2026年6月29日 昨日の振り返りと今日の見通し

ドル円162円目前で介入警戒続く、Goldは中東リスクと中央銀行買いで反発

TL;DR

昨日(週末)の振り返り

  • 米国とイランの対立激化による有事の米ドル買いと、米国のタカ派的な金融政策姿勢が意識され、ドル円は下落局面から161円台後半へと急速に買い戻されました。
  • 貴金属市場では安全資産への逃避需要が急増し、金価格が1オンスあたり4088ドル台を回復したほか、銀やプラチナも堅調な連れ高の推移を示しました。
  • アジアの株式市場は、日経平均株価が3000円超の大幅下落を記録するなど、投資家の資金がリスク資産から安全資産へと逃避する動きが鮮明になりました。

  

 

今日の見通し

  • ドル円は約40年ぶりの高値水準である162円を目前に控え、日本当局による為替介入への警戒感と実需のフローが交錯する神経質なレンジ相場が続くと予想されます。
  • 30日にカタールで予定されている米国とイランの実務者協議の行方が、外国為替および原油市場のボラティリティを左右する最大の焦点として注視されています。
  • 貴金属市場は、新興国中央銀行の現物買いと脱ドル化のトレンドが強固な下値支持となる一方、米金利の高止まり観測が上値を抑える展開が見込まれます。

 

 

 

市場動向の詳細な分析

地政学リスクと外国為替市場の反応

2026年6月29日の外国為替市場は、中東情勢の緊迫化と各国の金融政策スタンスの違いを背景に、極めて神経質な展開を見せています。先週末のニューヨーク外為市場において、ドル円相場は米国のインフレ指標発表後に年内の高金利維持観測が一時的に後退し、161.575円まで下落する場面がありました1。しかしその後、中東のホルムズ海峡周辺において米国とイランの間で自爆型ドローンなどを用いた攻撃の応酬が発生したとの報道が伝わると、地政学リスクを意識した有事の米ドル買いが急速に流入し、最終的に161.775円まで値を戻して週の取引を終えました1

週明けのアジア時間に入ると、日本の片山さつき財務相とベセント米財務長官がオンライン協議を実施したことが報じられました3。これにより、日本政府および日銀による円買いの為替介入への警戒感が市場内で一気に高まり、一時161.47円から161.49円付近まで円が買い戻される局面が見られました3。さらに、日本政府が策定する「骨太の方針」において、日銀の金融政策運営に対する牽制とも取れる文言が明記される方針であることが判明し、これが日銀の追加利上げを抑制するとの見方から再び円売りを後押しする結果となっています1

市場の関心を強く集めているのが、米国のニュースメディアであるアクシオスが報じた停戦協議の動向です。米国とイランは相互攻撃を一時停止し、対立解消に向けた実務者協議を30日にカタールで実施する方針であると伝えられています1。この協議の進展度合いが、原油価格の動向とインフレ期待を通じて、外国為替市場の方向性を決定づける重要な要素となります。

通貨ペア本日の予想下限本日の予想上限直近の相関性が強い通貨ペア
ドル円161.300円162.500円ポンドドル(強い逆相関)
ユーロ円183.500円184.700円ポンド円、ユーロドル(強い相関)
ポンド円212.600円214.200円ユーロ円(強い相関)
豪ドル円111.100円112.000円豪ドル米ドル(相関)

相関分析の観点からは、ドル円はポンドドルと強い逆相関関係にある一方、豪ドル円との間には弱い相関しか見られません6。ユーロ円は日経平均株価の急落を受けたリスク回避の円買い圧力を受けているものの、為替介入警戒感から下値は堅く、月末の実需に伴う輸入企業の決済買いもあって184円台前半で推移しています8

 

 

米国金融政策の転換とインフレ動向

米ドル相場を根本的に下支えしているのは、米連邦準備制度理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ新議長が打ち出したタカ派的な金融政策スタンスです。6月に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利が3.50パーセントから3.75パーセントの範囲に全会一致(12対0)で据え置かれました10。しかし、市場関係者に大きなパラダイムシフトを意識させたのは、その後のコミュニケーションの変化です。

対象年政策金利の予想中央値備考
2026年末3.80パーセント18人中9人が年内利上げを予想
2027年末3.60パーセント高水準の金利維持を示唆
2028年末3.40パーセント緩やかな利下げ軌道
長期見通し3.10パーセントインフレ目標達成を前提

ウォーシュ議長は、従来のようなフォワードガイダンス(将来の政策方針の事前提示)を声明文から大幅に削減し、市場に対してよりリアルタイムのデータに依存する姿勢を求めました11。さらに異例なことに、議長自身はドットプロット(金利予測分布図)に自身の予測を提示しないという選択をしました11。この行動は、市場がFRBの指針に過度に依存する現状を打破し、物価安定という本来の使命に立ち返るという強いメッセージとして受け止められています。

背景として、米国のインフレ指標が依然として高い水準で推移していることが挙げられます。5月の米個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比4.1パーセントの上昇となり、FRBが目標とする2.0パーセントを大きく上回る水準です16。エネルギー価格の上昇がインフレを牽引している側面はあるものの、インフレの粘着性が確認されたことで、市場では年内の利上げ確率が約62パーセントから80パーセントの間で意識されており、これが米ドルの独歩高を生み出す要因となっています16

 

 

アジア株式市場への波及と投資家心理

為替市場と貴金属市場における激しい資金移動は、アジアの株式市場にも深刻な波及効果をもたらしています。中東の地政学リスクの高まりや、米国の金融引き締め長期化に対する懸念から、投資家はリスク資産である株式を売却し、安全資産へ資金を逃避させる動きを強めました。

アジア主要株価指数終値前営業日比
日経平均株価69,360.883,005.46下落
上海総合指数4,027.2793.02下落
台湾加権指数43,392.783.87パーセント下落
韓国KOSPI7,786.074.81パーセント下落

とりわけ日本の日経平均株価は3,000円を超える記録的な急落となりました2。この背景には、為替の乱高下が輸出企業の業績見通しを不透明にしていることや、162円を目前にして政府・日銀による為替介入が行われた場合の急激な円高リスクを市場が織り込み始めたことが挙げられます。また、台湾や韓国の市場でも大幅な下落が記録されており、テクノロジー関連株を中心とした世界的なリスクオフの連鎖が確認されています18

 

 

貴金属市場の構造的変化と価格動向

外国為替市場における米ドルの強さにもかかわらず、貴金属市場では金をはじめとする主要銘柄が堅調な推移を見せています。先週末のニューヨーク市場において、金先物価格は1オンスあたり4088.385ドルまで上昇しました19

貴金属銘柄直近価格(米ドル)前営業日比の変動
金(XAU/USD)4088.38561.465上昇
銀(XAG/USD)59.122.2パーセント上昇
プラチナ1632.802.0パーセント上昇
パラジウム1213.872.5パーセント上昇

この金価格の上昇は、単なる一時的なリスク回避行動のみでは説明できません。背景には、世界的な通貨システムにおける構造的な変化が存在します。最も顕著な動きが、新興国の中央銀行による継続的な金購入トレンドです。中国人民銀行は18ヶ月連続で金を買い増しており、2026年4月だけで8トンの純増を記録しました20。また、ポーランドも同月に14トンを購入するなど、西側諸国の金融システムに対する過度な依存を避け、外貨準備を多様化する脱ドル化の動きが加速しています20。これら公的部門の実需が、金価格の強力な下値支持線として機能しています。

日本国内の金小売価格も歴史的な高値水準にあります。三菱マテリアルが発表した小売価格は1グラムあたり23,300円を記録し、買取価格も22,976円と高水準を維持しています21。為替レートの円安傾向も相まって、国内投資家にとって金はインフレヘッジおよび通貨下落ヘッジの有効な手段として認識されています。

日付金の国内税込買取価格(1グラムあたり)
2026年06月29日22,987円
2026年06月26日22,634円
2026年06月25日22,591円
2026年06月24日23,012円
2026年06月19日23,667円

さらに、米国国内では貴金属市場のインフラに大きな変革をもたらす可能性のある法案が注目を集めています。SILVER Actと呼ばれるこの法案は、現在ニューヨーク周辺に集中している貴金属の保管庫を地理的に分散させることを義務付けるものです20。この法案が成立すれば、プラチナやパラジウムといった防衛産業に不可欠な金属のサプライチェーンが強化され、市場の流動性と透明性が大きく向上することが期待されています20

本日のトレード戦略

外国為替の戦略

本日の外国為替市場では、ドル円相場において162.00円という約40年ぶりの歴史的な節目を巡る攻防が最大の焦点となります。市場のオーダーブック(注文状況)を分析すると、投資家の心理状態が鮮明に浮かび上がります。

ドル円の価格帯注文の性質背景分析および戦略的意味合い
160.00円付近特に厚い買い注文重要な心理的サポートライン。長期的な押し目買い水準。
160.70円台厚い買い注文直近のテクニカルな支持線。短期的な反発が期待される。
161.50円付近特に厚い売り注文短期的な利益確定の売り。レジスタンスとして機能。
162.50円付近特に厚い売り注文為替介入警戒ラインと強力な上値抵抗線。

ドル円のトレード戦略としては、高値追いの順張りは非常にリスクが高いと判断します。162円に近づくにつれて、日本当局による実弾の為替介入リスクが飛躍的に高まるためです。片山財務相とベセント米財務長官の協議が行われたという事実だけでも、当局がいつでも為替市場に介入できる体制を整えている強いシグナルとなります3。したがって、戦略としては下落局面を待つ押し目買いが基本となりますが、エントリーポイントは161円台前半や、さらに安全を見るならば厚い買い注文が控える160.70円台まで引き付けることが推奨されます7

また、ユーロ円についても183円台前半に厚い買い注文、186円台半ばに売り注文が集中しています6。ユーロ円はポンド円やユーロドルとの強い相関を利用し、欧州時間の経済指標発表に合わせた短期的なレンジ取引が有効です6。今週は米雇用統計という極めて重要な経済指標の発表を控えているため、ポジションサイズを通常の半分程度に縮小し、ストップロス(損切り)を厳密に設定するリスク管理が不可欠です。

 

 

貴金属の戦略

金(XAU/USD)のトレード戦略は、中長期的な上昇トレンドを前提としながらも、テクニカル指標に基づいた緻密なエントリーが求められます。

日足チャートを分析すると、下ヒゲを伴う陽線が形成されており、底堅さが示唆されています19。しかし、OANDAが提供する平滑化された平均足(Heikinashi Smoothed)の指標からは、日足レベルでは依然として陰線が連続しており、中期的に売り圧力が残存していることが確認できます19。一方で、1時間足の短期的トレンドでは平均足が陽線へと転換しており、買い優勢の兆しが見られます19。さらに、米国商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、金の投機的ネットポジションは約18万1000の買い越しとなっており、投資家の強い上昇期待が伺えます19

 

金(XAU/USD)のテクニカル水準価格水準(米ドル)トレードにおける意味合い
レジスタンス14111.5直近の取引レンジ上限。利益確定の目安。
サポート14053.3デイリーピボットの基準値。一次的な押し目買い水準。
サポート23998.1直近の取引レンジ下限。強力な防衛ライン。

金のトレード方針としては、一時的な価格調整を狙った押し目買い戦略を推奨します。米ドルインデックスが反発する局面では金価格が下落圧力を受けやすいため、現在の4088ドル付近からの高値掴みは避け、デイリーピボットの基準値である4053.3ドル付近、あるいは4000ドルの心理的節目までの調整下落を待ってからエントリーすることが望ましいです22

特に、米国とイランの実務者協議が30日に無事開催され、地政学リスクが一時的に後退した場合、安全資産としてのプレミアムが剥落し、短期的な利益確定売りが強まる可能性があります1。しかし、長期的には中央銀行の金買いという実需が強固なサポートとなるため、こうした地政学リスクの後退による短期的な下落は、中長期投資家にとって絶好の買い場を提供すると分析します20

 

 

 

免責事項: 本レポートに含まれる情報は、情報提供のみを目的としており、投資助言を意図するものではありません。実際の取引においては、ご自身のリスク許容度に合わせて判断を行ってください。

 

 

 

引用文献

  1. 【今日のドル円】昨日の振り返りと今日のドル円相場見通し 2026年6月29日, https://www.gaitame.com/media/entry/2026/06/29/092318
  2. FX/為替「ドル/円今日の見通し|162円目前、停戦協議と介入警戒が焦点」 外為どっとコム トゥデイ 2026年6月29日号, https://www.gaitame.com/media/entry/2026/06/29/082203
  3. 円下落、一時161円93銭 39年半ぶり安値に再接近, https://www.47news.jp/14513708.html
  4. 円、一時39年半ぶり安値に肉薄 1ドル=161円93銭, https://www.47news.jp/14510034.html
  5. While You Were Sleeping: 5 stories you might have missed, June 29, 2026, https://www.straitstimes.com/world/while-you-were-sleeping-5-stories-you-might-have-missed-june-29-2026?ref=latest
  6. ユーロ/円見通し(為替/FX ニュース ):先週末のユーロ円は円安で184円台前半|午後から夜にかけて円安が進む(2026年6月29日) – OANDA証券, https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_06_29_eurjpy/
  7. 先週末のドル円は円高で161円台後半|狭い範囲のレンジ相場を形成(2026年6月29日), https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_06_29_usdjpy/
  8. 東京円、161円台後半, https://www.47news.jp/14533397.html
  9. 東京円、161円台後半, https://www.47news.jp/14544000.html
  10. US Dollar Index at 13-Month High: What the USDX Chart Shows Now – Vantage Markets, https://www.vantagemarkets.com/market-analysis/us-dollar-index-usdx-weekly-outlook-june-29-july-3-2026/
  11. What Happened at Kevin Warsh’s First Fed Meeting as Chair? 3 Key Takeaways From the June 2026 FOMC Decision | Chase, https://www.chase.com/personal/investments/learning-and-insights/article/kevin-warsh-june-2026-federal-reserve-meeting-key-takeaways
  12. Federal Reserve Independence: What Kevin Warsh’s First FOMC Reveals, https://economy.ac/review/2026/06/202606289423
  13. Will New US Fed Chair Kevin Warsh Raise Interest Rates This Year? | Morningstar Nordics, https://global.morningstar.com/en-nd/economy/will-new-us-fed-chair-kevin-warsh-raise-interest-rates-this-year
  14. Warsh’s gamble: A quieter Federal Reserve could mean volatile markets, higher rates, https://apnews.com/article/warsh-federal-reserve-greenspan-inflation-economy-448828f7cc01932cc234ff47dd80be27
  15. Federal Reserve holds rates steady but signals possible hike before year’s end, https://www.theguardian.com/business/2026/jun/17/federal-reserve-interest-rates
  16. Gold – Price – Chart – Historical Data – News – Trading Economics, https://tradingeconomics.com/commodity/gold
  17. Kevin Warsh’s tough talk on inflation reassures investors, https://www.ft.com/content/a825975a-df76-4f9c-9eb9-774329ebc29d?syn-25a6b1a6=1
  18. Indian markets open deep in red as West Asia tensions, tech sell-off rattle investors, https://www.chinimandi.com/indian-markets-open-deep-in-red-as-west-asia-tensions-tech-sell-off-rattle-investors/
  19. 金(XAU)見通し (市況ニュース) :金価格は上昇し4088ドル|ドルインデックスの下落が影響し、買い優勢だった模様(2026年6月29日) – OANDA証券, https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_06_29_xau/
  20. Gold Selloff and Central Bank Buying: 2026 Analysis Decoded – Discovery Alert, https://discoveryalert.com.au/gold-correction-central-bank-buying-de-dollarisation-2026/
  21. マーケット情報 – 三菱マテリアル GOLDPARK, https://gold.mmc.co.jp/market/
  22. A Chart Overview of Commodity Support and Resistance: Gold, Silver, Oil, Gas + Platinum, Palladium, Copper, and Agricultural Futures (June 29, 2026) | Bitget News, https://www.bitget.com/amp/news/detail/12560605480901

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