TL;DR
昨日の振り返り
- 米財務省が長期国債の流動性支援buybackを拡大すると、米30年債利回りが急低下し、ドル指数は大きく下落、ドル円も158円台前半へ押し戻されました。
- Goldは長期金利低下とドル安を追い風に4%以上上昇し、20日朝も4,500ドル台を維持しています。Silverも67ドル近辺、Platinumも1,800ドル台で推移しています。
- 原油は中東情勢とホルムズ海峡の通航不安を背景に4営業日続伸し、Brentは91ドル台を維持しました。金利低下による貴金属支援と、原油高によるインフレ警戒が同居しています。
今日の見通し
- ドル円は158円台を中心に、米長期金利の低下が続くかが最重要です。159円台を回復できなければドル戻り売りが優勢になりやすい一方、金利反発なら159円台後半への戻しに注意します。
- 豪州では7月失業率が4.5%へ上昇し、雇用・参加率・総労働時間にも弱さがみられました。AUDはRBA追加利上げ観測の後退と、資源価格の高さが綱引きする局面です。
- Goldは4,500ドルを維持できるか、Silverは67ドル近辺で追随できるか、Platinumは1,800ドル台を保てるかを確認します。今晩の米雇用関連指標で米金利が反発すると、短期的な利益確定が出やすくなります。
米財務省buybackでドル円158円台、Goldは4,500ドル台へ
8月20日のアジア時間は、米財務省による長期国債buyback拡大の余波が中心です。米長期金利の急低下でドルが売られ、ドル円は158円台へ下落する一方、Goldは4,500ドル台へ急伸しました。ただしFOMC議事要旨にはインフレ警戒も残り、金利低下が一方向に続くと決めつける局面ではありません。
昨日は「金利低下・ドル安・Gold高」が一気に進行
20日付のReutersによると、米財務省が10年から30年ゾーンの長期債を対象とする流動性支援buybackの規模を拡大したことで、急上昇していた米長期金利が反落しました。30年債利回りは直前に5.337%まで上昇していましたが、その後5.18%台まで低下しています。
為替市場ではこの変化がそのままドル売りにつながりました。Reutersは20日朝のドル指数を98.938とし、ユーロドルは1.1676ドルまで上昇、ドル円は158.32円付近と伝えています。WSJも、米欧時間のドルが主要通貨に対して約0.8%下落し、10年債利回りが約7bp、30年債利回りが約10bp低下したと報じています。
| 市場 | 8月20日朝の確認値 | 注目点 |
|---|---|---|
| USDJPY | 158.32円付近 | 160円から距離を取り、ドル安が優勢 |
| ドル指数 | 98.938 | 約3カ月ぶり安値圏 |
| 米30年債利回り | 5.18%台 | 5.337%から急低下 |
| EURUSD | 1.1676ドル | 5月以来の高値圏 |
| Gold現物 | 4,512.19ドル | 前日4%以上上昇後も高値圏 |

一方、FOMC議事要旨は単純なハト派材料ではありませんでした。Reutersによると、7月会合では「複数」の参加者が利上げを行う用意があり、「多く」がインフレ率が2%へ低下しなければ追加利上げが必要になるとの認識を示しました。市場では9月会合の据え置き確率が約67%、利上げ確率が約33%とされており、財務省の債券需給対策とFRBのインフレ警戒が逆方向に作用しています。
したがって今日のドル円とGoldでは、buybackそのものより「その後も長期金利が低位で安定するか」が重要です。金利が再び上向けば、昨日のドル売り・Gold買いの一部が巻き戻される可能性があります。
Goldは急騰後も4,500ドル台、Silverは67ドル、Platinumは1,800ドル台
Goldは昨日の市場で4%以上上昇し、20日朝には一時4,525.79ドルと6月2日以来の高値を付けました。その後も4,512.19ドル付近で推移し、12月限先物は4,569.80ドルまで上昇しています。
| 貴金属 | 8月20日朝 | 当日の読み方 |
|---|---|---|
| Gold | 4,512.19ドル | 米長期金利低下とドル安が主な追い風 |
| Silver | 67.06ドル | Gold追随と工業需要の両面を見る |
| Platinum | 1,816.78ドル | 1,800ドル維持と景気敏感性を確認 |
豪失業率4.5%、AUDは追加利上げ観測だけでは買いにくい
豪州では20日、7月の失業率が4.5%と、6月の4.4%から上昇しました。news.com.auによると、失業者は15,800人増加し、雇用、労働参加率、総労働時間も低下しました。6月には雇用が76,300人増えていたため、単月の弱さだけで急速な景気悪化と判断するのは早いものの、労働市場が前月ほど強くないことは明確です。

アジア通貨全体では、WSJがシンガポールのOCBC Group Researchの見方として、米財務省のbuyback拡大が長期金利の上昇を抑え、アジア通貨を下支えする可能性を紹介しています。20日朝はドルがマレーシアリンギットに対して0.3%下落する一方、シンガポールドルに対してはほぼ横ばい、韓国ウォンに対しては0.2%上昇しており、ドル安がアジア通貨全面高に直結しているわけではありません。
原油91ドル台はGoldにとって「追い風だけ」ではない
Brent原油は20日朝に91.87ドル、WTIは期近9月限が85.81ドルでした。Reutersによると、両ベンチマークは前日まで4営業日続伸し、7月24日以来の高値で引けています。背景には米国とイランの対立、ホルムズ海峡の通航不安、UAEとイランの関係悪化があります。
地政学リスクの上昇は一般にGoldの安全資産需要を支えますが、今回のような原油高では別の経路にも注意が必要です。原油高がインフレ期待を押し上げ、FRBの追加利上げ観測や長期金利上昇につながれば、Goldの金利面では逆風になります。つまり「中東緊張=Gold買い」と一方向に整理するより、地政学プレミアムと金利上昇圧力のどちらが強いかを見る必要があります。
今日の二つのシナリオ
上方向のシナリオでは、米長期金利が昨日の低下分を戻さず、ドル指数が99を下回る状態を維持することが条件です。この場合、ドル円は158円割れを試しやすく、Goldは4,500ドルを維持して4,525ドル近辺の高値再試行、Silverも67ドル台を維持する可能性があります。
反対に、米長期金利が切り返してドル指数が99台を回復する場合は、昨日の動きの巻き戻しを想定します。ドル円が159円台へ戻る一方、Goldが4,500ドルを割り込むなら、buyback発表直後のポジション調整が優勢になったと判断します。Goldが4,500ドルを維持するのにSilverやPlatinumだけが下落する場合は、貴金属全体の強気相場ではなく安全資産としてのGold固有の買いが中心と考えます。
本日のトレード戦略
外国為替の戦略
ドル円は158.00〜159.20円を本日の中心レンジとして想定します。これは予測値ではなく、昨日の急落後の価格帯と本日朝の158円台前半を基準に置いた監視レンジです。
158.00円を明確に下抜け、同時に米30年債利回りとドル指数が低下を続ける場合は、157.50〜157.80円方向への下値拡大を警戒します。反対に158円割れが短時間で否定されるなら、ドル売りを追いかけず、158.50円回復を待つ方が安全です。
上方向は159.20円を明確に回復できるかがポイントです。米長期金利が反発し、159.20円を上抜いて維持する場合は159.70〜160.00円が次の注目帯になります。ただし160円近辺は直近の為替介入を意識しやすい水準であり、上抜けを前提にした追随は避けます。
AUDUSDは0.71ドル近辺が短期の分岐です。豪雇用統計後も0.71ドルを保ち、米ドル安が継続するなら下値は限定されやすい一方、0.71ドル割れと豪金利低下が同時に進む場合は、雇用悪化を織り込むAUD売りが強まる可能性があります。
本日21:30 JSTには米新規失業保険申請件数と8月フィラデルフィア連銀製造業景況指数が予定されています。結果が弱ければ米金利低下・ドル安、強ければその逆という反応が基本ですが、昨日のbuybackで債券市場の感応度が高まっているため、発表直後は価格そのものより米10年・30年金利の反応を確認します。
無効化条件は、米長期金利とドル円の方向が明確に乖離することです。たとえば金利が低下しているのにドル円が159円台を回復する場合、円固有の売り材料が勝っている可能性があるため、「金利低下=ドル円売り」という前提をいったん外します。
貴金属の戦略
Goldは4,500ドルを最重要の短期ピボットとします。4,500ドルを維持し、米30年債利回りが5.2%前後より低い状態で推移するなら、4,525ドル付近の再試行を確認します。高値更新後に値幅が拡大する場合は上昇継続余地がありますが、前日4%以上上昇した直後なので、高値追いより押し目での反応確認を優先します。
Goldの上昇シナリオの無効化は、4,500ドル割れに加え、米長期金利とドル指数が同時に反発するケースです。4,500ドルを割れても金利低下が続くなら単なる利益確定の可能性が残りますが、金利・ドルも反転する場合は昨日の上昇材料そのものが弱まります。
Silverは67ドルを軸にします。67ドル台を維持しGoldも4,500ドル以上なら追随上昇を見込みやすい一方、67ドル割れとGoldの4,500ドル割れが重なる場合は、貴金属全体の短期調整として扱います。Silverは工業需要の影響も大きいため、株式・中国関連資産が弱い日にGoldだけが上昇する場合は相対的な弱さに注意します。
Platinumは1,800ドルが短期の分岐です。1,800ドルを保ちながらGold・Silverが強ければ1,820ドル超の定着を確認します。一方、1,800ドル割れではGoldとの相対弱さが目立つため、貴金属一括の強気判断は避けます。
原油についてはBrent 92ドル前後を確認します。中東情勢悪化で原油がさらに上昇しても、Goldにとって必ずしも全面的な追い風ではありません。原油高と同時に米金利が上昇する場合はインフレ経由の逆風を優先し、原油高でも米金利が低下する場合は安全資産需要が勝っていると判断します。
引用文献
- Dollar hugs three-month lows as Treasury seeks to sooth the bond market
- Gold hovers near early-June high on lower bond yields
- Oil prices steady as investors assess US-Iran war outlook
- Asian Currencies Mixed; May Be Buoyed by U.S. Treasury Dept.’s Buyback Announcement
- More Australians have joined the workforce, but finding a new job is harder
免責事項: 本レポートに含まれる情報は、情報提供のみを目的としており、投資助言を意図するものではありません。実際の取引においては、ご自身のリスク許容度に合わせて判断を行ってください。


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