの発表という二つの大きな波に洗われています。前日、イランがホルムズ海峡に機雷を敷設し始めたとの報道が伝わると、株式市場はリスク回避の売りを強めましたが、一方でトランプ大統領の仲裁による紛争終結への期待が交錯し、市場のボラティリティは極限まで高まっています。

 

貴金属市場におけるパラダイムシフトと価格形成要因

貴金属市場、特に金(ゴールド)は、2026年3月11日現在、1オンスあたり5200ドルを超える歴史的な高値圏で推移しています。この水準は、2025年1月の2624ドルから始まった上昇トレンドの延長線上にあり、わずか一年余りで価格がほぼ倍増したことになります。この背景には、既存の基軸通貨制度に対する信頼の揺らぎと、各国中央銀行による物理的な金準備の積み増しという構造的な変化が存在しています。

 

金市場の需給構造と中央銀行の動向

中央銀行による金の純購入量は、過去3年間にわたり毎年1000トンを超える異例のペースで推移してきました。これは、ロシア・ウクライナ紛争やイスラエル・イラン紛争を通じた外貨準備の「脱ドル化」の動きが加速していることを示唆しています。特に中国がロシアから多額の金を購入しているとの報告もあり、地政学的な対立構造が直接的に金の需給バランスを押し上げています。

2026年3月11日のアジア市場における主要な金価格の動向は以下の通りです。

地域・指標価格・数値前日比・変動参照ソース
スポット金(XAU)5213.99ドル+0.4%5
米金先物(4月限)5221.80ドル-0.4%5
インド(24金/10g)162,390ルピー+10ルピー6
バンガロール(24金/10g)162,809ルピー-486ルピー5
チェンナイ(24金/10g)164,274ルピー5

インド国内の金価格は、都市ごとに微妙な差異を見せながらも、全体として高止まりしています。現物需要の強さは、投資家がインフレヘッジとして金を選択し続けている証左であり、特に結婚シーズンや祭事に関連する実需も価格を支える要因となっています。

 

 

シルバー・スクイーズと産業需要の激化

銀(シルバー)市場においては、2026年1月29日に記録した120ドルという驚異的な高値からの調整を経て、現在は88ドル付近での攻防が続いています。銀は「金よりも薄い市場」であるため、一度需給が崩れると極端なボラティリティが発生しやすい特性を持っています。2026年1月30日の31パーセントという暴落は、ペーパーマーケットでの清算が引き金となりましたが、物理的な供給不足という根本的な問題は解決していません。

産業用需要の拡大 銀の需要の50パーセント以上は産業用であり、特にAIデータセンター、電気自動車(EV)、太陽光パネルにおける導電材料としての役割が重要視されています。AIインフラの構築に不可欠な高性能GPUやサーバーコネクタには大量の銀が使用されており、テック企業による銀の争奪戦が始まろうとしています。

現物在庫の枯渇リスク ロンドン貴金属市場協会(LBMA)の倉庫在庫は2020年以前の33,000トンから27,729トンまで減少しており、上海黄金交易所(SGE)の在庫に至ってはピーク時から91パーセントも急減しています。このような物理的在庫の枯渇は、先物市場における決済リスクを高め、さらなる価格高騰を招く潜在的な火種となっています。

 

 

プラチナとパラジウムの供給網と地政学

プラチナおよびパラジウム市場も、中東の紛争と供給網の寸断による影響を強く受けています。3月11日のスポット市場では、プラチナが1パーセント上昇して2221.48ドル、パラジウムが1.5パーセント上昇して1679.73ドルとなりました。

これらの金属は、主に自動車の排ガス浄化用触媒として使用されますが、南アフリカやロシアといった特定の地域に生産が集中しているため、地政学的なリスクに対して極めて敏感です。ホルムズ海峡の混乱は、直接的な産出量への影響だけでなく、物流コストの上昇を通じて価格を押し上げています。また、水素経済への移行に伴う水電解装置向けの需要も、長期的な価格の下支え要因として注目されています。

 

 

外国為替市場:円安の背景と日銀の苦境

ドル円(USD/JPY)レートは、3月11日のアジア市場早朝において158.30円付近で取引されています。この円安傾向の背景には、日本の政治的な圧力と日銀の慎重な姿勢があります。

 

 

国内政治と日銀の金融政策

高市早苗首相が日銀に対し、追加の利上げに対して慎重な姿勢を求めているとの報道があり、これが市場で「日銀は動けない」との認識を強めています。植田和男総裁も、中東紛争が日本経済に与える不透明感を理由に、当面の間は現在の政策金利を維持する可能性を示唆しています。来週に控えた金融政策決定会合において、現状維持が予想される一方で、市場は4月以降の修正の可能性を模索しています。

 

 

日米金利差と通貨の魅力

米連邦準備制度(Fed)が3月の会合で金利を3.5パーセントから3.75パーセントの範囲で据え置くと予想される中、日米の金利差は依然として大きく、円を売ってドルを買うキャリートレードのインセンティブが働いています。しかし、今夜発表される米国のCPIが予想を下回る結果となった場合、ドルの調整売りが加速し、円が急速に買い戻されるリスクには細心の注意が必要です。

 

 

アジア市場の金融ハブ:シンガポールと香港の現在地

シンガポールと香港は、グローバルな不確実性が高まる中で、それぞれ異なるアプローチで金融ハブとしての強靭性を示しています。

 

 

シンガポールのセーフヘイブン機能

シンガポール経済は、製造業やホールセールの好調を背景に、2026年の成長率予測が従来の2.3パーセントから3.6パーセントへと大幅に上方修正されました。一方で、地政学リスクの増大は輸入インフレを招き、国内のエネルギー価格やガソリン価格の上昇という形で消費者に転嫁されています。

シンガポール証券取引所(SGX)に上場している主要銀行(DBS、OCBC、UOB)は、金利の高止まりを背景に純利息収入(NII)を確保していますが、同時に地政学リスクに伴う貸出先の信用リスクにも注視しています。シンガポール金融管理局(MAS)による株式市場活性化策(EQDP)も継続されており、中長期的な市場の厚みが増そうとしています。

 

 

香港の人民元オフショア市場と中国との接続

香港市場では、ハンセン指数が年初来で32パーセント上昇するなど、強い回復力を見せています。特に中国本土からの資金流入(サウスバウンド・ストックコネクト)が活発であり、ハイテク株や新エネルギーセクターが市場を牽引しています。

また、香港は「オフショア人民元センター」としての地位をさらに強化しており、中東諸国との間での人民元建て決済や債券発行が進んでいます。これは、米ドルへの依存度を下げるというアジア全体の戦略的な動きを象徴しており、3月11日の市場においても、人民元の流動性と利便性の向上が投資家から評価されています。

 

 

2026年3月11日のトレード戦略

本日のトレード戦略は、米CPI発表という巨大なイベントを軸に組み立てる必要があります。指標発表前後の極端なボラティリティを回避しつつ、トレンドの転換点を見極めることが肝要です。

 

通貨ペアおよび貴金属のテクニカル・レベル

市場の主要なテクニカル・ポイントは以下の表の通り整理されます。

資産サポートレベルレジスタンスレベル戦略的ポイント
ドル円(USD/JPY)157.70 / 156.37158.44 / 158.88CPI後の158.88超えで上昇加速
金(XAU/USD)5192 / 51005250 / 5300地政学リスク継続なら5250突破
銀(XAG/USD)84.50 / 80.0090.00 / 95.00在庫懸念から急騰の可能性
STI指数4,575 / 4,5004,700 / 4,880短期的には4700の底打ち確認

ドル円の対応 ドル円については、158.44円から158.88円のレジスタンスゾーンを明確に上抜けるかどうかが焦点です。もしCPIが強く、この水準を突破した場合は、160円を目指す強い上昇トレンドが発生する可能性があります。一方で、157.70円を割り込んだ場合は、利益確定売りが強まり、156円台半ばまでの調整を想定しておくべきです。

金の売買方針 金は、5200ドルの大台を維持できている間は強気姿勢を継続します。テクニカル指標であるRSIは依然として高水準にありますが、地政学的緊張が続く限り、押し目買いの意欲は強いと判断されます。ただし、CPIの結果を受けて実質金利が急上昇した場合には、一時的に5100ドル付近まで調整する可能性があるため、ストップロスはタイトに設定する必要があります。

銀の投機的機会 銀はボラティリティを好むトレーダーにとって魅力的な対象です。88ドル付近での保ち合いを上抜けた場合、次のターゲットは90ドルの大台となります。現物の在庫不足というニュースが流れた際には、ショートスクイーズが発生しやすいため、逆指値注文によるリスク管理が不可欠です。

リスク管理の総括

2026年3月11日の金融市場は、伝統的な経済指標と突発的な地政学ニュースが複雑に絡み合っています。投資家は、特定のシナリオに固執することなく、市場の価格反応に対して柔軟に対応する姿勢が求められます。特に流動性が低下するCPI発表直後は、スリッページや価格の飛散に注意し、確実な約定が期待できるタイミングでのエントリーを心がけるべきです。グローバルな価値の保存手段としての貴金属と、金利差に基づく為替動向のバランスを常に注視し、多角的な視点からポートフォリオを守る戦略が求められています。

 

 

 


免責事項: 本レポートに含まれる情報は、情報提供のみを目的としており、投資助言を意図するものではありません。実際の取引においては、ご自身のリスク許容度に合わせて判断を行ってください。

 

 

 

引用文献

  1. Gold, Silver Rate Today Live Updates: Gold prices rise as Trump indicates possible end to war; what’s the outlook? – The Times of India, https://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/gold-silver-rate-today-live-updates-22-24k-carat-gold-price-per-kg-silver-india-mcx-comex-etf-stocks-march-city-wise-cost-us-israel-iran-war-middle-east-crisis-latest-news/liveblog/129372131.cms
  2. Gold prices end lower as investors, rattled by Iran conflict, continue to shelter in the dollar, https://www.morningstar.com/news/marketwatch/20260309130/gold-prices-end-lower-as-investors-rattled-by-iran-conflict-continue-to-shelter-in-the-dollar
  3. Japanese Yen weakens below 158.50 on BoJ policy uncertainty, US …, https://www.mitrade.com/au/insights/news/live-news/article-1-1540359-20260311
  4. Japanese Yen Short-term Outlook: USD/JPY Three-Week Surge …, https://www.forex.com/en-us/news-and-analysis/japanese-yen-short-term-outlook-usd-jpy-three-week-surge-stalls-breakdown-risk-builds-3-10-2026/
  5. Gold, Silver Rates Today LIVE: MCX gold rate falls below ₹1.63 …, https://www.livemint.com/market/commodities/gold-silver-rates-today-live-mcx-gold-rate-today-mcx-silver-price-us-iran-war-israel-donald-trump-us-fed-11-march-2026-11773197883509.html
  6. Gold price climbs ₹10 to ₹1,62,390; silver up ₹100, trades at ₹2 …, https://www.business-standard.com/markets/commodities/gold-price-climbs-10-to-1-62-390-silver-up-100-trades-at-2-90-100-126031100121_1.html
  7. Hong Kong 2026 Outlook: Dual-speed Recovery – DBS, https://www.dbs.com.sg/wrapperapi/generic/download-pdf?pdf_path=content/article/pdf/AIO/112025/251125_insights_hongkong.pdf
  8. DBS Stock Pulse: STI Market Bottom, Suntec REIT Value, Top Singapore Equity Picks & REIT Insights 123, https://www.minichart.com.sg/2026/03/11/dbs-stock-pulse-sti-market-bottom-suntec-reit-value-top-singapore-equity-picks-reit-insights-123/
  9. S&P500の振り返りと見通し: ホルムズ海峡の機雷敷設報道で地政学リスクが再燃(2026年3月11日), https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_03_11_us500/
  10. BullionStar revolutionise Singapore gold industry – SG Wealth Builder, https://sgwealthbuilder.com/2026/01/02/bullionstar-revolutionise-singapore-gold-industry/
  11. Silver price to make comeback at US$200? – SG Wealth Builder, https://sgwealthbuilder.com/2026/02/27/silver-price-to-make-comeback-at-us200/
  12. Silver’s one-year 180% bull run: What to know about investing in it versus gold, https://www.businesstimes.com.sg/wealth/wealth-investing/silvers-one-year-180-bull-run-what-know-about-investing-it-versus-gold
  13. Japanese Yen Outlook: USD/JPY Bulls Eye 158 Heading into NFP, https://www.cityindex.com/en-uk/news-and-analysis/japanese-yen-outlook-usd-jpy-bulls-eye-158-heading-into-nfp/
  14. Singapore consumers in for higher petrol, electricity prices as oil spikes past US$100, https://www.straitstimes.com/business/economy/singapore-consumers-in-for-higher-petrol-electricity-prices-as-oil-spikes-past-us100
  15. Morning wrap (11.03.2026), https://www.xtb.com/int/market-analysis/news-and-research/morning-wrap-11-03-2026
  16. Economists raise Singapore growth forecast for 2026 to 3.6% from 2.3%: MAS survey, https://www.straitstimes.com/business/economy/economists-raise-singapore-growth-forecast-this-year-to-3-6-from-2-3-mas-survey
  17. Alert: 3 Red Flags for Singapore Investors as Global Tensions Explode, https://thesmartinvestor.com.sg/alert-3-red-flags-for-singapore-investors-as-global-tensions-explode/
  18. DBS, UOB and OCBC in focus: Weekly Review with SIAS – Growbeansprout.com, https://growbeansprout.com/weekly-market-review-9-mar-2026
  19. 2026 Outlook and Strategy – DBS Bank, https://www.dbs.com/insightsdirect/api/s3/dbs-buffer/article_attachment/20251211/07-34-32_Singapore%20Market%20Focus%20%282026%20Outlook%29%2011dec25.pdf
  20. 金(XAU)見通し (市況ニュース) :金価格は上昇し5192ドル|イラン …, https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_03_11_xau/

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