シリーズ「リスク管理と資金管理」全8回の第3回です。
1回のトレードで資金の何%までリスクを取るか。2%という数字がよく挙がりますが、なぜ2%なのかまで書いてあるものは多くありません。
確かめました。結論から言うと、2%そのものに特別な根拠はありません。ただ、リスク%を上げていったときに何が起きるかには、はっきりした構造があります。
TL;DR
- エッジが同じでも、リスク%だけで最終結果が反転します
- 勝率50%・平均利益÷平均損失1.2というプラスのエッジがある手法でも、リスク20%だと300トレード後の資金は中央値0.30倍。元本割れです
- 同じ手法でリスク1%なら1.33倍、5%なら2.85倍、10%なら3.30倍
- 最大ドローダウンは1%で-12%、10%で-81%。増え方が急です
同じ手法、リスク%だけ変える
勝率50%、勝ったときの利益が負けたときの損失の1.2倍。わずかにプラスの期待値を持つ手法です。これを300トレード回します。10,000通りのシミュレーションの中央値です。
| 1回のリスク | 最終資金 | 最大DD | 資金半減の確率 | -90%の確率 |
|---|---|---|---|---|
| 1% | 1.33 倍 | -12.4% | 0.0% | 0.0% |
| 2% | 1.69 倍 | -23.8% | 0.1% | 0.0% |
| 5% | 2.85 倍 | -52.0% | 3.9% | 0.0% |
| 10% | 3.30 倍 | -81.2% | 16.7% | 3.7% |
| 20% | 0.30 倍 | -99.1% | 57.5% | 39.1% |
10%までは増えます。20%で崩壊します。手法は一切変えていません。
これは複利の性質です。50%失うと、元に戻すには100%増やす必要があります。リスクを上げるほど1回の負けが深くなり、取り返しに必要な勝ちが加速度的に増えます。どこかで、増える力より減る力が上回ります。
ドローダウンのほうが先に効く
最終資金だけ見ると10%が一番良く見えます。ですが最大ドローダウンの列を見てください。
リスク10%だと、途中で資金が81%減る場面を通過します。1,000万円が190万円になる局面です。数字の上では最終的に3.30倍まで戻るのですが、その途中で運用を続けられる人はほとんどいません。
ドローダウンは統計ではなく体験です。-80%を耐えるつもりで始めても、実際にそうなればロットを落とすか止めます。そこで止めると、シミュレーションの「最終資金」には到達しません。
つまりリスク%は、数学的な最適点ではなく自分が続けられるドローダウンの深さから決めるべきものです。
2%の位置づけ
表を見ると、2%は最大DDが-24%程度に収まる水準です。これなら多くの人が耐えられます。同時に、300トレードで1.69倍という現実的な増え方もします。
「耐えられる深さ」と「増えるペース」の折り合いが付く場所として2%が広まった、という理解が実態に近いと思います。数学的な最適値ではありません。
そしてこの表には重要な前提があります。エッジがプラスであることです。期待値がマイナスの手法なら、リスク%を下げても遅く死ぬだけです。リスク管理は負けを勝ちに変えません。
まず何をするか
- 自分が耐えられるドローダウンの深さを、金額で書き出す(「30%まで」ではなく「300万円まで」)
- 上の表から、その深さに収まるリスク%を選ぶ
- 選んだ%を、前回のロット逆算式に入れる
金額で書くのがポイントです。%は抽象的で、実際に減ったときの感覚と結びつきません。
なお、期待値がプラスでも破産しうる理由を数式で扱うと、Kelly基準とエルゴード性の話になります。理論上の最適リスクと、その半分以下に落とすべき理由は、検証コースの「正の期待値でも破産する」で扱っています。


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