シリーズ「リスク管理と資金管理」全8回の第7回です。
勝てないとき、たいていは手法を疑います。そして次の手法を探します。この繰り返しに入っている人はかなり多いはずです。
ただ、同じ手法でもロットとコストの設定だけで結果が反転します。手法を変える前に、そちらを確認したほうが早い。
TL;DR
- 勝率52%・損益比1:1という同一のロジックで、往復コストとリスク%を変えるだけの比較です
- コストゼロならリスク5%で1.25倍。同じ手法がコスト2pipsでは0.28倍になります
- コストがあるとき、リスク%を上げるほど成績が悪化します。コストゼロのときと逆向きです
- 手法を変えても、この2つが同じなら結果はあまり変わりません
同じ手法、設定だけ変える
勝率52%、利確20pips、損切り20pips。300トレード、10,000通りの中央値です。ロジックは全部同じで、往復コストと1回のリスク%だけを変えています。
| 往復コスト | リスク1% | リスク5% | リスク10% |
|---|---|---|---|
| 0.0 pips | 1.11 倍 | 1.25 倍 | 0.74 倍 |
| 0.8 pips | 0.99 倍 | 0.69 倍 | 0.22 倍 |
| 2.0 pips | 0.82 倍 | 0.28 倍 | 0.04 倍 |
右下は0.04倍です。資金が25分の1になります。左上と同じ手法です。
注目すべきは向きが変わっていることです。コストゼロの行では、リスク1%より5%のほうが成績が良い。ところがコスト0.8pipsの行では、リスクを上げるほど悪くなります。
理由は単純です。勝率52%・損益比1:1の期待値は、20pipsに対して0.8pipsのコストを引くと、ほぼゼロかマイナスになります。期待値がマイナスの賭けでは、賭け金を増やすほど早く負けます。
だから手法を変えても直らない
手法探しを繰り返しても状況が変わらないのは、この構造があるからです。
新しい手法のグロス期待値が、前の手法と大きく変わることはあまりありません。どれも似たような薄さです。そこに同じコストと同じロットが乗るので、結果も似たようなものになります。
変えるべき順番は逆です。
- コスト:往復何pips払っているかを数える。スプレッド+手数料+スリッページ
- 1トレードの平均獲得幅:コストが何%を占めるか。20pipsに0.8pipsなら4%、5pipsに0.8pipsなら16%
- リスク%:期待値がプラスだと確認できてから上げる
- ここまで詰めて、それでもダメなら手法
2番目が効きます。獲得幅を20pipsから40pipsに広げれば、同じコストでも比重が半分になります。手法を変えなくても、時間足を上げるだけで達成できることがあります。
「勝てない原因」の順位
私が見る限り、頻度の高い順はこうです。
- 獲得幅に対してコストが大きすぎる:短い足で薄く抜こうとしている
- リスク%が高すぎる:連敗で資金が削れ、取り返しに必要な倍率が跳ね上がる
- 試行回数が足りない:30トレードで判断して乗り換えている
- 手法そのものにエッジがない
最後だけが「手法の問題」です。上の3つは設定の問題で、手法を変えても付いてきます。
まず何をするか
- 直近のトレードで、往復コストが平均獲得幅の何%かを出す
- 10%を超えていたら、時間足を上げるか利確幅を広げる
- コスト込みの期待値がプラスと確認できるまで、リスク%は1〜2%に固定する
- この3つを揃えてから、手法の評価に戻る
手法を変えるのは最後です。順番を守らないと、何が効いたのか永久に分かりません。
典型的なミスの分類と直し方はリスク管理コースの「FXで勝てない人の典型ミス」に、コストがエッジを消す構造の詳しい扱いは検証コースの「コストを入れると消えるエッジ」にあります。


コメント