シリーズ「リスク管理と資金管理」全8回の第1回です。
損切りをいくらに置くか。「1回の損失は2万円まで」のように金額で決めている人は多いと思います。管理はしやすいのですが、この決め方には問題があります。
金額から逆算した損切り幅は、相場の都合と関係がありません。たまたま2万円に相当する位置が、値動きのノイズに埋もれる場所だったとしても、そこに置くことになります。
TL;DR
- 損切り幅と利確幅の比を変えても、コストを引く前の期待値は変わりません
- リスクリワード1:2なら必要勝率は33.3%。実際にランダムウォークで測っても33.9%で一致します
- つまり「リスクリワードを上げれば有利」は成り立ちません。勝率がその分下がるだけです
- 決めるべきは比率ではなく、どこまで逆行したら想定が崩れたと言えるかです
リスクリワードを上げても得はしない
損切り幅を1として、利確幅をその何倍に置くかを変えてみます。値動きにクセがない(ドリフトがない)場合、どちらに先に触れるかは幅の比だけで決まります。
| リスクリワード | 先に利確に届く確率 | 損益ゼロに必要な勝率 | 実測 |
|---|---|---|---|
| 1 : 0.5 | 66.7% | 66.7% | 65.1% |
| 1 : 1 | 50.0% | 50.0% | 49.4% |
| 1 : 2 | 33.3% | 33.3% | 33.9% |
| 1 : 3 | 25.0% | 25.0% | 25.5% |
| 1 : 5 | 16.7% | 16.7% | 17.1% |
「先に利確に届く確率」と「損益ゼロに必要な勝率」が、どの行でも一致しています。リスクリワードを1:5まで上げれば必要勝率は16.7%まで下がりますが、実際に届く確率も16.7%に下がります。差し引きゼロです。
「リスクリワード2以上で運用しましょう」という助言をよく見かけますが、これ単体では何も生みません。勝率が幅の比から決まる水準を上回って初めて意味が出ます。
では何で決めるのか
比率が期待値を生まないなら、損切り幅は別の理由で決める必要があります。
基準は1つです。そこまで逆行したら、エントリーした理由が消えている場所に置きます。
サポートを背にして買ったなら、そのサポートを明確に割った場所です。上位足のトレンドに乗ったなら、そのトレンドの形が崩れた場所です。直近安値の更新を根拠にしたなら、その安値を上抜けた場所です。
この決め方だと、損切り幅は相場によって毎回変わります。金額も変わります。それで構いません。金額を一定にするのはロットの仕事で、損切り幅の仕事ではないからです。ロット側で調整すれば、幅が変わってもリスク額は一定に保てます。
金額基準がまずい理由
金額から逆算すると、こういうことが起きます。
- ボラティリティが高い日に、普段と同じ金額で計算した結果、ノイズの範囲内に損切りが入る
- 根拠が崩れていないのに刈られ、その後に想定通り動く
- 「損切りが早すぎた」と感じて、次から損切りを遠くする。今度はリスク額が膨らむ
この往復に入ると、手法ではなく損切りの置き方で成績が上下し続けます。原因が見えにくいので、手法のほうを疑って乗り換えることになりがちです。
まず何をするか
- エントリーする前に「どこまで来たら、この判断は間違いだったと言えるか」を1文で書く
- その価格に損切りを置く
- そこまでの幅から、リスク額が一定になるようロットを逆算する
順番が大事です。金額を先に決めて幅を出すのではなく、幅を先に決めて金額をロットで合わせます。
根拠が崩れる場所をどう言語化するか、パターン別の具体的な置き方は、リスク管理コースの「損切りの決め方」で扱っています。損切り幅からロットを逆算する計算は次の回で書きます。


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